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高島礼子、だまされて挑戦した韓国ドラマ。セリフはすべて韓国語、台本は当日に本物が「本当に帰ろうと思いました(笑)」

4代目“極妻”として映画『極道の妻たち』シリーズ5作品に主演し、確固たる地位を築いた高島礼子さん。

『監察医・篠宮葉月 死体は語る』シリーズ(テレビ東京系)、『御宿かわせみ』シリーズ(NHK)、『キソウの女』シリーズ(テレビ朝日系)などテレビドラマシリーズにも主演。2000年に吉永小百合さんと共演した『長崎ぶらぶら節』(深町幸男監督)で第24回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2011年には、『のり子、ソウルへ行く』(韓国KBS)で初めて韓国ドラマに挑戦。

2023年2月24日(金)に公開される映画『いちばん逢いたいひと』(丈監督)では、白血病を発症した娘を支える母親役を演じている。

© TT Global

◆吉永小百合さんとの共演は夢だった

2000年、高島さんは『長崎ぶらぶら節』で吉永小百合さんと共演。この映画は、明治から昭和期にかけての長崎を舞台に、無償の愛に生きた伝説の芸者の生きざまと、大人の男女の純愛を描いたもの。

高島さんは、吉永さん演じる丸山芸者・愛八と激しい火花を散らす町芸者・米吉を演じた。

「東映で育った役者にとって、吉永小百合さんとご一緒したいというのは一つの夢でもあったので、とてもうれしかったです。しかも吉永さんに啖呵(たんか)をきらなきゃいけない。そして愛人役が渡哲也さんで、ものすごく緊張しました。すごく思い出深いですね」

-吉永さんとのケンカのシーンも印象的でした-

「あれは私がインしてすぐのときに、取材があるから闘いのシーンを撮りたいって言われたんですよ。すでに監督の演出を受けて撮影したシーンを記者の前で見せるのならまだしも、『私は来たばかりで、このシーンはまだやってないんですけど』って言ったんですけど、『やってくれ』ってなって。

あのときほど緊張したことはなかったですね。方言のセリフもあるし、まだやってないシーンを記者の方たちの前でやってくれと言われたときは、ひっくり返りそうになりました。

それも闘いのシーンを撮りたいって言われたんですよ。でも、やっぱり吉永さんはすごいです。オーラもすごいですし、すぐにそういう気持ちにさせてくださるところはさすがに吉永小百合さんだなあって思いました」

-吉永さんとは、撮影の合間はどんなことをお話しされていたのですか?-

「撮影が夏ですごく暑かったんですよ。そうしたら吉永さんが、『手首の内側を氷で冷やすといいのよ』って教えてくださって。やってみたら本当に良かったんです。

吉永さんは、あんなにオーラがあるのにオーラを消せるんです。そんな人がいるんだって初めて知りました。主役の人たちはだいたい『おはようございます!』って結構バーンと入ってくるのに、吉永さんはオーラを消してスーッと入ってきて、帰りもスーッといなくなるんですよ。撮影しているときはすごいオーラがあるんですけど、不思議だなあって。

スタッフさんが『吉永さん来てないやんけ』なんて言ったら、『います』みたいな感じで(笑)。あれは本当におもしろかったですね。

撮影が終わったときに吉永さんがアルマーニの高級バッグをくださったんです。感激しました。今でも大切に使わせていただいています」

-この映画で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞されました-

「ちょっと信じられないという感じはありました。吉永さんがそのときに(最優秀)主演女優賞を受賞されたので、お役に立てて良かったなという思いのほうが強かったかな。吉永さんと一緒に受賞できて本当に良かったと思いました」

 

◆ニューヨークで休暇のはずが韓国ドラマに出演することに

『長崎ぶらぶら節』以降も『御宿かわせみ』シリーズ(NHK)、『キソウの女』シリーズ(テレビ朝日系)、映画『Dear Heart-震えて眠れ-』(井坂聡監督)など主演作も含め、多くのドラマ、映画に出演。

