巨人・小林誠司の原点は、高校のベンチの上。恩師も涙したドラフト指名後の“叫び”
7月13日(金)・14日(土)に行われる「マイナビオールスターゲーム2018」。超一流の技とプライドがぶつかり合う“球宴”も、今回で68度目。今年はどんな名場面が生まれるのか。
今回、ファン投票のセ・リーグ捕手部門で1位となったのが、読売ジャイアンツの小林誠司。去年のWBCで侍ジャパンの正捕手を務め、武器はその“強肩”。端正なルックスで女性人気も非常に高い選手だ。
そんな小林の選手としてのさらなる魅力のひとつ。それは、ピッチャーの心境を読み、声をかけて流れを変えること。小林はこれを“気づき”と表現する。
(小林)「ピッチャーの仕草とか、今日どういう雰囲気なんだろうとか、どういう状態なんだろうっていうのを気づいてあげたい。“気づき”っていうのは、すごく大事だと思っています」
これまで、この“気づき”によってWBCなどの大一番でも試合の流れを変えてきた小林。しかし、小林の広陵高校(広島)時代の恩師・中井哲之監督は、当時の小林について、「言いたいことを言えない。言ったとしても声が小さい。外野の隅々まで声が届かない(選手だった)」と語る。
小林は、この一面をどう克服したのか。その原点は、広陵高校グラウンドの3塁側ベンチにあった。
◆小林誠司の原点、高校の3塁側ベンチの上
引っ込み思案で、ピッチャーや他の選手たちとなかなかコミュニケーションが取れなかったという小林。
それを克服するため、小林は高校時代、3塁側ベンチの上に立って延々と声を出す練習をしていたという。そしてその練習は、1時間にも2時間にも及んだそうだ。中井監督は振り返る。
「『1アウト!』とか『ゲッツー!』とか『しまっていこうぜ!』とか野球のことだったり、『ありがとうございます!』とか日ごろ大事にしている言葉や挨拶まで、まあ様々な声を大きな声で言っていました。いろんな言葉を、腹の底から大きな声で、いろんなことを考えながら出したんだと思います。
(そういう練習を)誠司ほどやった子はいないですね。あそこ(3塁側ベンチの上)が彼の原点だというのであれば、そうなんだろうなと思います」
そして、小林自身もこの“声出し練習”について懐かしそうに語る。
「正直、野球部のグラウンドは校内にあるので、いろんな部活も周りで練習していますし、初めはもうすごく恥ずかしい。そういう気持ちだったんですけど、声を出すことに集中して本気でやることで恥ずかしさも全くなくなりましたし、グラウンド上でもそれぐらい強い気持ちでものを言えるようになったというのは多少あるかなと思います」
声出し練習によってコミュニケーション能力が向上し、その後巨人にドラフト1位で指名されるまでに成長を遂げた小林。
このドラフト指名の後、彼は母校の原点の場所で驚くべき行動をしていた。
◆監督も涙。ドラフト指名後にもベンチの上で
中井監督は、その行動について次のように振り返る。
「誠司が巨人にドラフトで指名されたとき、倉敷(※岡山県)のほうで(小林が参加した)野球教室があって、その帰りに広陵に寄ってくれたんです。
ちょうど練習終了時だったんですけど、『せっかく来たんだから、現役の選手に一言声をかけてやってくれ』って誠司に言ったら、『先生、例のところでいいですか』って言って、スーツで来たんですけどちゃんと革靴を脱いで、あの3塁側ベンチに上がって、声を張り上げました。
私としてもすごく感動的な場面で、そのときの言葉がですね、“巨人のドラフト1位で指名された”とかはまったくなくて、『プロ野球に指名された小林誠司です。私の原点はここから始まりました。皆さんもその広陵を大事にして、精一杯がんばってください』というようなことを、応援団のように声を張り上げて、背中を反らして、もう24歳だったと思うんですけどね。
生徒は16、17歳でしたが、その生徒たちに向けて一社会人があんなにも大きな声で、恥ずかしいとも思わず心の叫びをしてくれたんだなと思ったときには、僕もほんと目頭が熱くなって、鳥肌が立って、涙が出てきたのを思い出します」
この小林の驚くべき行動には、その場にいた高校生たちも涙ぐんだり鳥肌がたったりと感動していたという。
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巨人の選手間でも「よく指示が通る」と評価される小林の声かけ。持って生まれた素質と思えそうなところだが、そこにはやはり“努力”が隠されていた。
オールスターでも響き、発揮されるだろう、小林の声や気づき。強肩だけでなく、そこにも大いに注目したい。<制作:テレビ朝日野球>
※放送情報:「マイナビオールスターゲーム2018」両日ともテレビ朝日系列にて放送
・第1戦 京セラドーム大阪
7月13日(金)よる7時〜 ※一部地域を除く
・第2戦 リブワーク藤崎台球場(熊本県)
7月14日(土)よる6時30分〜