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島田歌穂、来年デビュー50周年&結婚30周年。アニバーサリーイヤーに映画出演、記念コンサートも…「ここからがまた新しいスタート」

1970年代、『がんばれ!!ロボコン』(テレビ朝日系)のヒロイン・ロビンちゃん役で人気を博し、アイドル歌手活動を経てミュージカル女優に転身した島田歌穂さん。

1987年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』日本初演のエポニーヌ役に抜てきされ、たぐいまれなる美声と圧倒的な表現力で第38回芸術選奨文部大臣新人賞をはじめ、多くの賞を受賞。2001年までロングラン公演に参加し、出演回数は千回を超え、世界ベストキャストにも選出。レコーディングに参加したアルバムはグラミー賞を受賞。国際的にも高く評価され、多くの舞台に出演。

デビュー50周年を迎える2024年は、1月26日(金)に映画『カムイのうた』(菅原浩志監督)が公開されるのをはじめ、多くのライブコンサートも予定されている。

 

◆ドラマの主題歌がヒットを記録

島田さんは、1994年にピアニストで作・編曲家、そしてプロデューサーの島健さんと結婚。同年から島さんとともにDuoコンサートをスタートし、現在まで全国200カ所以上で公演、延べ10万人以上が来場している。同年、島田さんは、『HOTEL』(TBS系)の主題歌『ステップ・バイ・ステップ』をリリースしてヒットを記録。同ドラマシリーズの主題歌『FRIENDS』と『約束』もヒットした。

――『HOTEL』の曲もステキですね。

「ありがとうございます。『HOTEL』の主題歌、挿入歌も私にとっては大事な曲で、今でもコンサートでやらせていただくと『うわーっ、懐かしい!』って皆さん言ってくだって。やっぱり大事な出会いでしたね。

『HOTEL』も『がんばれ!!ロボコン』と同じ石ノ森章太郎先生が原作なんですよね。私も『HOTEL』に1話だけ出演させていただいたのですが、そのときに石ノ森先生と久しぶりにお会いする機会があって、『久しぶりだね』って声をかけていただいて、とてもうれしかったです」

島田さんは、2003年に大阪芸術大学舞台芸術学科助教授に就任し、2007年には教授に就任している。

「最初にお話をいただいたときは、『私が教えるなんてとんでもないです』って恐れおののいてしまって(笑)。でも、いただいたお話は、真摯に受け止めさせていただいて、一生懸命悩んで考えました。

私の父が晩年、専門学校でミュージカル俳優を目指す人たちに歌を教えていたのですが、父はすごく面倒見がいい人だったので、学生さんたちにも慕われていて。レッスン以外のときも、地方から来ている学生さんたちをしょっちゅう家に招いて、鍋を振る舞ったりして結構楽しそうにしていたんです。

教え子たちに囲まれている父の姿をふと思い出して、『もしかしたら、こういうお話をいただいたのも偶然ではないのかな』と思って。

父の思いを少しでも受け継がせてもらえるのであれば、私なりに精いっぱい挑戦させていただこうかなと思ってお受けしました。それが2003年だったので、気がついたらもう20年経っちゃったんですね(笑)」

――2003年に助教授に就任されて2007年には教授に。

「私はひたすら歌の実技を担当させていただいています。私は音大も出ていないですし、現場で学ばせてもらってきたことを伝えさせてもらうという感じです。

ミュージカルといっても、根本はお芝居なんだよって。物語があって、その中の役柄がある。ミュージカルの歌の歌詞はセリフなんですよね。

たとえば翻訳ものだと、英語ではもっともっと深いことを一小節の中で言えているのに、日本語だと一音に一文字しか入れられないので、三音なら三文字になってしまったりして、元々そこに込められている意味を表現しきれなかったりする。本当に難しいんです、翻訳ものは。

だから、それをどこまで自分で解釈して、紐解いて、お芝居で伝えていくのかということを、いろんな形で学生に伝えさせてもらっている感じです」

――島田さんのように実績のある方が教えてくださると、生徒さんたちも学びが多いでしょうね。

「どうなんでしょう(笑)。わかりませんけど、授業の中で学生たちがパッと変わってくれる瞬間があったりすると、うれしいですね。お互いに『それそれ!』とか言って(笑)。そういう瞬間がすごくうれしいですし、そこから私もすごくまたパワーをもらえるんですよね。

実際に卒業生たちが今、いろいろな作品に出演していて、大きな劇団で主役級で頑張っている子も、次々とメジャーな作品ですごく活躍してくれている子もいて、私自身も舞台で教え子と共演できるチャンスが増えてきたんですよ。うれしいですよね。

うれしいんですけど、一緒に舞台に立つと、授業で言っていたことが、私はちゃんとできているのか気持ちが引き締まりますし、すごく励みにさせていただいています。だから、使命ある限り頑張って続けさせていただければなって思っています」

©シネボイス

※映画『カムイのうた』
2024年1月26日(金)より公開
配給:トリプルアップ
監督:菅原浩志
出演:吉田美月喜 望月歩 島田歌穂 清水美砂 加藤雅也

◆好きなことばかり続けてきた

2024年1月26日(金)より映画『カムイのうた』が公開される。この作品のベースは、文字を持たないアイヌ民族に口伝えで伝承されてきた叙事詩・ユーカラを日本語に翻訳し『アイヌ神謡集』として後世に残した実在の人物・知里幸惠さんの実話。

すべてに神が宿ると信じ、北海道の厳しくも豊かな自然と共存してきたアイヌ民族。住んでいた土地が奪われ、アイヌ語が禁止された差別と迫害の日々を描く。

学業優秀なテル(吉田美月喜)は女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すのだが、アイヌというだけで結果は不合格。その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが理不尽な差別といじめを受けることに…。

島田さんは、主人公・テルの伯母・イヌイェマツを演じ、物語の核となるユーカラを歌唱。夫である島健さんが作曲した主題歌『カムイのうた』も歌唱している。

――『カムイのうた』のお話があったときはいかがでした?

