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山口まゆ、ターニングポイントになった中学生の妊婦役。“若き演技派”と称されるほどの反響も「あれを超えるように頑張らなきゃ」

中学生時代から数々の映画、ドラマに出演し、演技力を高く評価されてきた山口まゆさん。

『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)、映画『くちびるに歌を』(三木孝浩監督)、『アイムホーム』(テレビ朝日系)、『コウノドリ』(TBS系)、『未来への10カウント』(テレビ朝日系)、映画『樹海村』(清水崇監督)など多くの作品に出演。2024年3月16日(土)には主演映画『ブルーイマジン』(松林麗監督)の公開が控えている。

 

◆オーディションで木村拓哉の娘役に

2015年、山口さんは木村拓哉さん主演ドラマ『アイムホーム』に出演。このドラマは工場の爆発事故に巻き込まれ、過去5、6年間の記憶を失った主人公・家路久(木村拓哉)が、わずかな記憶とポケットに入っていた10本の鍵を元に過去の自分を探ることに…という展開。

山口さんは、久の元妻・香(水野美紀)の娘で反抗期のすばる役。久と血は繋がっていないが、以前はなついていたという設定。

「『くちびるに歌を』の打ち上げのときに、事務所の社長から『オーディションに受かりました』という報告を受けて、ものすごく驚いた記憶があります。

というのも、オーディションの最終メンバーにいた子たちが、いろいろな作品に出ているような子たちばかりで、自信がなかったんです。100%落ちたと思っていたので、受かったと聞いて本当にびっくりでしたね。すごくうれしかったです。

それで、母親がSMAP世代なので、ものすごく喜んでいました。『木村さんの娘役?』みたいな感じで(笑)」

――撮影はいかがでした?

「木村さんは大スターなので、毎日緊張していました。でも、木村さんご自身は、壁を作るような方ではないので、娘としてすごく親しく接してくださって。私が座っていたら、後ろにもたれかかってきたりとか、そういう触れ合いがあって、だんだん家族の雰囲気になっていった感じがしました。本当に感謝しています」

木村さん演じる主人公・久は、記憶が失われている5年間で離婚し、再婚もしているのだが、その記憶がない。そのため、元妻の家に帰り、すばるの洗濯物の下着を畳んでいたりして、すばるにブチ切れられるシーンも。

「今だから言えますけど、私はクランクインの日に高熱を出していて…。あの下着のシーンのことも正直、あまり記憶にないんですよ(笑)。

『くちびるに歌を』の全国キャンペーンの次の日にインで、本当に緊張していたんですよね。それで知恵熱みたいな熱を出しちゃって。だから全然記憶がないんです(笑)。

でも、段取りで私が言ったことに対して木村さんがおもしろおかしく返してくれたりしたことは覚えています(笑)」

――テレビで見ていかがでした?

「下着のシーンは、恥ずかしいとしか思ってなかったです(笑)。何かもうドキドキでしたね。『私がここにいていいのかな?』という感じでした」

――ドラマを見ていましたが、堂々としていて度胸がいい方だなと思っていました。

「いえいえ、結構緊張していました。心の中では『やばい!やばい!やばい!』って(笑)」

 

◆本物の赤ちゃんを見て気持ちに変化

2015年、山口さんは『コウノドリ』に出演。このドラマは、医師であり天才ピアニストでもある産婦人科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)が、出産をめぐるさまざまな奇跡や難問に直面する患者たちと真摯に向き合いながら奮闘する姿を描いたもの。

山口さんは、中学2年生で妊娠、出産する吉沢玲奈役。妊娠したことにも気づかず、バスケットボール部の練習に励んでいたが、練習中に倒れて妊娠8カ月であることが発覚する。お腹の子の父親・元倉亮(望月歩)も同級生。2人ともまだ中学生のため、誰が赤ちゃんを育てるのか決まらないまま出産することに。

――あの役が来たときはどう思いました?

「マネジャーさんに『この役、頑張りましょう!』と言われて、『はい!』と頑張った記憶があります。

妊娠ということもあって難しい役だったので、すごく構えていました。それこそ、志田未来さんが主演した『14才の母~愛するために 生まれてきた~』(日本テレビ系)というドラマを全話見て勉強したりしていたのですが、『大丈夫かな?大丈夫かな?』と思いながら撮影していました」

――妊娠の知識も何もない中2の女の子が、出産が近づくにつれてだんだん変わっていく様がとてもよく出ていてすごいなと思いました。

「ありがとうございます。そこが一番不安だったので、うれしいです。吉沢玲奈ちゃんが母親になるために、どういう風に変わっていくかの実感が自分の中に必要だったので、あのときは日記をつけていました。

出産のシーンを撮影する前日に、『明日生まれる』という日記を書いたんですよ、自分で。実際にはいないけど、気持ちの流れを結構大事にしていました」

――出産シーンもかなり大変だったと思いますが、いかがでした?

