井岡一翔、選手生命を懸けた大勝負。「求めていた結果ではなかった」激闘の裏で語った“新たな覚悟”
2023年6月24日、選手生命を懸けた大勝負に臨んだプロボクサー・井岡一翔(34歳)。
日本人唯一、世界4階級制覇を果たし、ボクシング界のトップに君臨している。
プロ33戦目となるこの一戦は、特別なものだった。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、その激闘の舞台裏に密着した。
◆雪辱を果たすまで
試合前日、信じられない事態が起きた。
井岡は計量を順当にパスしたが、対戦相手の世界王者ジョシュア・フランコは、規定体重より3.1キロもオーバー。これにより、この時点でフランコの王座は剥奪。
井岡は勝利すれば王座獲得となるが、勝利以外は“無効試合”となることが決定した。
不完全ともいえる世界戦。それでも井岡はフランコ戦に執念を燃やしていた。
さかのぼること、昨年12月に行われたWBO・WBA世界スーパーフライ級王座統一戦。
井岡はWBO王者として、WBA王者フランコに挑んだ。
激闘の末、結果はドロー。それぞれがベルト防衛という決着だった。
井岡:「ボクシング人生で初めてドローという結果に終わって、大袈裟にいうと、武士は刀を抜いたら死ぬまでその刀はおさめられない」
自身初のドローという屈辱。そこで、井岡はWBOのタイトルを返上する。
フランコを倒したい――。その一心で同じ相手との再戦が実現した。
この一戦で、井岡はどうしても伝えたいことがあった。
井岡:「前回12ラウンド戦って、13ラウンド目からの試合を、あの日の続きを絶対に見せないといけない。井岡一翔だからこそ伝えられることがあると思うし、今後ボクシング界や日本の未来を引っ張っていく子どもたちにメッセージを届けたい」
あの日のリベンジを果たすことで、子どもたちに一歩踏み出す勇気を与えたい。
そんな強い思いで、決戦の日を迎えていた。
◆決戦のとき
そして大会当日。
まずは第1ラウンド、フランコが仕掛ける。
手数が多いスタイルのフランコは、立ち上がりから得意のジャブで試合のペースをつくっていく。
しかし、井岡にはある作戦があった。
井岡:「ジャブに対してもカウンターはしていたし、何より先手先手でいっていた」
すると第2ラウンド以降、作戦通りカウンターが見事にハマる。
第5ラウンドには、井岡のパンチでフランコがまぶたから出血。
井岡:「ラウンドを重ねるごとに、出したら合わされるんじゃないかっていう意識を植え付けられたので、彼が手を出せなくなってきた」
その言葉通り、フランコの手数が減りはじめる。
そこを井岡は見逃さなかった。
ここぞとばかりに仕掛け、相手の得意のコンビネーションを鮮やかにかわす。
それでも、終盤になると井岡にも疲れが見えはじめる。
お互いが気力を振り絞り、打ち合いを繰り広げた。
そして、試合は前回と同じ12ラウンドまでもつれ込む。
タイトルを返上してまで挑んだリベンジマッチ。
絶対に譲れない勝負の最終ラウンドで井岡は最後の猛攻を見せるが、勝敗の行方はまたしても判定へ。
3対0の判定の末、勝利したのは井岡。
屈辱のドローから6カ月、自らの決断が正しかったことを結果で証明した。
試合後、井岡はリング上で…。
井岡:「去年の大晦日と同じ対戦相手と戦って、求めていた結果ではなかった。あの日から諦めずに今日までいろんなことあったけど、皆さんの支えがあって今日チャンピオンに返り咲くことができました。未来の子どもたちにもこの志を伝えるためにこれからも戦っていきます」
激闘から一夜明け、井岡のもとを訪れる。
そこで語ったのは新たな覚悟だった。
井岡:「勝っているから刀を収めるのかっていうと違うじゃないですか。日々精進して心技体を磨いているからこそ、その地位にいられると思うので、これからも変わらず自分が思うチャンピオンでいようと思っています」
帰ってきたチャンピオン・井岡一翔。その戦いはまだ終わらない。
※放送情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)
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