「翔平にそっくり」二刀流の生みの親・栗山英樹氏が期待する新たな逸材 新庄剛志監督も「素晴らしい」と絶賛
北海道日本ハムファイターズのチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務める栗山英樹氏が、テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』でナビゲーターの南原清隆と対談。
9年ぶりのリーグ優勝を目指すチームの現状、そして未来を託す若手選手たちへの想いを語った。
テレ朝POSTでは、対談の模様を3回に分けて紹介する。第2回のテーマは「新世代の二刀流」。
◆「ちょっと大谷選手に似てますね」
日本ハムでチーム編成のトップを担うCBOとして、全国の逸材を発掘してきた栗山氏。そのなかで新たな二刀流の才能を見出していた。
南原:「新戦力の今年入った柴田選手、ご覧になってどうですか?」
栗山:「思った通りでしたね。本当に、投打両方とも期待感ある。打ち方なんか高校でピッチャーやりながらよくこんな形で打ってきたなっていうぐらい、ある程度きれいな打ち方ができている。だからこそ起用法や育成法がすごく難しいって今ずっと話しています」
去年のドラフト会議。栗山氏も参加するなか、日本ハムが1位で指名したのが福岡大学付属大濠高校の柴田獅子(れお)、19歳。
高校時代は甲子園とは無縁の存在だったが、187センチの長身から投げ下ろす最速149キロのストレートを武器に、バッターを翻弄。打っては高校通算19本塁打を記録し、プロの舞台でも二刀流として期待されている。
柴田:「ピッチャーだと、自分はガンガン押していくタイプではなく、相手の隙や弱点を狙っていくスタイル。バッターとしては打球の飛ばし方、ホームランへの角度には自信があります」
実はドラフト会議の翌日、栗山氏は自ら挨拶に訪れ、柴田と初の対面を果たしていた。
柴田:「『(二刀流の)可能性があるから』と言われて、本当に嬉しい気持ちになりました。やりたいことを尊重してくださるので、自分の目指す場所に向かって突き進みやすい。本当に良かったなと思います」
そんな柴田について、栗山氏は次のように語る。
栗山:「考え方が独特です。すごいです」
南原:「何が独特なんですか?」
栗山:「自主トレのときから、こっちのプレッシャーがものすごいんです。こうさせろ、ああしたい、こうしたいんだって。どんどん進みたいし、もっと野球を学びたいんだって」
2月の春季キャンプ。柴田のバッティング練習中、こんなシーンがあった。
新庄剛志監督と栗山氏が熱い視線を送るなか、次々とネットに鋭い打球を突き刺す柴田。そのバッティングを見た指揮官は、「ナイスバッティング。この本数で合格。素晴らしい」と絶賛した。
そして練習を終えた柴田に、栗山氏が声を掛けていた。およそ5分間、2人だけの会話。真剣な表情で言葉を交わす。
栗山:「野球しか考えてない感じは間違いなくあります。『午後からのこの時間はなんですか? 学ぶ時間がない。プロになったらもっと勉強できるはずじゃないですか?』って感じです。『早く!』みたいな」
南原:「吸収したい?」
栗山:「そんな感じですね」
南原:「なんだか栗山さん、嬉しそうですね」
栗山:「まあ嬉しいですね(笑)」
南原:「ちょっと大谷選手に似てますね」
栗山:「そっくりですね、そこの部分は。ほかのことは一切考えてない感じです」
◆三刀流も視野? 可能性は無限大
その思考は大谷に似ているというが、では二刀流としての可能性は?
