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2児の父・井浦新、意外な素顔!セリフ覚える時、子供が騒いでも「それはそれで大丈夫」

©テレビ朝日

唯一無二の存在感で是枝裕和監督、若松孝二監督、蜷川幸雄監督など名だたる監督に愛され、映画、ドラマの出演作が続いている井浦新さん

一般女性と結婚。現在は2児(一男一女)の父である。撮影で長期間留守にすることもあるが、子どもとできる趣味を持ち、一緒に遊ぶことで成長を感じたり、子どもにしかない感性を知ったり、教わったりしているという。家族とは一緒にいるだけで幸せだと話す眼差しが優しい。

©テレビ朝日

◆子どもたちとは100%全力で遊び向き合う

-ご家庭では息子さんと娘さんの2人のお子さんのお父さんですね-

「息子が生まれて父親になったことで生き方や考え方が広がりました。息子から色んなことを学ばせてもらい、父親にさせてもらったという感じです。生きることが楽しくなりました。

僕の父が旅好きで、子どもの頃から色々な遺跡や神社仏閣、美術館などに連れて行ってくれたんです。父親と同じ時間を共有していることがとてもうれしかった。だから僕も小学校4年生の息子と山登りに行ったり、ボルネオのジャングルにも行きました。子どもはすごいですよ。見たり触れたりしたものすべてをどんどん吸収していきますから」

-撮影で長期間、留守にすることも多いと思いますが-

「そうですね。妻に感謝です。僕が仕事に集中できるように支えてくれているので。ロケが終わって久しぶりに家に帰ると子どもたちが飛びついてきます。幸せだなあって感じる瞬間です。

いつまでもずっと抱きしめていたくなります。息子とは男同士の共通認識や精神的なことは共有したい。100%全力で一緒に遊び、向き合っていきたいと思っています」

-難しい役を演じることも多いですが、お子さんたちと接するときは切り替えが大変では?-

「そこは僕も気をつけています。親の感情や状況を子どもにぶつけたり、押しつけたりすることがないように。仕事のイライラだったり、不安だったり…それこそ夫婦間の問題があったりとかいうのを、子どもにぶつけてしまうと、良いことはうまれないので。

でも、もういっぱいいっぱいになっているときに、子どもたちはそんなことを知らないから、『ワーッ』と向かって来たりすることがあるんです。自分の気持ちがすごく揺れているときとかは『あー、いけない、いけない』という風になったりはします。そういうときは『落ち着け、クールダウンしないと!』ってセーブしています」

-セリフをおぼえるのは家で?-

「家ですね。でも、子どもたちが『ワーッ』と遊んでいても全然、それはそれで大丈夫みたいです(笑)。家族とは一緒にいるだけで幸せだなあと思う。自分がリビングで台本を読んでいたとしても、子どもたちが回りで『ワ―ッ、キャーッ』ってやっているのは、ずっと見ていたいなと思っているくらいです。だから『うるさい』とか、そういう思考があまりないみたい」

-優しい良いお父さんですね-

「それが良いお父さんかどうかはわからないですけれど…(笑)。でも、本当は子どもたちと遊ぶときは遊ぶことに集中しなければいけないんですけど、台本を近くにポンって置きっぱなしにしたまま、子どもと将棋をしていても、自分は将棋をしているんだけど、どこかでブツブツ頭のなかでセリフを言っているみたいなのがあったりするのに、結構からだが慣れてるんですよ。

色んなやり方がありますよね。僕も『どうやっているんですか』って聞いたりもするんですけど、『ひとりにならないとおぼえられないから部屋を借りちゃった』とか、『お風呂の中でずっとやっている』とか色々あるみたいですけど。結構みんな繊細なんだなって思います。全然僕はそこらへんはもう一緒くたになっています(笑)」

-それで覚えられるところがすごいですよね-

「それでおぼえているから何とかなっているんでしょうね。本当におぼえられなくなったら、自分もトイレにこもって出て来なくなるとかいうのもあるかもしれないですけど(笑)」

(C)NHK

◆井浦新、沖縄返還に尽力した昭和の豪傑に

今月30日(土)には主演映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』が公開される。この作品で井浦さんは、沖縄返還のために米軍の“理不尽な占領”と闘い続けた実在の外交官を演じている。