2011年には、『のり子、ソウルへ行く!』(韓国KBS)で初めて韓国ドラマに挑戦。ドラマ『美男ですね』(韓国SBS)で知られ、日本でドラマ『マッスルガール!』(TBS系)に主演したこともあるイ・ホンギさんと共演した。

高島さんが演じたのは、韓流が大好きな主婦・のり子。ある日、病院で肺ガンという診断結果を受け、娘のみゆきに「やればできる!」という姿を見せて勇気を与えるため、韓国でオーディション番組に出演することに。

「あれは本当に大変でした。だまされましたね(笑)。忙しくさせていただいていた時期だったのですが、たまたま女優歴初めてにして1カ月お休みを取っていたんですよ、8月に。ニューヨークに行くからって。

そうしたら、7月の中旬ぐらいに、お友だちのプロデューサーが『韓国ドラマに出ない?』って言ってきて、『いつ?』って聞いたら『8月なんだけど』って言うんですよ。普通だったら空いてないのに、『どうしよう?空いているわ』って(笑)」

-ニューヨークへのチケットなどは?-

「全部取っていました。だから全部キャンセルして、皆さんにごめんなさいって謝って。ちょっとやってみたいなあって、スケジュールは空けたんです。

私は韓国語がしゃべれないと言ったら、『いいの。日本人の役だから、韓国語は一切しゃべらないから大丈夫』って言われて、それなら大丈夫かなと思ったんですけど、だまされて(笑)。

『一応韓国語のスクールに通ってくれる?スタッフの言うことがわからなかったら困るでしょう?』って言われて、『あっ、そうか』みたいな感じで、7月いっぱいギリギリまで仕事をしていたんですけど、その合間に韓国語を習いに行ったんですよ。

それで『終わったらすぐに韓国に行ってくれる?』って言われて。『8月10日から撮影なのに、何で10日も前から行かなくちゃいけないのかな?』って思ったんですけど、友だちと遊んでいればいいかみたいな感じで行ったら、ギリギリになって渡された台本が全部韓国語で(笑)。

7月の下旬ぐらいからだんだん『何かおかしいな?』っていう雰囲気になっていたんですよ。プロットが来たときに全部韓国語だったので、おかしいなあとは思っていたんですけど、実際『全部韓国語でお願いします』ということになって」

-韓国語のセリフがかなりの量でしたね-

「そうなんですよ。それなのに、8月ギリギリになってからも監督と全然お会いしたことがなかったので、『監督に会ったこともない私が本当に出ていいのかな?』ってだんだん不安になってきて、『とにかく監督に1回会わせてくれ』って言ったんですけど、『いや、会わなくて大丈夫です』って言うんですよ。

『いやいや、そういうわけにはいかないでしょう?』って(笑)。衣装合わせにも来られなかったから、『衣装合わせに監督がいなくていいんですか?』って、本当に不思議だったんです。

それで、『とにかく監督に会わないと何だかよくわからないし、話が違うんだけど』ってちょっと強く言ったら会うことになって。

『すみません。私はセリフが韓国語だということは聞いてないんですけど』って言ったら、『僕は、中国の人と先日お仕事をしたんですけど、できましたよ。高島さんは日本のベテラン女優さんですよね。できますよ』って言われて。

それを聞いた瞬間、『帰る!』って思いました。こんなことをこの年になって言われるのは初めてというか、いまだかつてそんなことを言われたことはないみたいなことまで言われてすごく悔しいと思ったんですよね。

でも、ここまで来て逃げて帰るなんて…みたいな。そうしたら、そこから火事場の馬鹿力というんでしょうか。『やってやるよ!』っていう気になって。もう悔しいという一心ですね」

-韓国語でのお芝居、やりましたものね-

「はい、やりました。すごいと自分でも思います。いまだに信じられないです(笑)。本当にいまだに信じられないんですけど、できちゃったんですね(笑)。自分でもよくやったなあって思います。

