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加藤清史郎、舞台『未来少年コナン』主演に「自分でいいのか?」 宮崎駿監督の“原点”にプレッシャーも「やるしかない!」

8歳のときに「こども店長」として広く知られ、国民的人気子役となった加藤清史郎さん。

2016年、中学卒業後、イギリスの高校に進学。現地の演劇学校にも通い、英語に悪戦苦闘しながら芝居の勉強にも励み、2020年に帰国。大学進学と同時に本格的に俳優活動を再始動し、映像作品からミュージカル、CMなど幅広い分野で活躍。

ブロードウェイ・ミュージカル『ニュージーズ』、日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)、『競争の番人』(フジテレビ系)、『弁護士ソドム』(テレビ東京系)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)、映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』(水田伸生監督)など話題作に次々と出演。2024年5月28日(火)から主演舞台『未来少年コナン』が東京芸術劇場プレイハウスで上演される。

 

◆“エリート問題児”を体現!

2023年、加藤さんは、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』に出演。このドラマは、卒業式の日に生徒と思しき人物に突き落とされた教師・九条里奈(松岡茉優)が、気がつくと始業式の日の教室に戻っており、1年後の死を避けるために命がけで生徒に向き合う姿を描いたもの。

加藤さんは、九条が担任を受け持つ3年D組の中で絶対的な立場であり、独裁者のように振る舞うカリスマ性あふれるエリート問題児・相楽琉偉役を繊細かつ大胆に体現。唯一無二の秀逸な演技力が話題に。

「台本をいただいてびっくりしました。オーディションではバリバリの恋愛ものを読んでいたんです。『明日卒業式だね。もし空いていたらでいいんだけど、卒業式が終わった後、屋上に来てくれないかな』みたいな(笑)。

ずっと好きだった子に告白するための電話の一人芝居を何パターンか、オーディションでやらせていただいたんです。僕は絶対ダメだと思っていたんですけど『決まりました』って言われて。

しばらく詳細を聞かされてなくて、生徒会長とかそっち系か、ちょっといじめられるとか、勉強ができるガリ勉みたいな役かなと思っていたのですが、台本が届いたら相楽役で『えーっ!?』って(笑)。びっくりですよね。

3年D組の座席表が配られたんですよ。ドラマのホームページにも載っていたんですけど、『カリスマ性あふれるエリート問題児』みたいなことが書いてあって。『やれるか?いや、すごく楽しみ。うん、やれる!やろう』って思いました(笑)」

――小さい頃から拝見していたので、大人になったなあって思いました。ワルの色気もあって。

「ホントですか?ありがとうございます。うれしいです(笑)。これまで演じたことがない役柄だったので、自分の中でも印象に残っています。ものすごく考えながらやりました。自分が何をどういう風に発言したらどう見られるとかということをすごく考えながら発言している子だったからこそ、珍しくすごく考えたんです。

このセリフをどう読むことがその教室に対しての恐怖なのか。恐怖じゃなくても、違和感というか、言いづらさを生み出すセリフというか、言葉の紡ぎ方。だから、すごく人間的にも勉強になりました。

いろんな人を見て、これまで見てきた人たちのなかで、『あの人ってなんで偉そうに見えるんだろう?』とか。たとえば、椅子に座っているときの足の位置がちょっと前なんだなとか。

そんなに分析したわけじゃないんですよ。僕も解剖学から学んでとかそういうことをしたわけじゃなくて、基本はオリジナルストーリーだったし、その段階では、今後の展開は本当にわからなかったので。

だからこそ、台本から汲み取れるものでやっていって、方向性だけすり合わせながら、監督とプロデューサーさんとお話して…というなかで、ものすごく考えてやれたのでおもしろかったです。『自分じゃない』と思いながら…当たり前なんですけどね(笑)。

普通は、自分じゃない人を(役で)生きていても、自分に似ている部分とか、共通点があるなって思ったりするんですけど、相楽に関しては『これ自分じゃないよね』って思っていました。いろいろ考えて悩みましたけどおもしろかったですね」

© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Incredible Tide” Copyright © 1970 by Alexander Key Stage performance rights in Japanese language arranged with McIntosh & Otis, Inc. through Japan UNI Agency, Inc.

※『未来少年コナン』
2024年5月28日(火)~6月16日(日)
東京芸術劇場プレイハウス
原作:日本アニメーション制作『未来少年コナン』
(監督:宮崎駿 脚本:中野顕彰 胡桃哲 吉川惣司)
演出・振付・美術:インバル・ピント
演出:ダビッド・マンブッフ
出演:加藤清史郎 影山優佳、成河、門脇麦、宮尾俊太郎、今井朋彦、椎名桔平ほか

◆宮崎駿監督の原点に携わる思い

2023年に放送45周年を迎えた宮崎駿初監督アニメーション『未来少年コナン』が初の舞台化。最終戦争後の荒廃した地球を舞台に、正義感が強く超人的な運動神経を持つ少年コナン(加藤清史郎)が、偶然出会った少女・ラナ(影山優佳)を助けるために、権力にしがみつく人間たちと戦う様を描く冒険アドベンチャー。

――お話が来たときはどう思われました?

