千葉ロッテ・松川虎生、歴史を塗り替えた1年目で見えた課題。「自分のせいで…」悔しさの残った“忘れられないミス”
3月30日、ついにプロ野球が開幕。
2年目のシーズンで躍進を誓うのは、千葉ロッテマリーンズ・松川虎生(こう)、19歳。
昨年、「高卒ルーキーの開幕マスク」という日本プロ野球史上3人目となる快挙を果たした期待の若手選手だ。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、プロ2年目を迎えた松川を特集した。
◆1年目は「本当に悔しいシーズンだった」
昨シーズン、松川は開幕以降も1年を通して1軍に滞在し、76試合に出場。新人にしては十分すぎる活躍を見せた。
そのなかでも松川が一際注目されたのは、昨年4月のオリックス戦。
松川:「完全試合は自分の中にも残ってますし、本当に偉大な記録だと思うので、すごく印象にある試合です」
WBCで侍ジャパンにも選出された佐々木朗希とバッテリーを組んだ松川。
佐々木が偉業を達成した試合だが、新人選手が完全試合の捕手を務めたのも史上初の快挙だった。
活躍を認められた松川は、その後オールスターにも選出。一度も2軍に落ちることなく、1年目を1軍で戦い抜いてみせた。
しかし、松川はシーズンを振り返ってこう話す。
松川:「いいスタートを切れましたけど、振り返ってみれば、本当に悔しいシーズンだったと感じます」
こみ上げてくるのは、達成感よりも悔しさばかりだという。
松川は、シーズン中から自身の弱点をハッキリと自覚していた。
松川:「あまり自分の思うような結果が出なかったですし、自分のタイミングで間を作りながら強いスイングができなかった」
課題にしていたのは“バッティング”。
そもそも松川といえば、高校時代はホームラン通算43本を誇り、「打てるキャッチャー」という前評判からドラフト1位でロッテに入団した。
しかし、終わってみれば1年目の打率は1割7分3厘。これはパ・リーグのキャッチャー(※50試合以上出場)の中でワーストの成績で、さらにホームランも0本と自慢のパワーを発揮できなかった。
シーズン終了後、松川は自主トレでもひたすらバッティング強化に励んでいた。
そこでとくに繰り返していたのが、スローボールを打つ練習。
松川:「速いボールは自分のポイントで打たなくても何とかごまかせる部分はあったんですけど、スローボールのほうが自分の力強いスイングができれば、ボールの飛距離にあらわれると感じています」
スローボールは、強く振り抜かなければ飛距離が出ない。そのため、力強いスイングを実現するにはうってつけの練習なのだという。
松川:「打率は2割以上残さないとキャッチャーとして出られないと思うので、しっかり強いスイングをして、チームに貢献できるようにやっていきたいです」
◆課題は「12球団ワースト」の成績
そして、松川はもうひとつ自身の課題を見出していた。
それは「12球団ワースト」という結果をもたらしてしまったもの。
松川:「ブロッキングの部分で、まだまだピッチャーから信頼されていないと思います」
“ブロッキング”とは、キャッチャーがボールを後ろにそらさないように止めて前に落とす動作のこと。
昨シーズン、松川がブロッキングできずにボールを後ろにそらしてしまった回数は6。一見少ないようにも見える数字だが、これは12球団ワーストの成績だった。
松川:「ショートバウンドを投げてほしいときにピッチャーが投げられない。シーズンが終わってから、ピッチャーの方に『もっとブロッキングを頑張ったほうがいいよ』と教えていただいた」
ピッチャーとの信頼関係にも影響するブロッキング。松川には、その重要性をさらに身をもって実感した試合があったという。
松川:「日本ハム戦だったと思うんですけど、9回の大事な場面で益田(直也)さんがスライダーを投げて、僕が後ろにそらしてしまって、ランナーが3塁に行ってタイムリーを打たれた場面があった」
それは、8月の日本ハム戦。9回表2アウト、1点リードで迎えた場面でピッチャーは守護神・益田。
あとアウトひとつで勝利という状況で松川は低めの変化球を要求したが、手前でワンバウンドした球を大きく弾いてしまう。
ここからチームは同点に追いつかれてしまった。
松川:「本当に悔しかったですし、あの場面で抑えていれば勝っていたと思いますし、“自分のせいで”っていう風にすごく感じました」
ひとつのミスが勝敗を左右しかねないブロッキング。一体何が問題だったのか。
現役時代、ロッテの正捕手として攻守で活躍し、日本代表としても第1回WBC優勝に貢献した里崎智也に聞いた。
里崎:「ブロッキングに入ったときに重心が少し上がる。上がることによって、ボールの変化を見れずに対応しきれていない」
里崎が指摘したのは、「重心が上がっている」こと。重心が上がるとボールを後ろにそらすリスクが高くなるという。
松川の重心はなぜ上がってしまったのか。里崎が注目したのは、松川のミットの出し方だった。
里崎:「構えたときにミットが落ちてから、そのままブロッキングに行くんですよ。落ちるということは、体の中心よりミットが下がる。そうなると顔とミットの位置が遠くなる。それでブロッキングに行くと重心が高くなるんです」
ブロッキングを失敗した試合の松川のように、ミットを縦に倒すように下ろすと、手だけが伸びて、体が起きたまま重心が上がってしまう。
結果、顔とミットの位置が遠くなり、最後まで目でボールを追えなくなってしまうという。
そんな自身の欠点と向き合うため、松川は春季キャンプでもブロッキング練習に励んだ。
松川:「本当に浮く癖がありますし、上から行かないように下からというところは意識してやってます」
迎えた2年目、松川はどんなシーズンを思い描いているのか。最後に2年目の誓いを書いてもらった。
松川:「去年は試合に出させていただきましたし、今年は2年目で成長するところもたくさんあると思うので、しっかり勝負できて勝てるように『勝負』という言葉を選びました」
数々の歴史を塗り替えた1年目。その中で見えてきた課題を乗り越え、近い将来、球界を代表するキャッチャーに――。
松川の“勝負の1年”が始まった。
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)