最終回、ついに設楽紘一(藤ヶ谷太輔)が西島いつか(関水渚)に蹴られる タイトルに隠された伏線とは?<ハマる男に蹴りたい女>
<恋愛コラムニスト・DJあおいの『ハマる男に蹴りたい女』最終回分析コラム>
再就職先は女だらけの下宿管理人! 人生の沼にハマッた元エリート・設楽紘一(藤ヶ谷太輔)が、住人のズボラお仕事女子・西島いつか(関水渚)と“オトナの一つ屋根の下ラブ”を繰り広げるラブコメドラマ『ハマる男に蹴りたい女』。
毎話“じれキュン”必至のストーリーを、Twitterやブログで独自の恋愛観を語り著名人にもファンが多い謎の主婦・DJあおいが深掘り&考察する恋愛コラム連載。毒舌(?)ながらも愛のある言葉でストーリーを分析していきます。
「やっぱり管理人さんのこと、好きになれそうにありません」
前回いつかちゃんから正式に振られてしまった設楽くんでしたが、もちろんこれは設楽くんの将来を案じての詭弁であり、いつかちゃんの本心ではありません。
自分の恋心という名のエゴイズムよりも、本来設楽くんがいるべきエリート街道に、心置きなく行かせてあげるための優しい嘘。設楽くんに対するいつかちゃんの深い愛情が窺える場面でしたね。
本来このような嘘は通じることはなく、秒で看破されてしまうことがほとんどなのですが、設楽くんはこの嘘をまるっと信じ込み凹んでしまいました。設楽くんともあろう男がなぜこんな簡単な嘘を見抜けなかったのでしょうか。
モテる男性にありがちなことなのですが、モテてしまうがゆえに恋愛に対して受け身になってしまうことが多く、女性の気持ちの機微に鈍感なんですよね
察する必要もなく女性に従っているだけで恋愛が成立してしまうことが常なので、繊細な女心を知らないまま大人になってしまうんです。
設楽くんは高スペックのエリートであり、見た目もご覧の通りのグッドルッキングガイで、気になるあっちの方も元妻である夏美(早見あかり)を翻弄させるほどの匠な腕前であり、モテモテ人生を歩んできたことが容易に推測されます(銀星荘ではモテませんが)。だから、いつかちゃんの言葉をそのまま信じてしまったのでしょう。
そして、意気消沈してしまった設楽くんは居たたまれなくなり、銀星荘を出ていくことを決断するのですが、出ていった先はなんと銀星荘のデッキ。そこにテントを張ってプチ家出をするいじましい姿に中学生みを感じました。
元同僚であるツッチー(インディアンス・田渕章裕)のところとか、元後輩である武田くん(西垣匠)のところとか、家出をする場所はいくつもあったと思うのですが、それでもきっと銀星荘の居心地がよかったのでしょうね。
さて、しま子ママ(大地真央)の元へ行きエリートコースに戻るのか、それとも別の道を選ぶのか、人生の選択を迫られる設楽くんですが、ここでしま子ママの言葉が思い出されます。
「人生に疲れたとき、楽な方、居心地のいい方に流れるのは容易いこと。だけど、気付いたときにはもう、元の場所には戻れなくなっているものよ」
さすが一代で食品メーカートップのCEOにまで上り詰めたしま子ママ、この世の真理を突いた金言であり、反論の余地などありません。
もちろんこの言葉は設楽くんを自分の元に引き込むための言葉だったのですが、設楽くんはこの言葉からまったく異なるプランを描きます。
設楽くんにとって、「楽な方へ流されること」とは、しま子ママの元へ行きエリート街道に戻ること。そして、戻れなくなってしまう場所とは、銀星荘だと捉えたのでしょう。
プロの管理人になるために銀星荘運営における改善提案書を作成してナオ姉(西田尚美)に直談判、そしてカヅキビールで培った経験やスキルを活かし、企業のコンサルティング事業を立ち上げるというダブルワークを選択します。
完全にアテが外れたしま子ママですが、きっとこの設楽くんの姿に、女手ひとつで事業を立ち上げたかつての自分を重ね合わせたのでしょうね。
頼もしく育った我が子を慈しむその姿はすでにCEOではなく母親そのもの。巣立つ子を応援しない親などいませんからね。
設楽親子にとっても、いつかちゃんをはじめとする銀星荘のみなさんにとっても、最適解な形で大団円を迎えることができました。
これでもう設楽くんといつかちゃんの障害となるものはありません。あとはいつかちゃんが設楽くんにお気持ち表明をすればハッピーエンドの完成なのですが、いつかちゃんは最後まで設楽くんのことを「好きだ」とは言いませんでした。
それどころか、「上海に行く行く詐欺で結局行かなかった罰です」と解けた靴紐を設楽くんに結ばせる始末。挙げ句の果てには「ムカつく、イライラする」と設楽くんを足蹴にします。
今まで「蹴りたい」と発言することはありましたが、実際に足蹴にしたのは今回が初めてです。
この不可解ないつかちゃんの言動には、一体どんな意味が込められているのか。いつかちゃんの大親友であるミチコ(ラランド・サーヤ)の言葉にヒントがあります。
「あんたが本当に許せないのは、設楽紘一じゃないよ、一番ムカついてどうしようもない相手は、設楽紘一を許せないいつか自身だよ」
いつかちゃんがムカついていたのは、設楽くんではなく自分自身でした。そして「蹴りたい」と思っていたのに蹴らなかったのは、そんな自分を許さないため。
今回ついに足蹴にしたのは、設楽紘一を許せなかった自分自身。つまり自分を投影した設楽くんを蹴ることにより、設楽紘一を許せなかった自分自身から解放されたわけです。
『ハマる男に蹴りたい女』、ここでタイトルの伏線が回収されたということですね。
そして物語の結末は視聴者のご想像にお任せするというオープンエンド。設楽くんの作ったご飯をおいしそうに食べるいつかちゃんが映し出されて完結です。
この結末をどう捉えるかはお好みでいいのですが、個人的には「まだ正式に付き合ってはいないのでは?」と妄想しております。
だって恋愛においてもっとも楽しい時間って、友達以上恋人未満の関係である時間ではありませんか?
せっかく二人の関係を邪魔する障害がなくなった今だからこそ、焦ることなくゆっくりと曖昧な関係を存分に楽しんでほしい。後にもっとも深く記憶に刻まれているのは、そんな曖昧な関係であった頃の二人ですからね。
『ハマる男に蹴りたい』全10話、この分析コラムを読んでいただき、心から感謝いたします。お目に掛かる機会があればまたお会いしましょう。
※番組情報:オシドラサタデー『ハマる男に蹴りたい女』
藤ヶ谷太輔、関水渚、京本大我、久保田紗友、西垣匠、サーヤ(ラランド)、田渕章裕(インディアンス)、金子隼也/西田尚美、大地真央
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