【WRC】第4戦の舞台はコルシカ島 2人のフランス人ドライバーの戦いに注目
FIA世界ラリー選手権(WRC)の2018年シーズン第4戦「ラリー・フランス」が、4月6日からスタートする(~4月8日までの開催)。
未舗装路のグラベルラリーだった前戦の「ラリー・メキシコ」とは一転、すべて舗装路のターマックラリーとなるラリー・フランス。道路は細く、直線がほぼない。ドライバーにもコドライバーにも高い適応力が求められる。
3日間で予定されている全SS(スペシャルステージ)は12箇所。他のWRCラリーでは20前後のSSがあることから、ラリー・フランスのステージ数は少なく見えるかもしれない。しかし、その過酷さは他のWRCイベントと同様だ。
ラリー・フランスの舞台は、地中海に浮かぶコルシカ島。ナポレオン1世生誕の地として広く知られている。
フランス政府観光局の紹介では“海に浮かぶ山”と表現されており、島の最高標高は2710m。海抜0mから2710mまである姿は、まさに海に浮かぶ山という表現がピッタリの島だ。
さらに、コルシカ島の不思議はその周辺の海の中にもある。それが“タフォニ”だ。
コルシカ島は岩が多く、それらが風化した“タフォニ”と呼ばれる風化穴が数多く存在する。タフォニは塩分の影響で作られるといわれており、コルシカ島は地形的関係から多くタフォニが作られたのだと理解できる。
そして、約2万年前にあったといわれる地球の寒冷地時代から温暖化で海抜が120mほど上昇したことで、周囲の海のなかにもタフォニがある。海のなかのタフォニの影響で、浅瀬なのに光が通らない場所も多く、そうした場所には通常は深海にいるはずの生物が生きている。
そんな不思議な世界を生み出すタフォニが多くあるポルト湾周辺は世界遺産に選ばれており、世界中のダイバーや海洋研究者もコルシカ島を多く訪れる。
◆2人のフランス人ドライバーに注目
今回のラリー・フランスも、いちばんの注目はシトロエンからスポット参戦する伝説の王者、セバスチャン・ローブだろう。
通算優勝回数78回の元王者は、ターマック(舗装路)ラリーを得意としており、ここコルシカ島で行われたラリー・フランスでは2005年から2008年まで4年連続で勝利を獲得した。
前戦ラリー・メキシコではタイヤのパンクによって勝利へのチャンスを逃したが、現在のトップドライバーたちと互角の戦いができることを証明した元王者。得意のターマック(舗装路)では、いよいよその本領が発揮されることだろう。
そして、同じくターマック(舗装路)を得意とするのが、現王者のセバスチャン・オジェ(フォード)。この2人の戦いは、ギリギリまでマシンとタイヤの限界を攻めるものとなりそうだ。
そんな2人のフランス人に立ち向かうのは、このコルシカ島でのラリー・フランスで勝利経験があるティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)とヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)だ。ヌービルは2017年、ラトバラは2015年にそれぞれ勝利している。
ヒュンダイのマシンは2017年シーズンから速さでは定評があり、マシンポテンシャルはローブのシトロエンやオジェのフォードを上回っている可能性が高い。
そしてトヨタのマシンは、高地ラリーだったラリー・メキシコでこそエンジントラブルが発生したが、昨シーズンから比較してパワーアップしているといわれており、ここラリー・フランスでは、ラトバラのドライビングテクニックと合わせてライバルたちと互角に戦えるはずだ。つまり、上位は非常に接戦になることが予想される。
彼らの声を聞くと、昨年勝利したヌービル(ヒュンダイ)は、「個人的には、ここツール・ド・コルス(ラリー・フランス)は、シーズンのハイライトだと思っている。イベント前のテスト走行ではアクシデントがあったけど、ラリーイベントに向けてのアプローチは変えない。ここでは多くのチャンピオンシップポイントを獲得したいと思っている」と強い意気込みを見せる。
電撃的な復帰を果たしたローブ(シトロエン)は、「ここコルシカ島のコースはいつの時代も走っていて楽しい。もちろん、簡単なラリーじゃないとしてもね。正直、マシンスピードは僕が前に走っていた頃よりずっと速い。それでいて道幅の細さは昔と変わらない。それだけ難しくなっているんだ。ここでペースを掴むことは簡単じゃない、でも挑戦しがいがあるね」と、リラックスした中にも自信が見え隠れする。
そして、トヨタのエースであるラトバラは、「2015年に優勝して以降コルシカには良い思い出がいくつもありますし、本当にお気に入りのアスファルトラリーです。このラリーは『1万コーナーのラリー』と呼ばれていますが、もし走っている途中に100メートル以上の直線があったら、それはコルシカ島ではなく違う島に来てしまったという話があるくらいです。事前のプレイベントテストはとてもポジティブな内容で、非常に良いフィーリングが得られクルマにはとても満足しています。コルシカでは恐らく全チームが速いとは思いますが、表彰台争いができることを期待しています」と公式コメントを出した。
開催地と日本の時差は、サマータイムを含めて7時間。SS1のスタート時間は現地時間6日の午前9時50分を予定、日本時間では6日金曜日午後4時50分に最初のマシンがタイムアタックする。
初日のSSは4本。49.03kmと13.55kmのSSをそれぞれ2本ずつ走る。1本のSSが長いだけに、途中でトラブルに見舞われると大きなタイムロスとなり、速さと同等以上に信頼性が求められる。
果たして、各ドライバーはどんな走りを見せるのか。楽しみに待ちたい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>