「久しぶりに映画のお話をいただいてうれしかったのですが、とても深いテーマの映画ですし、『私なんかで本当にいいのでしょうか?』という感じで腰が引けてしまいました。口承で伝えられてきたアイヌ民族の叙事詩ユーカラというのは、アイヌの方々にとって本当に大事な宝物じゃないですか。

最初にユーカラを聞いたとき、あまりに未知の世界に、本当に歌えるのだろうかと不安でいっぱいになりました。歌詞もわからないし、譜面もない。節回しも聴いたことのない節回しで、拍子とかも本当に独特だったんですよね。

これまで全国のいろいろな地方の民謡をジャズ風にアレンジしてコンサートで歌わせていただいたりしていたのですが、まったく別世界で、これは大変な挑戦になるなと半ば怖気づいてしまったんです。

でも、監督とプロデューサーが『あれは歌穂さんにしか歌えない』とおっしゃってくださって。そこまで言っていただけるならば、精いっぱい向き合わせていただこうという思いでお受けしました。

最初にお会いしてお話をいただいたとき、帰りがけに菅原監督が、『歌穂さん、カムイのうたとは神の歌という意味ですからね』って真正面から目を見て言われたんです。大きなプレッシャーを与えられて(笑)」

――お芝居の部分も難しい役どころですね。

「そうですね。まずはセットがアイヌの生活を再現された本当にすてきなお家だったので、その中でちゃんと生活感がある存在でなきゃいけないと思いました。さりげなくも、どっしりと深く、姪である主人公・テルを見守り、支える存在でなければいけないなと。監督や作間プロデューサー、スタッフの皆さんにいろいろと細かく指示をいただいて助けていただきながら撮影に臨んでいました」

――誰よりも優秀なのにアイヌというだけで希望する学校に進学することもできない。生活の糧であるサケ漁や狩猟が禁止され、アイヌ語は禁止され、住んでいた土地も奪われる差別と迫害の歴史に胸が締め付けられました。

「そうですね。100年ほど前にこんな事実があったんだということに愕然としました」

――床に水をこぼしたとき、イヌイェマツさんが「板の間の神様、喉が渇いていたんだ」というセリフが印象的でした。

「すべてのものに神様が宿っているという考え方で、『板の間の神様喜んでいるよ、喉が渇いていたんだね』ってステキですよね。一つひとつの命をどこまでも大切に思い、狩りに出るときも、山の神様に『これから狩りをさせていただきます』って祈りを捧げてから狩りを始める。

本当に人として一番大事なことをいろんなところで教えてもらえるというか。今、あまりにも情報が溢れ、便利になりすぎてしまった世界で忘れているものがたくさんあることをあらためて考えさせられました」

――多様化が叫ばれている今の時代にこの映画が公開されるというのは大きいですね。

「はい。やっと皆様にご覧いただけるときが来るんだなと思ってワクワクしています。ただ、私が演じさせていただいたイヌイェマツという役と、それからたくさん歌わせていただいたユーカラがアイヌの方々にどう受け止めていただけるのかというのもちょっと不安ではあります。

お話をお受けしたときもそうなんですけど、私の中では、父が北海道の人なので、そのご縁を何とかよりどころにさせていただいたところはあります」

――島田さんは、お顔に入れ墨のメイクもされていますし、これまでとはまったく違うイメージですね。

「そうですね。最初は私だと気がつかれないと思います(笑)。だから、今回は私にとっても何もかもが本当に新たなチャレンジでした。アイヌ民族としての誇りを胸に、まさに生命を削りながら偉業を成し遂げた知里幸惠さんのことを一人でも多くの方に知っていただけたらと願っています」

――来年はデビュー50周年ですね。

「そうなんです。50周年に相応しいステキなチャンスをいただけたと思っています。すごいタイミングで、『ロビンちゃん、50年後にこうなりました』って(笑)。

考えてみたら私は生まれてから好きなことばかりをずっと続けさせていただいているんですよね。どんなに悩んでも、好きなことのためであれば、それは幸せな悩みですよね。本当にありがたいと思います」

――ご主人の島健さんとのDuoコンサートも人気ですね。

「来年結婚30年で、アニバーサリーが重なるんですけど、ここからまた新しいスタートだと思っています。次の半世紀に向かってどこまで行けるかわからないですけど、いろいろなことにチャレンジしたいと思っています」

デビュー50周年と結婚30周年を迎える2024年。映画『カムイのうた』の公開に加え、ライブコンサートの予定も多数。アニバーサリーイヤーに相応しいステキな年になりますように。(津島令子)

ヘアメイク:天野広子
スタイリスト:鈴木美夏