ただ、向こうってすごくおもしろいのは、最初に来たものと台本がまったく違うんです。数日前に届いた台本とまったく内容が違うものを(撮影)当日渡されるんです。『先に台本を作って渡すと盗まれるから』って」

-向こうでは、先にきちんとした台本を作ると、その作品ができるより先に同じ内容の作品が作られてしまうから、撮影当日まで台本を渡さないと言われていますね-

「そうなんですよ。『盗まれるので、これが本物です』って言われたときには、本当に日本に帰ろうと思いました(笑)。イン前日に私が帰っても、誰からも私は責められないだろうなと。でも、今さら帰ってもなあって。

相手役の男の子(イ・ホンギ)が『美男ですね』で日本でも人気があるんですけど、彼は日本で『マッスルガール!』というドラマに主演したことがあって。

『異国の地で主役を張るのは大変でしょう』と、すごく優しかったんです。『何だったら読み合わせ付き合います』みたいな感じで。

いきなり20歳くらいの男の子からそんなことを言っていただいちゃって、何か感動しちゃったというか。今思うと感動しやすいんですね(笑)。そんなことを言ってもらえるということに感動して、それでまた頑張れたかなあって。だからいまだに友だちですね」

-色々なジャンルのお仕事をされていて『マダガスカル』シリーズでは声優も。声のお仕事はいかがでした?-

「おもしろかったです。日本のアニメと違ってハリウッドのアニメは、英語で役者さんが演じて出来上がったものを日本語で吹き替えるじゃないですか。

しかも、グロリア役のジェイダ・ピンケット=スミスさんの吹き替えで、アメリカから指導者の方がいらっしゃって、『黒人の女性みたいなイメージでお願いします』って言われたんですけど『どういうイメージだろう?』って(笑)。でも、そういう演出がとても楽しかったです」

-すごくノリがいい感じでしたね-

「私は踊りながらやっていたんです。そうしないと、気持ちが乗っていかないというか。『踊らなくていいよ』って言われたんですけど、『違うんです。こうでもしないと乗れないんです』って(笑)。

人の声に合わせていくというのかな。自分の自由にならないけど、その限られたところで、自分の声に気持ちを入れていくということがおもしろかったですね」

2022年は、ドラマ『警視庁考察一課』(テレビ東京系)に出演。名取裕子さん、船越英一郎さん、内藤剛志さん、山村紅葉さんなど2時間ドラマのレジェンドの共演が話題に。

「あれは楽しかったですね。あのメンバーが揃うということはなかったので。男の人はみんな夫婦役とかでご一緒させていただいたことはあったんですけど、名取さんにお会いしたのは初めてですし。やっぱり自分が主役をやっているとないんですよね。

一番おかしかったのは、皆さん2時間ドラマをたくさんやってこられたから、このドラマの考察をしているんですよ。

船越さんと名取さんがよく、『このセリフはおかしい』って、台本の考察をしているんですね。それがもう動画に収めたいくらいおもしろくて。あれは本当にメイキングを撮っておけばいいのにって思いました(笑)。

私はどちらかというと台本に忠実なんです。でも、名取さんとか船越さんは、『これはおかしい』となったら話し合いになるらしいんです。『そういう撮り方をしていたんですか?』って言ったら『お前はどうだったんだ?』って聞かれたので『私は台本に忠実に…』って(笑)。

私は、あまりにもおかしいところは、『監督、ちょっとここ変ですよね』といったことはありましたけど、基本的には忠実に『てにをは』も変えずにその通りにやっていたんですよね。

でも、やっぱり名取さんとか船越さんみたいに、変なところはちゃんと直したほうが結局おもしろくなったりするじゃないですか。やっぱりレジェンド、本当のレジェンドがいるって思いました(笑)」

