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貫地谷しほり、20代で大学を辞め“女優1本”の道へ。「一限のため起きるのはつらい。朝一の仕事は起きられる」

2007年、連続テレビ小説『ちりとてちん』(NHK)でヒロインを演じ、広く知られることになった貫地谷しほりさん。

2008年に放送終了後、すぐに『キミ犯人じゃないよね?』(テレビ朝日系)と『あんどーなつ』(TBS系)に主演し、第32回エランドール賞新人賞を受賞。2010年には、舞台『余命1ヶ月の花嫁』で舞台初主演。

2013年に公開された初主演映画『くちづけ』(堤幸彦監督)で第56回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞し、実力派女優として確固たる地位を築いていく。

 

◆女優としてやっていこうと決意したのは大学時代

貫地谷さんは、高校生のときから仕事を始め、『修羅の群れ』(辻裕之監督)や『スウィングガールズ』(矢口史靖監督)など映画にも出演していたが、女優としてやっていけるかどうか不安だったという。

「この仕事が続くのかどうか不安だったので、大学に進学したんですけど、仕事もちょっとずついただけるようになって忙しくなったというのもあって、あまり行けなくなってしまいました。

なかなか単位が取れなくて、大学3年のときに、同級生の子たちと一緒には卒業できないということがわかったんです。そのときに、大学を卒業したほうがいいか、それとも大学を辞めて女優1本でやっていくか、いろんな方に相談しました。

『俺は女子大生の貫地谷が好きだよ』って言ってくれる人もいれば、『別に気持ちが決まっているんだったら大学は辞めてもいいんじゃない』っていう人もいて。

それで、親に『朝一限の授業のために起きるのはつらいのに、朝一の仕事には起きられる。もう今しかできない役をやりたい』と相談したら、『じゃあいいんじゃない?』って背中を押してくれて。大学を辞めた半年後に朝ドラが決まったんです」

-すごいタイミングでしたね-

「そうですね。大学に行ったのは、女優という仕事が続けられるか不安だったからですが、でも、ここまできたら女優をやらないという選択肢のほうが見えなくて大学を辞めました。卒業しておけば良かったなとも思いますけど、結局朝ドラの撮影で通うのは無理だったでしょうね」

-大学を辞めた後、自分のなかで意識は変わりました?-

「はい。『もうお芝居だけやっていくんだ。お芝居だけやっていけるんだ』って、明るかったです」

-実際、作品がずっと続きましたね-

「そうですね。ありがたいことに、20代の頃は本当に忙しかったです。仕事ファーストの毎日でしたけど、『あれ?お芝居できないかも』と思ってしまったときがあって。出すものがないというか。『もっと遊んだり、もっとやんちゃすればよかったな』と思うこともありました」

 

◆朝ドラ終了後、立て続けに民放連続ドラマに主演

連続テレビ小説『ちりとてちん』(NHK)終了後、『キミ犯人じゃないよね?』で民放ドラマに初主演した貫地谷さんは、続いて『あんどーなつ』に主演。

このドラマは、浅草を舞台に、ひょんなことから老舗和菓子屋で和菓子職人の道を歩むことになった安藤奈津(貫地谷しほり)が成長していく様を描いたもの。

-『ちりとてちん』の後、すぐに民放ドラマに立て続けに主演されて。『あんどーなつ』もおもしろくて好きでした-

「ありがとうございます。あのドラマは、事務所の人から聞く前に、友だちの女優さんに、『しほりは次ね、安藤奈津という役をやるんだよ』って言われて、『何で知ってるの?私は知らないんだけど』みたいな感じでした(笑)」

-主役でセリフも多かったですし、和菓子の職人さんということでお菓子作りも大変だったのでは?-

「はい。かなり練習しました。わりと器用なほうではあると思いますけど、和菓子となるとまた別なので大変でした」

-2008年にエランドール新人賞も受賞されました。出演作品が本当に多いですね。お休みがなかったのでは?-

「そうですね。当時はめちゃくちゃやっていました。でも、休みがないのがすごくうれしかったです、当時は(笑)。だんだんセリフが多くなって大変でしたけど、あの頃はセリフがいっぱいあることがすごくうれしかったです。

最近、昔よりもセリフが覚えにくくなったなあって思っていたんですけど、振り返ってみると、あの頃は多分うれしくて、何度も何度もすごい読んでいたんだろうなあって。その差だなということに最近気づきました(笑)」

-主演作以外でも比較的セリフが多いですよね-

「そうかもしれないですね。朝ドラの前は、ちょっとはかなげでおとなしい役とかもあったんですけど、朝ドラ以降は、わりと活発な役でセリフも多くなった気がします」

 

