青木宣親、超一流の選手になるために必要なこと「21年間プロでやってきた答えはそれです」
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、今季限りで現役を引退した元東京ヤクルトスワローズ・青木宣親と、北海道日本ハムファイターズチーフ・ベースボール・オフィサー栗山英樹がスペシャル対談。
日米通算2730安打を放った青木の打撃術をテーマにトークを繰り広げた。テレ朝POSTでは、対談の模様を前後編で紹介する(前後編の後編)。
◆正常に動かせる体をつくることの大切さ
村上宗隆など後輩たちに慕われ、近年はとくに指導することも多くなっていた青木。そこで最も大切にしてきた教えがある。
【映像】青木宣親×栗山英樹 ~2730安打のバッティング教科書~
青木:「自分の感覚と人の感覚って絶対違うと思うんです。それはどうしてかと言うと、感覚的なものもそうですが、体が違うんですよ。だからこそ、正常に動かせる体をつくってから技術に落とし込むほうが一番近い。これはもう絶対的な答えだと思います。
自分もメジャー3年目ぐらいに、向こうのレベルでやっていくために体を変えなきゃいけないと思ったんです。自分の体をしっかりと操れていない、こう振りたいけどできないということが何度も続いていたんですね。そうしたなかで、身体を鍛えてちゃんと使えるようにした状態で技術に落とし込む、そういう考えになっていきました。
以前はどちらかと言えば振って振って振ってというような感じだったんですが、振り続けてもスイングがむしろ遅くなった時期があったんです。ヤクルトの最後のほう、28歳か29歳ぐらいです。いろいろ調べると、スイングし過ぎて限界にいくと、もうスイングの力はスイングしても上がらないらしいです。むしろスイングすればするほど体がねじれて怪我する方向にいったりするんです。
もちろん野球選手なのでたくさん打つことは大切ですが、どんな体の動きをトレーニングでつくり、それを技術に落とし込むかが間違いなく大切だと思います。それができると、体や自分のことを理解して、怪我せずに技術がさらに上がっていく。たぶん自分が21年間プロでやってきた答えはそれです」
栗山:「なるほど。確かにそうですね。いくらやっても正しく動かなければならないですもんね」
青木:「そうなんです。ほとんどの人が感覚でやっているんです。それをみんなに気づいてほしくて、ヤクルトの後輩にはそういったことを全部伝えます。球場に来た時、全体練習前に自分の体がどうなのかちゃんと調べる。要は毎日のルーティンですね。取り組み方、それについての考え方ですべてが決まると思っていいから、一生懸命やれといつも言っています」
◆後輩に伝える“超一流選手になるために大切なこと”
青木が何よりも大切にしてきたのは、まず己の身体と向き合い、思い通りに動かせる状態にすること。メジャーに挑戦する際は専属トレーナーとともに海を渡り、引退まで二人三脚で歩んだ。
そして、体幹周りを鍛えるトレーニングなど、独特のトレーニングを何種類もこなし、思い通りに動かせる身体をつくってきた。
そんな青木が行うオフの自主トレには多くの後輩が参加するようになり、いつしか「チーム青木」と呼ばれるまでに。
その代表格・村上宗隆は、青木から受けた教えについて次のように語る。
「超一流の選手は何事も達人だと。体のことも打撃のことも知っていますし、そういった選手になっていこうという話はしました」
技術だけでなく、体に対する意識の高さは、しっかりと受け継がれていた。
栗山:「自分で打っていて思うようにいかない時があるじゃないですか。そうすると、技術の前に体幹などの使い方がうまくいかない、疲れがある、そういうところも含めて直していくという形ですか?」
青木:「そうです、例えば、移動すれば股関節が固まったり、腰が痛くなるのはよくありますよね。そういうところにもアンテナを張っておけば治しやすくなります。移動が多くて、ちょっとここが張っていると思えば、そこをしっかりほぐして、トレーニングして使えるようにして技術練習する。そうすればその誤差が少なくて済むわけですよ。
ほとんどの人間は打って打って打って、納得いくまで打って、不安な気持ちを取って試合に臨む。そういう人は、調子がいい時はいいんですけど、悪くなったらまた振るんです。振ったらどうなるかというと、次は体がねじれるので怪我をするんです。もうこの流れはずっとそう。『打てない原因がそもそも何なのかを考えないと絶対に先には進めないよ』っていうのはいつも伝えていることなんですけど」
栗山:「本当にそうですね」
青木:「今置かれている状況、自分の思っている考えをしっかり説明できるぐらい、自分と向き合いなさいというのは伝えています」
栗山:「いや~、なんだかもう一回野球やりたいですね。青木さんと(笑)」
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このほか対談のテーマは、「下半身の使い方・体重移動」「青木独特の構え」へ。メジャーで受けたデッドボールで構えを変えたエピソードや青木の特徴的といえる上半身をくねくねと動かす仕草についても明かされている。
栗山にとっても目から鱗の打撃論の数々に注目だ。