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高橋克典、壮絶な役作りで臨んだ『只野仁』シリーズ。こだわり、過去へのリスペクト…過激描写にも「一切苦情がなかった」

1999年に放送されたドラマ『サラリーマン金太郎』(TBS系)で、一躍大ブレークした高橋克典さん。

元暴走族のヘッドで、サラリーマン社会に警鐘を打ち鳴らす風雲児・矢島金太郎の活躍が大人気となりシリーズ化。2004年まで放送され、さらに映画化もされた。2002年には映画『竜二Forever』(細野辰興監督)、2003年には映画『新・仁義なき戦い/謀殺』(橋本一監督)に出演した。

そして、2003年『特命係長 只野仁』(テレビ朝日系)に主演。キレのいいアクションシーンと肉体美も話題に。2022~2023年には、連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)にヒロインの父親役で出演。アクション作品からヒューマンドラマまで出演作多数。

 

◆“サラリーマン金太郎”から“特命係長 只野仁”に

2003年、高橋さんは『特命係長 只野仁』に主演。表の顔は大手広告会社・電王堂の窓際係長だが、実は会長直属の特命係長としてさまざまなトラブルを解決するという、もう一つの顔を持つ主人公・只野仁を演じた。

「当時、あまりに金太郎のイメージが強く、さまざまな作品に出演を模索しました。そうしたら、テレビ朝日で深夜11時の枠というのができて『トリック』がヒットして、ちょっと盛り上がっていたところに『特命係長 只野仁』のお話をいただきました。

原作を読むと、『これ、どうやってやるの?』っていうような過激な内容だったんだけど、台本になってきたら普通の探偵物になっているんですよ。『それじゃあ、金曜の夜につまんないよね』ってなって。『金曜の夜って何だろう?』って、スタッフと一緒にいろいろ考えはじめて、アイデアを出し合って」

――深夜枠ならではのちょっとエロティックなシーンがあったりして。

「はい。だから、そこの表現もどうしようかって考えました。はじめはわりとまともにやっていたんだけど、まともにやっていると何か気まずくて(笑)。やっぱりそこでチャンネルを変えちゃう人がいるんじゃないかなと思って、おもしろくしようと。どうしたらおもしろくなるかなといろいろ考えました」

――細部まで計算されていましたね。全裸で立っているのに、花瓶とか置き時計などでうまく隠しているとか。

「そう。それは昔の日活のロマンポルノみたいな、ああいうベタな表現を取り込んだり、そういう過去へのリスペクトと表現を盛り込みました。

只野仁はいろいろやっていたけど、苦情が1件も来なかったらしいです。局の方も驚いていましたが、あれだけいろいろやっておいて、一切苦情がなかった」

――高橋さんのキャラもあったのでしょうね。硬派のイメージで、いやらしい感じがしないので。

「それは、とてもこだわりました。どういう人が見てもイヤだなって思わない感じでやりたいなと思って」

――毎回アクションシーンと肉体美を披露するサービスカットがありましたが、身体を作るのが大変だったのでは?

「大変でした。当時は俳優で身体を鍛える人は全然いなかったんですよ。韓国の方たちもそういうのをまだ売りにしていなかった時代で、ソフトなイメージのヨン様が人気の頃ですからね。

それと何か一生懸命やっているのを、ちょっと馬鹿にするような風潮があったんですよね。当時はそういうことをしないのがカッコいいだろうみたいな感じで。

何も特別なことはしてないけどできるのがカッコいいみたいな感じがあったんですよ。『一生懸命やっています』というのは、『何真面目に身体とか鍛えちゃっているの?』ってバカにされる感じ。それも計算に入れて、すごく一生懸命やったんですよ。バカバカしいじゃないですか、別に強くもないし偽物なんだけど、一生懸命鍛えて。

でも、はじめだけ『おーっ!』って言ってくれたけど、そのあとはもうみんな慣れちゃって驚いてくれないんですよ(笑)。でも、何か引っ込みがつかなくなっちゃって、毎回すごく努力しているんですけど、全然認めてもらえないっていうか(笑)。

本当に髪の毛は抜けるし、誰とも喋りたくないし…ダイエットしすぎて一番ひどいときは冬の撮影のときだったんですけど、体脂肪7%までなったんですよ。そうなると、冬はもう寒くて何を着ていても震えが止まらない。それで、本番の瞬間だけ何とか力をふりしぼって、あとはジッとしていました」

――体脂肪7%だとアスリート並みですね。食事制限もかなりされたのですか?

「しました。その間は食べ物もタンパク質とわずかな野菜しか食べませんでした。今みたいにいろいろな種類のダイエット食品とかアイデアがなかったですからね。ささみの味付けを塩胡椒だったり、カレー粉にしたりとか。

今だと調味料もいろんなおいしいのもあるけど、あの当時はまだそんなになかったんですよ。なので、いろいろ工夫して、海苔をかけてみたり(笑)。そんなことばかりやっていましたね」

――努力の結果、毎回みんなが楽しみにしているサービスカットが。

「サービスカットかどうかわからないですけど(笑)。でも、バカバカしいことを一生懸命やるのもおもしろいかなと。何か大真面目にやって、触りもしないのに相手が倒れるとか、バカなことを一生懸命考えて、アイデアを出してやるのもおもしろかったですね」

――映画にもなりましたね。

「そうですね。10年やりました。毎回撮影が始まる3カ月ぐらい前から食事制限を始めて、身体を鍛えていましたね」

 

◆念願のヤクザ映画にも主演!

