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前田旺志郎、中学2年生で迫られた“人生の選択”。楽しかった芸能活動が突然「今までやってきたことは仕事なんや」

子役として活動したのち、2007年、兄・航基さんとまえだまえだを結成し、小学生にして「M-1グランプリ」や『エンタの神様』(日本テレビ系)にも出演した前田旺志郎さん。

俳優としての活躍も目覚ましく、2011年には、是枝裕和監督の映画『奇跡』に航基さんとともに主演。映画『キネマの神様』(山田洋次監督)、連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)、『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)など多くの映画、ドラマに出演。

2023年7月29日(土)から「20祭」(20にまつわる4編のオムニバス)で主演短編映画『二十才の夜』(平田雄己監督)が公開される前田旺志郎さんにインタビュー。

 

◆「お兄ちゃんだけずるい」と通いはじめたタレントスクールで

大阪で生まれ育った旺志郎さんは、小さい頃から元気いっぱい。わんぱくで天真爛漫な子どもだったという。

-お兄さんの航基さんがとても内気で恥ずかしがり屋だったということで、お母さまの勧めでタレントスクールに通うことになったとか-

「そうですね。すごく仲が良くていつも2人で遊んでいました。

タレントスクールも、僕は三つだったんですけど、『お兄ちゃんが行っているから自分もやりたい』だけだったんです。送り迎えで付いて行っているうちに『お兄ちゃんだけずるい』って(笑)。

だから僕は全然内気とか人見知りということはなかったです。テンションが高くて、お調子もんという感じでしたね」

-お二人でまえだまえだを結成する前から、ドラマやCMなどに出演されていたそうですが、その頃の記憶はありますか?-

「ほんとにちょっとですけど、『そう言えば、こういうことをやっていたな』くらいの感覚は残っていますね、記憶に」

-いつ頃のことから記憶に残っていますか-

「まえだまえだのときもあまり鮮明ではないですけど、わりと覚えているほうかなくらいな感じです」

-かなり注目を集めましたが、周りの方や学校などで変化はありましたか?-

「当時はうれしいみたいな感覚はそこまでなかったと思います。あまりよくわかってなかったですね。周りに言われるのも、『ありがとう!』くらいの感じでした。

小1だったので、環境がガラッと変わったとはいえ、まだそこまでわからなかったです。まだ5、6年しか生きていないので、それが周りとはちょっと違うことみたいなこともそこまで意識はしてなかったと思います」

-ドラマなどにももうその頃から出るようになっていたのですか?-

「そうですね。まえだまえだとして活動する前からドラマに出ることがありました。兄弟で出演するものもありましたね」

-『エンタの神様』とか「M-1グランプリ」にも大人に混じって出演されていましたが、覚えています?-

「はい。とくにM-1はよく覚えています。人生でといっても6年ですけど、人生でやっぱり一番緊張した瞬間だったので。ものすごい人数の前に出て漫才をやるというのは、とにかく怖かったのを覚えています。もうドキドキして(笑)。

でも、そういうときの兄はめちゃくちゃ頼もしくて、僕が緊張してドキドキしていると、いつも手をギュッと握って『行くぞ!』って言ってくれていたのはすごい覚えていますね」

-お兄ちゃんだから弟を守らなきゃと思ったのでしょうね-

「そうでしょうね。兄とそんな話はわざわざしないですけど、おそらくそうだったんじゃないかなと思います」

※前田旺志郎プロフィル
2000年12月7日生まれ。大阪府出身。子役としてデビューしたのち、6歳のときからまえだまえだとして活動。映画『奇跡』、映画『海街diary』(是枝裕和監督)、映画『キネマの神様』、映画『わたしの幸せな結婚』(塚原あゆ子監督)、連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)、ドラマ『猫』(テレビ東京系)、『女神の教室~リーガル青春白書~』(フジテレビ系)、『量産型リコ-もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』(テレビ東京系)など映画、ドラマに多数出演。2023年7月29日(土)から主演短編映画『二十才の夜』(平田雄己監督)が公開される。

 

◆11歳のときに兄とともに是枝裕和監督映画に主演

2011年、旺志郎さんは、兄・航基さんとともに映画『奇跡』に主演。この映画は、両親の離婚で鹿児島と福岡に離れて暮らす兄弟が、バラバラになった家族を取り戻そうと奮闘する姿を描いたもの。

旺志郎さんは、鹿児島で暮らす母(大塚寧々)と兄(前田航基)と離れ、福岡で父親(オダギリジョー)と暮らす龍之介を演じた。

「あれはオーディションが何回もあって。もともとは男の子と女の子が主人公の話だと聞いていたんです。それで、その男の子のオーディションを受けに行っていたので、兄ともライバルみたいな感じでした。

それが2人ともずっと3次、4次まで受かって。最終的に2人とも受かったとなって。『どういうこと?』って(笑)。

是枝監督が僕たちを見て、脚本を変えてくれたそうです。当時、僕は申し訳ないですけど是枝監督のことを知らなかったんです。

でも、すごい監督だと聞いていたので、『そんなすごい監督が撮ってくれるんだ。うれしい』という感想は持っていたと思います(笑)」

-撮影はスムーズでした?-

「僕は、すごいスムーズな印象でした。是枝監督は、子役には基本的に台本を渡さないので、僕たちも台本をもらっていなかったんです。だからその日にどういう場所で撮影するのかも、どういうことをするのかもわからないまま現場に行って。