栗山:「たぶんバッターだけやったら結構すっといくと思います。チームとしたらそういう選択肢もあるけど、やっぱり150キロの強いボールを投げられるので。どういう形で進めてあげたらいちばんチームのためになり、柴田獅子のためになるかは、本当に丁寧に考えています」
栗山:「あと、意外と守備もできるんですよ」
南原:「うまいですか?」
栗山:「それだけに絞れば内野もできると思いますね。だから余計選択が難しくなる」
南原:「まさにセンスの塊ですね」
ピッチャーとバッターに加えて、なんと内野手まで。
実はドラフト翌日、柴田と初めて対面した際、栗山氏は、二刀流を超える壮大なプランを口にしていた。
「『二刀流』という言葉が悪いわけじゃなくて、もっと違う、新しいタイプの野球人ということができるだろうし、5年後(二刀流とは)違う書き方の選手になっているはずだと僕は信じてます」
◆大谷翔平とは違う育成アプローチ
二刀流から広がる、柴田の新たな可能性。では、この逸材を二刀流の生みの親・栗山氏は、どのように育てていくのだろうか。
南原:「ファイターズには二刀流を育てた経験とデータがありますよね。大谷選手のように育てたいのか、比較してどんな感じですか?」
栗山:「打つ、投げる、走る、捕る。すべての部分に対して今評価をしています。例えば筋量はどのくらいで体がどうなっているのか、疲れは何時間で抜けるのか、それをこのキャンプで確認している状況ですね。見た目は翔平にそっくりですが、柴田獅子の形をどう見出すかが大事だと思います」
大谷とは違う育成法。実際、春季キャンプでの柴田の練習を見てみると、重きを置いていたのは身体づくり。打撃練習は1日おきの頻度で、ブルペンでの投球は期間中にわずか1度だけだった。
今から12年前、高卒ルーキーだった大谷はというと、ブルペンで投げ込みをすると、その直後にインターバル走を実施。さらにバッティング練習も。1日の中で投打両方のメニューとトレーニングに取り組んでいた。
同じ二刀流でもその育成法はまったく違う。
柴田:「大谷選手がこの練習をしているから自分もやっているという練習はとくになくて、同じことといえば考え方でしょうか。今は一つひとつのトレーニングの動き方や動作的なものをしっかりと勉強して、理解を深めてるという感じですね」
◆1年目からの起用法にも違いが
プロ1年目の大谷との違いは、その起用法にもあらわれる。
大谷は開幕戦からスタメンに抜擢されると、1年を通しバッターとして出場。5月にはピッチャーとしてデビューも飾った。
一方、柴田は開幕を2軍で迎え、公式戦2試合目でプロ初安打初打点を記録。その傍ら、ピッチャーとしては開幕からおよそ1カ月後の4月20日に2軍の公式戦で1回無失点、自己最速の151キロを記録するなど3者連続三振というデビューを飾った。
南原:「大谷選手と同じように即戦力でもどんどん使うという予定は、今のところまだないですか?」
栗山:「まぁ僕が言うのも変ですよね。僕、翔平のこと開幕から使いましたから(笑)。でも柴田選手、打つほうの形は非常にきれいです。しっかり振れるし、びっくりしました。あそこまでできているんだって。あとは慣れて体ができればという感じですね」
南原:「もし栗山さんが監督だったらどうしていました?」
栗山:「少し分けたほうがいいと思います。2人の選手がいると思って、バッターとしてこういう感じで進める。ピッチャーとしてはこういうふうに進める。ただ、怪我するのはピッチャーなので、そこは丁寧に準備をして、体がしっかり壊れないようにもっていくでしょうね」
南原:「大谷選手もそうでしたよね? ピッチャーとして、バッターとして」
栗山:「それ、ナンちゃん誘惑してます?」
南原:「いやいや、どうなのかなって(笑)。ピッチャーとして、バッターとして、最初に経験させたいと思ってボンっと使いましたもんね」
栗山:「…確かに。でも、柴田選手も非常にその可能性があるぐらい能力があると思います」
南原:「スター選手になれるようにしっかりと見極めつつ、育てる環境を作ってくださいね」
かつて二刀流を作り上げた日本ハムに誕生した新たな二刀流。見据える先には…。
柴田:「大谷選手は本当にすごいとしか言いようがなくて、あの領域にいきたいと思っています。今まではプロ野球選手が夢だったんですけど、これからはあのステージに立つことが夢ですね」
ちょうど1年前、二刀流で成功する要素として栗山氏は、こんな言葉を漏らしていた。
「結局はやり続けられる強さだと思います。翔平もそうですよね。二刀流って言いますけど、ずっと野球をやり続けられる強さがある」
やり続けられる強さ。北の大地に芽吹き始めた新たな逸材。その花が開くまで…。
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)