「これは本当に『ワオーッ』でした。『ワオーッ』が一発目に来て『未来少年コナンですよね?』って。それで、『宮崎駿』って書いてあって、演出・振付・美術に『インバル・ピント』って書いてあって、劇場が『芸術劇場プレイハウス』ということを少しずつ理解しようとしていったという感じでしたが、一緒に名前を並ばせていただけるんだと思うだけで恐縮しました。

でも、その文字の並びの中に自分の名前が同じところに…ということが信じられなくて。ずっと何かでご一緒できたらいいなって思い続けていましたけど、本当にこんなことがあるんだなって。

しかも宮崎監督の原点と言われている作品にコナンとして、主演として携われる。こんな幸せなことはないな、これはもうやるしかないという考えもあり、『やりきるしかないけど、やれるのか?』っていう思いが頭の中を巡っていました」

――世界のあちこちで戦争、紛争が起きている今、初めて舞台化されるということはものすごく意味がありますね。

「本当ですね。やっぱり世界で知られている作品なので、そのプレッシャーはありますし、『自分でいいのか?』って思っちゃっていた部分もあるんですけど、『やらないと!』っていう気持ちのほうが今は強いです。やったことのないことだらけで、本当に奇跡な日々を毎日過ごしています」

――今、お稽古真っ最中ですね。

「はい。楽しいですけど、楽しいより勝ってくる感情がたくさんあります。変に責任感を負わないようにというのはすごく感じているんです。考えているし、感じているんですけど、どうしてもやっぱりリスペクトがあるからこそ『どうしたらいいんだ?』っていうのもありますし。そこはもう本当にいろんな方に相談をして、どんどんすり合わせていっています」

 

◆座長としての責任とプレッシャー

『未来少年コナン』は、1978年に宮崎駿が初監督したアニメーションシリーズということで、世界中に大ファンがいることでも知られている作品。躍動感あふれる描写や、世界観など、その後の宮崎作品へと受け継がれている要素がぎっしり詰まっている。40年以上前に書かれた未来の話だが、現代の世界情勢や問題とリアルに重なりあらためて驚かされる。

――ファンも多く注目しているだけにプレッシャーもあるでしょうね。

「はい。もちろん座長だから、背中を見せるとか、引っ張っていくというのは、理想ではあるんですけど、少なくとも今の僕にそれはちょっとできないなっていうのを日々感じています。だからこそ、みんなに助けてもらいながら稽古に励んでいます」

――加藤さんがコナンくんだと聞いて納得でした。期待が高まります。

「本当ですか。ありがとうございます。うれしいです。でも、なかにはやっぱり僕が小さい頃のイメージが強いみたいで…。動いているイメージがある人ってなかなかいなかったりするみたいです。

それこそ、『僕の大好きな作品を加藤清史郎がやるのか?』みたいな方も多分いらっしゃると思うのですが、そういう人にも胸を張って、『そうです、こうなんです!』って言えるようにならないといけないし、運動神経の良さというものも、全然違う方向性のものが求められるなっていうのをすごく感じています。

『何の痛みなんだろう?何で(からだの)ここが張っているんだろう?』みたいなこともありますし、そこを張らないようにするためには、ここでこうやって支えればいいのかとか、自分のからだと向き合って、表現することをいかに膨らませていけるかというところに重きを置いて頑張っています」

――歌もお上手ですし、身体能力も高く、表現力も豊かなので楽しみです。

「ありがとうございます。今はこの舞台のことだけ考えています。後のことは何も考えられないですね。(稽古も)結構進んできて、このシーンはこういう風になるんだろうなとか、ここはこういう風に表現するんだろうなというのも見えてきました。

わかってきて、やってみて、見えるからこそ楽しみな部分もあるんですけど。見えれば見えるほど、『このシーンの後にあれをやるんだよね。あれってこの間やったやつだよね?そのあと15分ぐらいぶっ倒れていたけど大丈夫かな?』とか(笑)。いいところが見えつつ、悪いところが見えてきて、自分にできるのかどうなのかという、その壁が見えてくるという感じです」

――インバル・ピントさんとはどのような感じですか?

「本当にその場で物事を作り上げていく方々で、ダビットさん(演出家)もそうですけど、本当にみんなで一緒に作っている感じです。『これちょっとこっちのほうがいいかもしれない。さっきの1回忘れてやってみて』とか、『それはあまり効果的じゃないわ。こっちから出てみて』というのを日々やっています。

だから、このシーンは完成したかもしれないみたいに思って次の日来たら、『ごめん、トカゲ入れ忘れた。もう1回やり直す』って言われたりして。全然違う感じでやってみたら『ダメだ、元に戻そう』ってなったりしています(笑)。

インバルさんのアイデアとダビさんのアイデアを融合させて試行錯誤してやっています。『これはもっと躍動的にしたいんだけど、何かないかな?』って考えている間に、他のダンサーさんたちが、『これは清史郎くん、この腰のここを持っていると、こうなるんじゃない?』という感じでみんながアイデアを出し合って。

人によってはですけど、『いやいや、演出は俺なんだから』とか、『振り付けは俺なんだから勝手に決めるなよ』っていう人もいるにはいると思うんですけど、そういうことがまったくないんです。

インバルさんとかダビさんは、みんなが考えながらやっているのを見て、『今のそれめちゃくちゃキレイだったから入れたい。どこで入れようか?』みたいな感じで広がっていくんです。

その場で作られているものを見ながらやれるかどうか試してみるという、ものすごくバイタリティーが必要な作業をしていて。本当に僕は楽しいだけじゃなく、浮き沈みしながら稽古場で生きています。“奇跡の舞台化”と言われているので、本当に“奇跡”にしないと!」

目を輝かせて意欲を語る姿に期待が高まる。6歳下の弟・加藤憲史郎さんも俳優で、昨年、劇団『ハイキュー!!』旗揚げ公演に主演。これまでの兄弟共演は、短編ショートフィルムの作品と『相棒』(テレビ朝日系)で加藤さんの幼少時代を憲史郎さんが演じたことがあるそう。兄弟共演も見てみたいが、まずはコナンくんを楽しみにしている。(津島令子)

ヘアメイク:入江美雪希
スタイリスト:金順華(sable et plage)