そこで監督から『こういうシーンだから、こういうことを言って』と伝えられて『うん、わかった』ってやっていたので、僕としてはとてもシンプルですごいスムーズでした」

-全体的なお話がわかったのは映画が完成してからですか?-

「はい。0号試写を観たときに初めてわかりました。こういう話だったんだって」

-本当の兄弟だから余計リアルに感じられましたが、役についてお二人で話したりは?-

「全然していないです。というか、あれは親が離婚して鹿児島と福岡に分かれて暮らすことになってという話で、僕は鹿児島パートには出てないので、どういう状況なのかもわかっていなくて。

一回、兄と公衆電話で話すシーンがあったんですけど、あれが唯一の鹿児島側の情報だったんです。なので、全貌がまったく見えてないというか、どういう物語なのかもあまりわからず、毎日言われたことに応えるという感じでした。

僕が休憩時間に漫画を読んで笑っているところをこっそり撮影されていて、それがそのまま作品に使われていたりもするので、本当にすごく自由に伸び伸びとやらせてもらったという感じでしたね」

-撮影期間中に航基さんと、どういうシーンを撮ったというようなお話は-

「兄と会ってないんですよ。僕が福岡に行って撮影して終わって帰ってきたくらいで、今度は兄が鹿児島に行って撮影ということだったので。だから最後、熊本に行っての撮影で初めて鹿児島のメンバーとちゃんとしゃべったという感じでした」

-完成した映画をご覧になったときはどうでした?-

「初めて観たときは、ちょっと恥ずかしかったです。あんなに大きな画面で自分を観たのも初めてだったので、恥ずかしかったですね。自分そのまますぎてというか」

-わりと地に近いキャラクターでした?-

「地に近いというか当て書きなので、ほぼ僕でした(笑)。名前だけ違うみたいな感じで」

-また映画に出たいという気持ちは?-

「当時はなかったです。本当にすごく楽しい経験をさせてもらったという感じでした。多分フワフワしていたんだと思います。学校も楽しいし、楽しいことの一個というくらいの認識で、自分は俳優になるという意識もなかったですし」

 

◆中2で両親から人生の選択を迫られ

地元・大阪で楽しい中学生活を送っていた旺志郎さんだったが、中2のときに両親から「芸能生活を続けるなら上京したほうがいいと思うけど、芸能を辞めて地元に残って友だちと同じ高校に進む道もある。私たちはどちらを選んでくれてもいいから自分で考えてみて」と言われたという。

「衝撃的でした。もうビビビですよ。『今までやってきたことは仕事なんや。これを生業(なりわい)としている人がいて、これで食べている人もいれば、やりたいけど食べられていない人もいる。仕事、仕事なんや。うわぁ、どうしよう?』みたいな。

『怖い、怖い。もし仕事がゼロになったら、もしこのまま地元で高校、大学に行って就職してもサラリーマンとしてうまくいかなかったらどうしよう?』とか。『どっちがええやろ?何がしたいんやろう?』って頭の中がグワングワンしていました(笑)」

-まだ14歳とか15歳ですものね-

「はい。『わからん、わからん』みたいな感じで。中2の終わりくらいに言われたと思うんですよね。地元で高校に行くんだったら受験勉強をガッツリして良い学校に行こうと思っていたので、塾に行きつつ、『どうしようかな?』って。

『このまま続ける?でも、地元の友だちと別れるのもなあ』って。友だちも優先順位としては、めっちゃ高かったんです。地元で友だちと一緒の高校に行くか、東京に出て仕事を続けるか。

でも、いろいろ考えていくうちに、それまで仕事として認識できていなかったですけど、楽しかったですし、この仕事を一生やっていくという覚悟はないけど、まだ楽しいと思えるからもうちょっとやってみようかなって思ったんです。

高校3年間続けてみて、楽しくなかったら、そこで辞めてもいいしと。ずっと考えているうちに、急に仕事がなくなったらとか、成功しなかったらみたいなことのハードルがちょっと下がって、とりあえずもうちょっと続けてみようと思って東京に出てきました」

旺志郎さんは、高校入学と同時に上京。映画『疾風ロンド』(吉田照幸監督)やドラマ『カルテット』(TBS系)、『命売ります』(BSジャパン※現:BSテレ東)などさまざまな作品に出演。高校卒業後、慶應義塾大学に進学し、学業と仕事を両立していく。

次回は『奇跡』の是枝裕和監督と再び仕事をすることになった映画『海街diary』の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:佐藤健行(HAPP’S)
スタイリスト:小宮山芽以

©2023『20祭』事務局

※短編映画『二十才の夜』
2023年7月29日(土)~8月4日(金)
池袋シネマ・ロサにてレイトショー!
製作配給:オフィス桐生
監督:平田雄己
出演:前田旺志郎 遠藤健慎 福永拓海 綾乃彩

設立20周年を迎えたオフィス桐生が開催した20にちなみ20づくしのシナリオコンペの受賞作4本を映画化した「20祭」の1本。高校時代に同じバスケ部だった齊藤(福永拓海)が亡くなり、葬式に参列した青嶋(前田旺志郎)は、その帰り道、同級生の佐々木(遠藤健慎)とともに母校の体育館に忍び込み1on1のバスケをすることに。そして、死の直前の齊藤の話題になり…。

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