「年は取っていきますけど…」菅野智之(36歳)が挑戦し続ける理由 35歳でのメジャー挑戦で得た“確かな収穫”と“夢の続き”
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、侍ジャパンの菅野智之(36歳)を特集した。
チーム最年長として、9年ぶりにWBCの舞台に挑む菅野。昨季は、35歳で海を渡り、メジャー1年目からいきなり10勝をマークする活躍を見せた。
しかし、この夢舞台にたどり着くまでの野球人生はあまりにも激動だった。
野球浪人、ポスティングでのMLB移籍断念、東京五輪辞退、そして巨人のエースとして陥ったスランプ…。およそ15年に渡り取材を続けてきたテレビ朝日のカメラに、知られざる本音を語っている。
◆「本当の意味での勝負は今年」
今年1月。ハワイ。例年通り自主トレで汗を流していた菅野。この時、今シーズンの所属チームが決まらずにいたが、その表情に迷いはなかった。
「日本に帰ることはまったく考えていないです。まだ1年ですけど、ある程度のことは知れたような気がするので、本当の意味での勝負は今年なんじゃないかなと思います」(菅野)
周囲の心配をよそに、あくまでアメリカで戦う意思を貫いていた。おそらく、ただの強がりではない。そう思えたのは、どんな試練を前にしても挑戦し続ける姿を見てきたから。
さかのぼること15年前。プロ入り前から茨の道は始まっていた。2011年、ドラフトで日本ハムから1位指名を受けるも、憧れの巨人入りを目指して1年間の浪人生活を決断。
遠回りなど厭わない。この頃から夢にはとことん一途な男だった。浪人中、富士山を登っている時には、カメラにこんなことを語っていた。
「長い道のりになると思いますけど、弱音は吐けないです。自分を試されている気がします」
翌年、巨人に入団すると、その右腕一本で瞬く間にリーグを席巻。毎年のように勝ち星を積み重ね、沢村賞を2回、最多勝3回を受賞し、“日本最強投手”の名をほしいままにした。
そして2017年、新たな夢が芽吹きはじめる。
きっかけは、日本のエースとして出場したWBC。準決勝・アメリカ戦で6回1失点と好投し、世界に「トモユキ・スガノ」の名を知らしめた。
その年のオフシーズン。ハワイで自主トレを行う菅野を取材すると、カメラの前で初めて海の向こうへの思いを明かした。
「正直夢はありますよ。もちろんジャイアンツで野球をやるのは本当に幸せなことですが、将来的にそういうところ(メジャー)に繋がっていけば、選手としてもっと成長できて、成績も向上していくと信じているので、高い目標設定をしているだけです」
WBCで世界への意識が強まったことは、言葉の端々からにじみ出ていた。
◆踏みにじられたエースのプライド
2020年。満を持してポスティングでのメジャー挑戦を表明。しかし交渉は難航し、結果的に巨人に残留することとなる。
予想外の結末に、菅野は悔しさをにじませた。
「俺は悔しかったし、自分の評価はこんなもんなんだなって。もちろん夢ではあったけど、夢だったらどんな条件でも行けよ、というのは違う。向こうはそこに付け込んでくる」
踏みにじられたのは、エースのプライド。そして憧れてきた夢の価値。
さらに試練は続く。出場を熱望していた東京五輪を、直前のケガで出場辞退。自身が不在のなかで金メダルを獲得した侍ジャパンの活躍を、ただ眺めるしかなかった。
その後は、シーズンでも極度の不振に陥った。年齢はとうに30歳を超え、しだいに心にも変化が生じていた。
「気持ちの変化は間違いなくあります。『このバッター、昔は余裕で抑えてたのにな』とか、『三振狙ったら取れたのにな』とか。やっぱり考える時はありました。(昔は)自信があったから。今は緊張よりも不安が大きい」(菅野)
いつしか、「メジャー」という言葉も聞かなくなっていた。しかし、そんな男の心に、再び火を宿す人物が現れる。
◆「まだ自分に夢を見てくれる人がいるんだ」
昨シーズン、現役を引退した長野久義(41歳)。巨人で8年ともにプレーした男は、くすぶる菅野に対し、こんな思いを伝えたという。
「2023年シーズンがダメだっただけで、まだまだできると思っていましたし、アメリカで投げたいという智之の気持ちも知っていたので、頑張れってエールを込めて『智之が投げている姿を見たい』と伝えました」(長野)
その思いに対し、菅野は…。
「まだ自分に夢を見てくれる人がいるんだなって、そういう人たちのために頑張るっていう、すごく大きな原動力だなって思えました」
長野の言葉で、再び夢に挑戦する決意を固めた。「年は取っていきますけど、自分なりにもがいて、新しい自分を見つけていかないと」と奮起。さまざまなトレーニングで身体をいじめ抜き、投球フォームをイチから見つめ直した。
迎えた2024年。菅野は輝きを取り戻した。最多勝、最高勝率、そして4年ぶりのリーグMVPを獲得。どんな試練にももがき、立ち向かい、乗り越えてみせたのだ。
そして、諦めかけた夢舞台へ再び踏み出した。
◆「挑戦することにためらいがない」
2024年12月、長年抱いたメジャーリーグ挑戦の夢を叶えた菅野。ボルチモア・オリオールズと1年1,300万ドル(約20億1,000万円)で契約。今回は、納得のいく条件だった。
「しっかりいい契約をもらえましたし、ホッとしました。本当に振り返ってみると、いろいろなことがあったと思います。人生を賭ける勝負の瞬間だったので、久しぶりに決断したなという気持ちになりますね」(菅野)
“オールドルーキー”の挑戦はアメリカでも話題を呼び、現地メディアでは「35歳」という年齢について懸念する声も上がった。
しかし、そんな懐疑的な声をよそに、菅野はメジャー1年目から二桁勝利を挙げてみせた。
「ある程度やれた部分とまだまだ自分に足りない部分、両方が見つかったシーズンでした。最初は戸惑いもありましたけど、今シーズンはすんなりアジャストしていけると思います。引退した長野さんや澤村(拓一)さんの話を聞くなかで、野球をやりたくてもできない人たちがいることに気づきました。そうした人たちのためにも、1年でも長く投げていきたいという気持ちに、ちょっとずつ変化しています」(菅野)
そして2月11日、嬉しい知らせが届いた。コロラド・ロッキーズと1年契約で合意したのだ。再び夢に向かって挑戦する菅野は、「しっかり準備してきたので、去年よりもいい成績を残す自信はあります」と、新たなシーズンへ向けて力強く抱負を語っている。
これから我々にどんな夢の続きを見せてくれるのか。この歳で、このキャリアで挑戦することの意味を聞くと、次のように語った。
「挑戦することにためらいがない。この歳で挑戦できること自体に感謝したいなと思う。環境が変わることを今から不安に思って、『こういう練習できるかな』とか『食事大丈夫かな』『英語喋れるかな』とか、そんなことを考えていたら挑戦できない。そこにチャンスがあって、自分の気持ちがある限りは挑戦し続けたい」
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)