-もともとはテレビドラマとして製作されたのですか-

「そうなんです。最初はドラマで撮られたものなんですけど、撮っているときから監督とは、テレビで一回だけ放送されて、それで終わりというような作品じゃないんじゃないかという話をしていました。

監督も『僕はこれを映画版として再編集をして、映画館のスクリーンで上映して多くの方に見ていただける作品に仕上げたい』とおっしゃっていたんですよ。だから、スクリーンで上映されるということが、形になって、本当にうれしいです」

-沖縄は今なお色々な問題を抱えていますが、実際返還のときにはどういうことだったのかということがよくわかりますね-

「そうですね。それは本当によく描かれていると思います」

-ここのところ、外務省、財務省などあまり良い話がなかった中で、こんなにも沖縄のために尽力した方がいたのだということに驚かされました-

「残念なお話しかなかったですからね。だから、外交官でこんな人がいたのだという話を監督が最初にしてくれたときには僕も、『そんな人がいるわけないじゃないですか』って思っていました。でも、『これがみんな驚くんだけど、そういう裏での取引というものを全部押さえ込んでやろうとして闘った外交官がいるんだ』って。

それでお話を読んでみたら心を動かされて…。『このような人がいるというのは希望ですね。今の時代は何かと問題になる役人が多いけど、もしかするとこういう作品を作ることによって、色んな分野で、僕たち国民にとってもそうだし、官僚にとっても何かが良くなっていくきっかけになったら良い。もしくはそういう意識に刷り込むような作品になったら良いですね』って始まっていったんです」

-役へのアプローチはどのように?-

「主人公の外交官・千葉さんの感じたことや心に少しでも近づくためにはどうしたら良いのか、何ができるだろうかと考えて、とにかくできることは全部やろうと思ったんです。その仕上げとして、最後は沖縄に行って、基地に行って、自分が千葉さんと同じように怒りや恐怖というものを集中して、そこだけをしっかり自分のからだに入れて感じて、初日を迎えていこうという風にしていきました。

とにかく千葉さんを演じるにあたっての準備がたくさんあったので、まずはそこを仕上げてからじゃないと、それこそ芝居さえもできないという状況だったんです。まずは英語の習得、そして体重を増やしてからだを大きくしていかないと、これは昭和の豪傑を演じる上では、線が細かったら何の説得力もない、画に出てしまいますし、芝居に出ちゃうので。

まずは体重を増やしていって、そうすることによって声も芝居もテンションも動きもやっぱり全部変わってくるんです。やれることはとにかく何でもやろうと思ってやっていました。

現地の基地に詳しい方に付き合っていただいて、一日中、ずっと2つの基地の金網の周りをウロウロしていました。とにかくそこで過ごし続けて金網の前で、ずっと台本を読みながら、戦闘機が飛び立ちそうになったら、ずっとそれを見ていました。

僕の上を通っていくんですけど、そのときに本当に嫌な気持ちにしかならなかったりとか、とにかく音が、カッコイイなんて言っている余裕もないくらい怖さしかないというか、それがだんだんと自分のなかにたまっていくと、少しずつ、それが怒りに変わっていって…。きっと千葉さんもこの恐怖や怒りというものをきっと感じていたんだろうなあって思いながら、過ごしていました」

-沖縄の人たちとはお話をされたのですか-

「僕のほうから積極的に声をかけさせていただいて、当時の話を聞ける方たちからは手当たり次第、話を聞かせてもらいました。千葉さんは仕事を退職されてからも、亡くなるまで沖縄で講演をずっとされ続けていたみたいで、その講演に行って千葉さんから直接お話を聞いたことがあるという若者たちに何人か会うことができました。

この作品が答を出すということはできないですし、僕自身が発言したことによって答を出すこともできないですけど、そういう風に千葉さんを通してちゃんと知ろうとした若者たちの姿を見ていると、良い方向に向かって欲しいと切に思います」

-政治家や官僚、これからその道を目指す方々に見て欲しい作品ですね-

「あなたがたの働いていたところには、1960年代にこういう大先輩がいました。彼は一部の人たちによって表舞台から抹消されて伝えられなくされた圧力もあったということを包み隠さず、描いているんです。事実を。だから、今さらそんなところを隠すのではなくて、志高い、これから外務省などに入ってくる人たちに是非知って欲しい。