「大変でした。YouTubeで出産シーンをドキュメンタリーみたいな感じで出している方がいたので、それを見てその人の真似をしました。『こんな風になるんだ。一からやってみよう』って。

私は出産シーンのときに涙が全然出なくて、終わった後『全然ダメだった…』と思ったんです。マネジャーさんにも『涙がこぼれないね』って言われていたので。でも、反響が大きかったので、びっくりしました」

――すごくリアルで違和感がなかったです。

「ありがとうございます。でも、いまだによくわからないですね。ただひとつ言えるとしたら、あの撮影のときに本当の赤ちゃんがいたんです。その赤ちゃんを見たときに、自分の中で何かスイッチが入った感覚がありました」

――出産した直後、ほんの短い時間赤ちゃんを抱くことができますが、すぐに里親さんのところに連れていかれて引き離されてしまう。あのシーンは胸に迫るものがありました。

「うれしいです(笑)。お話がすごく良かったというのもあるんですけど、やっぱり実際に赤ちゃんを目の前にして湧いてきた感情もたくさんありました」

――『コウノドリ』のあの回はかなり話題になりましたね。

「いまだに言っていただけることは素直にうれしいです。以前は『あれを超えなくちゃいけない』とか、『あれ以上できないかもしれない』とか、すごく自分自身が気にしていたり、事務所の人にも言われたりしていたので、すごく意識しすぎた時期もありました。

自分の中で課題作品みたいに思えていたのですが、最近は『これだけ人に届いた作品もすごいかも』という風にやっと思えるようになってきました(笑)」

――まだ早い時期にすごく絶賛される作品があると、それはそれでプレッシャーにもなるかもしれないですね。でも、そういう作品があるということは大きいと思います。

「そうですね。あれは、あの当時にしかできなかったなって思います。間違いなくターニングポイントになった作品です」

――少女から大人になりかける、あの時期だからというのはあるでしょうね。

「はい。作品との出会いとタイミングなど、すべてがガチッとハマッた、自分にとっての財産と言える作品ができて良かったですけど、これからも頑張っていかなきゃなって思っています。あれを超えるように」

 

◆役者はいろんな経験ができる

『コウノドリ』で“若き演技派”と称されることになった山口さんだが、自分ではあまり実感がないという。

「私自身は、お芝居の上手い下手というのは、正直あまりわからなくて。お芝居は誰でもできると思うし、みんな日常でお芝居をしていると思うんです。

だから、経験とか積み重ねももちろんありますけど、タイミングとか運、そういうものがすごく大事なんだろうなと思います。

『演技派』と言われるとうれしいですけど、全然まだまだだと思っています。これからもどんどん人生経験を積んでいかなきゃいけないなって思っているので、その肩書きに乗っかれるように頑張ります」

2017年、山口さんは『相棒-劇場版IV-首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』(橋本一監督)に出演。7年前に英国で発生した日本領事館の集団毒殺事件とともに闇に葬り去られていた誘拐被害者・瑛里佳役を演じた。

――この作品も難しい役でしたね。自分がそうとは知らずにお茶に入れた毒で、多くの命を奪ってしまったのではないかと苦悩しながら生きてきた少女で。

「本当にそうですね。もしかしたら自分がみんなを殺してしまったかもしれないっていうような思いを抱えながら生きているなんて、すさまじい人生ですよね。

あの年齢での台本の捉え方とかもあるだろうし、今やるとしたらまた全然違うかもしれませんが、あのときに経験させてもらったことを今後に活かしていけたらいいなと思います」

――撮影で印象に残っていることはありますか?

「水谷(豊)さんも反町(隆史)さん、鹿賀(丈史)さんも、自分が生まれる前から活躍されている方々ですし、『相棒』も長く続いている作品なので、そこのプレッシャーはすごくありました」

――出来上がった作品をご覧になって、いかがでした?

「『この中に私がいていいのか?』ということをずっと考えていましたけど、あのときの自分なりに精いっぱい頑張れたのかなとも思います。

私はごく普通の家庭で育った子どもですが、すごいところに連れていってもらったり、高校生にして銃を持ったり…いろんな経験をさせてもらえて(笑)。いろんな経験ができるのは、役者のおもしろいところだと思います」

2018年には、日本大学芸術学部映画学科に進学し、学生生活と仕事を両立することに。

次回は、木村拓哉さんと『アイムホーム』以来、7年ぶりの再共演となった『未来への10カウント』(テレビ朝日系)、山田杏奈さんとW主演の映画『樹海村』(清水崇監督)、2024年3月16日(土)に公開される主演映画『ブルーイマジン』の撮影エピソードも紹介。(津島令子)

ヘアメイク:美樹(Three PEACE)
スタイリスト:梅田一秀

©Blue Imagine Film Partners

※映画『ブルーイマジン』
日本・フィリピン・シンガポール合作映画
2024年3月16日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
配給:コバルトピクチャーズ
監督:松林麗
出演:山口まゆ 川床明日香 北村優衣 新谷ゆづみ 松林うらら イアナ・ベルナルデス 日高七海 林裕太 松浦祐也 カトウシンスケ 品田誠 仲野佳奈 武内おと 飯島珠奈 宮永梨愛 渡辺紘文 ステファニー・アリアン 細田善彦

第53回ロッテルダム国際映画祭 Bright Future部門正式出品。さまざまな形の性暴力、DV、ハラスメントに悩まされる若き女性たちに寄り添い、トラウマを救済するためのシェアハウスに集まった女性たちが連帯し、力を合わせて沈黙を破り、自分と世界を変えるために声をあげようと葛藤する物語が展開。俳優志望の斉藤乃愛(山口まゆ)は、かつて映画監督から性暴力被害を受けたことがあるが、そのトラウマを誰にも話せずにいた。しかし、性暴力やDV、ハラスメント被害を受けた女性たちを救うためのシェアハウス「ブルーイマジン」に入居したことで気持ちに変化が…。

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