◆恩人・堤幸彦監督作『くちづけ』で映画初主演、ブルーリボン賞主演女優賞受賞

2013年、貫地谷さんは、映画『くちづけ』に主演。これは、劇作家で俳優の宅間孝行さんが主宰し、2012年をもって解散した劇団「東京セレソンデラックス」の名作舞台を堤幸彦監督が映画化したもの。

貫地谷さんが演じたのは、7歳の心を持ったまま大人になった天使のように無垢な主人公・マコ。元人気漫画家の父・愛情いっぽん(竹中直人)とずっとふたりで暮らしてきたが、マコと暮らすためにいっぽんは、知的障害者たちが協力して暮らすグループホームのスタッフとして働くことにして、そこでみんなと一緒に暮らしはじめる。

やがてマコとうーやん(宅間孝行)の間に淡い恋心が生まれる。しかし、いっぽんには、誰にも言えない秘密が…という展開。知的障害者を取り巻く現状とともに、父と娘の悲しい物語と深い愛が綴られている作品。

-貫地谷さんの無垢な表情、濁りのない清らかな瞳が本当に印象的でした。とても切ないお話でしたけど、もともとの舞台はご存じだったのですか-

「いいえ、私は知らなくて、自分があの役をやってから観ました」

-お話が来たときはいかがでした?-

「堤幸彦監督にはすごく恩を感じていて。最初が『H2~君といた日々』(TBS系)というドラマだったんですけど、 そのときも私の宣材写真をすごく気に入ってくださったみたいで、『オーディションに呼べ、呼べ』って堤監督が呼んでくださって。

その役も決まったんですけど、その後、堤監督が『舞台をやる』と言って『H2~』をすぐ抜けられてしまって。その舞台のヒロインに呼んでくださったんです。その後も映画で使ってくださって。

大学を辞める直前も堤監督の映画なんです。だから、私のターニングポイントには堤監督がいたというのがすごくありまして、節目となるところでいつもチャンスをくださる特別な存在です。それで、堤監督がこの映画を撮るのであれば、題材としては優しいものではないけど、チャレンジしてみたいなと思ってやりました」

-それぞれ障害を抱えていますが、本当に切ないまでに清いですね。自分の死期を悟った父親が、結果的にマコを殺(あや)めてしまうことに。切ないですね-

「そうですね。本当に難しかったですけど、懐かしいです」

実際にグループホームに足を運び、知的障害者の方やご家族、関係者に嘘をつかない芝居をしたいという思いでマコ役に挑んだ貫地谷さんの真摯な演技は高く評価され、第56回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。

「賞のことはあまり意識してなかったですけど、すごくうれしかったです。堤監督のおかげだなと思いました。社会派の題材に取り組んでいらっしゃる堤監督が、すごく大事にしたい作品だったと思うので、その作品に呼んでいただけて、すごくうれしかったです」

-コンスタントに主演作もありますが、ご自身のなかで思うところはありますか-

「年々責任があるなというのは感じています。若い頃は『やったー!』みたいな感じでしたけど、『真ん中に立つということは、大変なことだな』って思います」

2019年には、映画『夕陽のあと』(越川道夫監督)に主演。7年前の乳児置き去り事件で手放した息子を取り戻したいと願う生みの親を演じた。さらに同年、『なつぞら』(NHK)で12年ぶりに朝の連続テレビ小説に出演。ナレーター、声優としても活躍し、2023年、『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』(NHK)で第17回声優アワード外国映画・ドラマ賞を受賞。

次回後編ではその撮影エピソード、6月30日(金)に公開される主演映画『オレンジ・ランプ』(三原光尋監督)についても紹介。(津島令子)

ヘアメイク:ICHIKI KITA
スタイリスト:mick(Koa Hole inc.)

©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会

※映画『オレンジ・ランプ』
2023年6月30日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
配給:ギャガ
監督:三原光尋
主演:貫地谷しほり 和田正人
出演:伊嵜充則 山田雅人 赤間麻里子 赤井英和 / 中尾ミエ
39歳で若年性認知症とされながら、10年後の現在も会社勤務を続けつつ、認知症本人のための相談窓口の活動や自身の経験を語る講演などを行っている丹野智文さんの実話をもとに、夫婦の希望と再生を描く。39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された只野晃一(和田正人)は、妻・真央(貫地谷しほり)と2人の娘を抱え、不安に押し潰されそうになる。しかし、ある出会いをきっかけに真央と晃一の意識に変化が訪れる。やがて2人を取り巻く世界もまた、変化していき…。

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