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巨人・大勢、失ったクローザーの座…「情けないという気持ちはあります」どん底で誓った復活への決意

テレビ朝日のスポーツ番組GET SPORTSでは、今年プロ3年目を迎える巨人・大勢(24歳)に密着した。

昨シーズン、肘の怪我が原因で初めての二軍降格を経験し、約3か月もの間二軍暮らしを送った大勢。

悔しさを胸に、復活を誓う今シーズン。再起を懸け、着手していた新たな取り組みとは――。

◆初めての二軍降格。失ったクローザーの座

2024年1月上旬。大阪府羽曳野市。

辺りはまだ真っ暗な朝。大学時代から通う小さなジムで、じっと体と向き合う。

大勢:「こんなしんどさ、打たれた時の辛さに比べたら屁でもないです」

早朝から徹底的に体をいじめ抜き、気づけば夕暮れ。オフからこれだけハードなトレーニングを積むのには理由があった。

大勢:「去年はマジいろいろありました。年男の厄年。最初は年男ですよ、WBC優勝して。でも最後厄年。10年分くらい経験したんじゃないですか」

2023年、2年目ながらWBCを戦う侍ジャパンに選出された大勢。

日本代表のユニフォームに身を包み、本番直前の強化試合から躍動。大谷翔平やダルビッシュ有らスター選手たちからも一目置かれる存在になり、本戦では準々決勝以降すべての試合に登板する。

王座奪還を懸けた決勝でも、2点リードの7回を無失点で切り抜け、14年ぶりのWBC優勝に大きく貢献した。

それからチームに合流し開幕を迎えると、勢いそのままに期待通りの活躍で6試合連続無失点と、開幕から0を並べ続けた。

しかし、そこから周囲も本人すらも予想していなかった転落が始まる。

大勢:「最初肩からきて肘ですね。神宮で投げた時くらいに、ブルペンで投げてなんか違和感があるなと思い出して、そこから痛さに変わってきた感じです

5月17日、神宮球場でのヤクルト戦。9回に登板した大勢、実は肘に痛みを抱えていたという。

自慢のストレートをいとも簡単にはじき返される。リードはなんとか守り切ったが、本来の投球からはかけ離れていた。

その後も休むことなく投げ続けた大勢。そこにはこんな思いがあった。

大勢:「当時はなんとしてでもチームの力になれたらいいって、ただそれだけを思って」

当時、巨人はBクラスに低迷。2年連続でBクラスに終わることだけは避けたかった。

そんなチーム事情もあって弱音を吐けず、結果、悪循環に陥る。肘は制御が効かなくなっていた。

そして、プロ入り後初めての二軍降格。守り続けたクローザーの座も失った。

大勢:「交流戦前ですよ。神宮で内山(壮真)にホームラン打たれた時。あの時さっさと切り上げておけばよかった。そしたらこんなに長引いていなかったのに」

戦線を離れ、初めて漏らした後悔の言葉。痛みを伴いながら投げた代償は大きかった。

一軍に上がろうとも、投げることすらできない。1か月経っても2か月経っても肘の状態は戻らなかった。

◆怪我をして改めて感じたリスペクト

しかし、“どん底”を味わった中で、ある人物の存在が頭をよぎる。

大勢:「大谷さんも二刀流をやられて怪我されて。あんなにすごいのにあんなに謙虚で野球に向き合っていて、プレーされている姿に見ている人も感動する」

それは、右肘の手術から復活を遂げた大谷翔平。

WBCでその姿を間近で見ていた大勢は、怪我をして改めて大谷の凄さが理解できたのだという。

大勢:「メディアや表に出ない部分で、僕たちが思っていた以上に、体・栄養・トレーニング・投げ方、一つひとつレベルの高い考えを持っていました。チョコレート1個食べるのも渋っていたので。『これ食べるとよくない』って。勝つことだけを考えていましたね。

(侍ジャパンには)自分のプレーで人を沸かせたり感動させたりできる選手がたくさんいた。こんなケガくらいでへこたれていられないというか、また這い上がっていく姿を見せていきたい」

◆怪我しない体づくりを目指し肉体改造

悔しさを胸に、復活を誓う今シーズン。大勢はこのオフ、新たな取り組みに着手していた。

大勢:「1年間ケガしないように、その体づくりや正しい姿勢を意識して、1年間しっかり余力を残しながらシーズンを完走できるような体づくりを目指しています」

目指していたのは、ケガを防ぐ疲労しない体づくり。そのために大勢が練習のポイントとして挙げたのは…。

大勢:「体が連動していくと一生懸命頑張らなくても球はいきますし、スムーズに腕が走る感じはしている。もっとそういう連動性を活かして投げて、1年間故障しないパフォーマンスが出せる体と投球フォームを手に入れたいと思います

意識していたのは“連動性”。

全身を連動させれば、無駄な力を使わずとも強い球が投げられる。疲労は溜まらず、ケガを避けることができるというのだ。

では、実際にどのように体を連動させようとしているのか?

トレーニングを見てみると、重りを使ったものから使わないものまで、さまざま。それぞれまったく違う練習に見えるが、実はすべて「腸腰筋」という筋肉を使うために行っているという。

大勢:「自分は投げる時に(腸腰筋の力が)抜けちゃうんですよ。だからそれを抜けないように、腸腰筋を活かしながら投げていくというのをやっています」

腸腰筋とは、上半身と下半身をつなぐ筋肉の総称。

身体を連動させるには必要不可欠なものだ。腸腰筋を使いこなすことができれば、下半身の力を上半身に効率よく伝え、無駄な力を使わない投球ができるという。

その結果、疲労が溜まらず、怪我をしにくい体を作り上げることができるのだ。

大勢は毎日トレーニングの後にキャッチボールを行う。鍛えた腸腰筋を実際の投球で使う感覚を染み込ませているという。

◆「自信持ってマウンドに上がりたい」

さらに、大勢には、疲労しない体を目指すことで、もうひとつ取り戻したいものがある。

それは、プロ入りから大切にしてきたもの。

大勢:「ヒールアップする要因にもなったひとつなんですけど、一番大事なのはしっかり(理想の)フォームで投げられているか」

大勢の代名詞でもある「ヒールアップ投法」

かかとを上げ、重心を高いところから降ろす。そうして軸足に溜めたパワーを使うことで力強いストレートを投げてきた。

しかし、疲労が溜まり肘を痛めていた6月10日のソフトバンク戦。投球フォームを見ると、疲れが原因でヒールアップ投法をやめていた。

大勢:「一番体的にもピークだったので、少しでも何か変えてやろうと思ったんです。でも、そう簡単に自分のスタイルを変えてしまったのは、少し情けないという気持ちはありますね」

代名詞すら捨ててしまうほど、追い込まれていた肉体。

疲労しない体作りは怪我を防ぐだけでなく、大事にしてきたヒールアップ投法を1年間やり通すことにもつながるというのだ。

大勢:「信念を貫いてやるためにも、練習をしっかりして、自信を持ってマウンドに上がりたいと思います」

3年目を迎えた2024年。

新生・巨人に4年ぶりの優勝をもたらすべく、9回のマウンドに大勢が再び帰ってくる。

大勢:「3年目、クローザーの座を奪い返して、最後胴上げ投手になることができたら、今後のプロ野球選手のいいリズムに乗っていけると思う。今年がしっかり勝負かなと思います」

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)