2002年には映画『竜二Forever』(細野辰興監督)、2003年には映画『新・仁義なき戦い/謀殺』(橋本一監督)に主演。

「ヤクザものは昭和の時代は世の憧れでね、多分に漏れずやってみたかった。『新・仁義なき戦い/謀殺』は、友情物語でもあってどこか愛しいものがありました。『サラリーマン金太郎』の元暴走族、その流れだったのでしょう」

2006年には『ガチバカ!』(TBS系)に主演。高橋さんは、高校時代は札付きの不良少年だったが、恩師のおかげで更生してプロボクサーになったものの傷害事件を起こしてボクシング界を追放され、恩師の勧めで教員免許を取得して高校教師になった主人公・権藤鉄太を演じた。

「『ガチバカ!』ではボクシング。何かちょっとそっち系(肉体派)の俳優という感じで認識されていたみたいですね。本当は全然違うのに(笑)」

――すごく身体能力が高い人というイメージがあります。

「からだは硬いし、全然身体能力は高くないんですよ。だから、『おかしいなあ?』と思いながらやっていました。本当はもうヒューマンドラマのほうに行きたかったんですけど、何か肉体系ばかりだなあって(笑)。でも、このドラマをきっかけにボクシングとのすばらしい出逢いがありました」

――シリーズ化された作品も多いですね。2010年には『広域警察』シリーズ(テレビ朝日系)がスタート。高橋さん演じる警察庁・広域捜査課に所属する刑事・東圭太が、複数の県をまたいで発生した難事件に挑む人気シリーズでした。

「あれは、大杉漣さんと僕の組み合わせをすごく気に入ってくださったプロデューサーさんがいて、『広域警察』に至るまでに、いろんな作品をやってみたんです。たしか四つめか五つめくらいの作品で『広域警察』になって、2時間ドラマを創ったとも言える吉川(一義)監督とお仕事をさせていただくことになって。

2017年に第9作が放送されて、10本目をやろうって言いながらなかなか企画が進まず、漣さんも亡くなってしまったので、すごく残念に思っていました。

それで、10作目は勝村(政信)さんが新たに広域捜査課長に就任することになって。勝村さんは、漣さんともすごく仲良しでサッカーの仲間でもあったので、いい人に来ていただいたなって思いました。スペシャルドラマでしたけど、10本目ができて良かったです。でも、現実とかぶっているセリフもあったので、撮影中に漣さんを思い出しながら皆で演じました」

2017年には『庶務行員 多加賀主水が許さない』シリーズ(テレビ朝日系)が始まった。高橋さん演じる多加賀主水は、曲がったことは許さない熱い正義感ゆえに、不正を追及して職を転々としてきた銀行の雑用係。忖度無視で巨悪に立ち向かっていくという痛快なストーリー展開。

「原作もおもしろくてね。本当に王道の2時間ドラマで、やっていて楽しかったですね。悪を暴いていくんだけど、ただ事件を解決していくだけでなく人間味もあって。2時間ドラマがなくなってしまって寂しいですね」

2018年、高橋さんは『不惑のスクラム』(NHK)に主演。高橋さんが演じた丸川良平は、痴漢と疑われ犯人扱いした男性客を蹴って死なせてしまい刑務所に入る。出所後、死に場所を求めていたときに、河川敷でシニアラグビーチームと出会い、メンバーに加わることになる。やがて家族と再会する…という展開。

――中学・高校でラグビー部だったという高橋さんにピッタリでステキなドラマでした。

「NHKは本当にいい作品があって、多数出演させていただいておりますが、これもまたラグビーというステキなスポーツの一つの側面を活かしたすばらしい作品でした。

40歳以上の選手による“不惑ラグビー”で、メンバーのおじさんたちがみんな訳ありなんだけど優しくてね(笑)。ショーケン(萩原健一)さんとも最初で最後だったけど、僕はショーケンさんの大ファンだったのでうれしかったですね。現場ではいろいろ大変でしたけど(笑)」

2022年、高橋さんは連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)にヒロインの父親役で出演。次回はその撮影エピソード&撮影裏話、2024年2月16日(金)に公開される『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』(光岡麦監督)についても紹介。(津島令子)

ヘアメイク:佐藤健行(HAPPS)
スタイリスト:小川カズ

©2024劇場版「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

※『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』
2024年2月16日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:アイエス・フィールド
監督:光岡麦
出演:劇団ひとり 剛力彩芽 木村了 犬飼貴丈 文音 北原里英 松村沙友理 堀田眞三 八嶋智人 高橋克典

推理小説の登場人物となり、参加者が話し合いながら事件の解決を目指す体験型ゲームの新ジャンル「マーダーミステリー」のゲームシステムをベースにしたテレビシリーズの劇場版。俳優陣に与えられているのは、キャラクター設定と行動指示のみ。各シーンのセリフはほぼアドリブ。演技者としての実力が試される予測不能の展開。リアルな緊張感が伝わる新感覚ミステリームービー。「一夜のうちに3人の生贄(いけにえ)の血を滴らせると死者が蘇生する」という不気味な伝承が残る鬼灯村(ほおずきむら)で「三つ首祭り」が行われていた夜、村の長の遺体が発見される。当時、屋敷にいた8人には、それぞれ人には言えない秘密が…。

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