今の政治家や官僚たちだって、不正をするためになろうと思った人なんて誰もいないと思うんです。少なからず、この国を少しでも良くするためにと思って政治家や官僚を目指して一生懸命勉強してやってきている人たちが長いものに巻かれていってしまって、諦めてしまう人たちが、きっといるんだろうなって。

その諦めたというのは、政治家や官僚だけじゃなくて、僕たちもそうで、何かちゃんと学ぶべきことを諦めてしまったり、戦うこと、向き合うことを諦めてしまっているのではないか。

千葉さんが『諦めたら負けだ』とずっと言い続けてきているのは、すべての人たちに届くことで、とりあえず、理想としては役所仕事をする人たちのバイブルとして、携帯の中に入れておいて欲しいです。それぐらい強烈なメッセージがしっかり描けた作品だと思っています」

-井浦さんは映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』など後々まで語り継がれる作品が多くありますが、この作品もその1本ですね-

「沖縄問題は終わってないですから。同じ日本で起きていることなんですけど、どこかで遠いところで起きていることだとか、自分はあまりよくわからないという気持ちがどこかでずっと続いてきてしまっていることが大きいと思います。

と言っても、基地のために働いている人たちもたくさんいますし、そんなに簡単なことじゃないですよね。まずは現状をちゃんと知ることが第一歩で、この作品がその入り口になるんじゃないかなと思います」

©テレビ朝日

◆故・大杉漣さんに教わった大切なこと

-この作品には今年2月に亡くなった大杉漣さんも出ていらっしゃいますね-

「僕は漣さんと初共演だったんです。ようやく一緒にお芝居をさせてもらえたって思ったんですけど、本当に残念です。でも、この作品で漣さんは色んなことを身をもって教えてくれました。

僕とはぶつかり合う嫌な役だと思います。嫌な役だけど、しっかりそれを理解した上で、嫌な役に徹することを楽しんでいる姿というのを見せてくれるんです。

『お芝居は何が正解かなんてなくて、答の出ない仕事を僕たちはやっているんだよ、新君。だから変に考えて何かやるんじゃなくて、気持ちのままにやってごらん』って本番前にアドバイスしてくれたり…。

それこそ二人が対峙(たいじ)しあうシーンはすごく長いんですけど、頭から最後まで1カットで撮ってるんです。そのときとかも、すごく長いシーンで漣さんはセリフ量が多いので、失敗しないか妙な緊張感もあったんですけど、それを1カットで撮りきったときに、漣さんがガッツポーズをして喜んだりとか…。

そういう素直に自分の芝居を楽しまれているというのが、セリフとしてはすごく嫌なことを言っているし、こっちもそういうセリフを聞いていると、嫌な気分になっていったりしてるんですけど、もっと引いて作品を見て、今の自分がやっている芝居を楽しまれている漣さんの姿というのは、僕にとってはその姿自体が、学びだなあと思いました」

-本当に魅力的なすばらしい方でした-

「そうですね。本当に。初めての僕に対しても、漣さんはオープンに接してくれました。漣さんのほうから何でも話してくれるし、現場で芝居のテストをやったり、本番やったりしながら、その芝居のこと、シーンのこと、作品のこと、役との向き合い方とかというのを雑談とともに伝えてくれるんです。押しつけるのではなくて。僕も漣さんのような先輩になっていけたら良いなあと本当に思いました」

映画『蛇にピアス』で演じたスキンヘッドに顔面ピアスで全身にタトゥー彫師をはじめ、過激な役柄にも果敢に挑み、外見も自在に変化させ、全く違う姿を見せる井浦さん。インタビューに応じる姿は驚くほどナチュラルでソフト。

3月にはかなた狼監督との10年越しの約束を果たし、映画『ニワトリ☆スター』に主演。誠実な人柄、男気が話題を集めた。多くの映画人がともに仕事をすることを望み、オファーが絶えないのがよくわかる。年齢を重ね、輝きを増している井浦さん。今後がますます楽しみな人。(津島令子)

ヘアメイク/Atsushi Momiyama(BARBER BOYS)
スタイリング/UENO KENTARO(KEN OFFICE)

(C)NHK

※『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』
6月30日(土)よりポレポレ東中野で公開。
7月7日(土)より沖縄・桜坂劇場ほか全国順次公開。
監督:柳川強 出演:井浦新、戸田菜穂、尾美としのり、佐野史郎、大杉漣、石橋蓮司

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