© TT Global

※映画『いちばん逢いたいひと』
2023年2月24日(金)よりシネ・リーブルほかにて公開
配給・宣伝:渋谷プロダクション
監督:丈
出演:倉野尾成美(AKB48) 三浦浩一 不破万作 田中真弓 大森ヒロシ 丈 崔哲浩 中村玉緒(特別出演) 高島礼子

◆病気の子を持つ母親役で子役に刺激を受けて

2023年2月24日(金)に公開される映画『いちばん逢いたいひと』では、愛娘が白血病を発症した母・佳澄役。11歳になる愛娘・楓が「急性骨髄性白血病」と診断され、娘のドナー探しが始まる。

同じ頃、IT企業を経営する柳井(崔哲浩)は最愛の娘を白血病で亡くしてしまう。娘の死で家庭は崩壊、仕事も失ってしまう。彼にとって唯一の誇れることは、見知らぬ人の骨髄ドナーになったということ。娘が白血病になったふたつの家族の物語が交差する。

「最初にこの話を聞いたときは、監督の丈さんが同じ事務所であるということと、仕事をよく一緒にしていたので人柄もわかっているし、劇団でちゃんと演出もされているというのもあったので、『丈さんが撮るんだったら、通行人でもいいから出して』みたいな感じだったんです。

それで、台本を読ませていただいたんですが、私は子どもを持ったことはないけど子どもだったときはあるので、子どもの気持ちはわかりますから、切なすぎるなあって。

監督の演出の仕方とか、役者さんによって、台本で読んだときと、実際出来上がったときと印象が全然違うときがあって、本作の印象はずいぶん変わりましたね。

最初はただ切ない、白血病を発症した子を持った家族の話であり、その子が一人旅に出る話という大雑把な捉え方だったんですけど、実際にできてくると、深くて、思っていたよりも明るい。そして説教臭くない。

それで、崔さんが演じる柳井の家庭と、私が演じている笹川家の対比。どちらも娘が白血病という同じ病気を抱えているのに、何でこんなに違うのかというところで、私は結構不思議なものを感じまして。

子どもが同じ病気なのに、片方はこんなに明るく前向きな家族で、崔さんが演じる柳井の家族は娘が亡くなり、そのこと以外にもどんどんボロボロになっていくという、その違いってなんだろうっていうのを出来上がったときに思いました。これは全然ただの病気を抱えた娘の話じゃないって。さすがだな、丈さんすごいって思いました」

-本当に柳井家には次から次へと不幸が-

「本当にそうですよね。一生懸命頑張ってやってきたのに、そりゃあ折れるわって」

-柳井にとっては自分が骨髄を提供したことで一人の命が助かったということが唯一誇れることで、生きる支えになっています-

「救いようがないんですよね。仕事ばかりやってきたお父さんがというところで、子どもとか家族に対して申し訳ないという思いがあったと思うんですけど、あそこでよく骨髄バンクに登録したなあって思います。

でも、本当に不幸なことばかりで、彼は何でこんなに不幸にって、何回か私は本当に号泣しました」

-丈監督が演じた、柳井の友人・康介はとても人間味があってすばらしい人でしたね-

「良いところ取りましたよね(笑)。丈さんはやっぱり役者でもあるから、そこは出たいですよね。ああいう友だちがいるといいですよね。

自分が演じるから遠慮したんでしょうけど、本当だったら、康介がもっともっと柳井の力になっても良かったかもしれない。彼ならもっと色々できたんじゃないかなって思う。だから友だちってやっぱり大事だなあって思います」

-お子さんの楓役は小学生時代とそのあとのお二人でしたが、いかがでした?-

「子役の(田中)千空ちゃん、ちょっと恐るべしですよ。監督の丈さんが、大人の芝居にはあまり口を出さなかったんですけど、子どもの芝居にはすごくこだわっていたんです。

二人とも頑張っていました。千空ちゃんは、何を言われても『はい』ってちゃんとやっていたから私も影響されて、子どもに負けている場合じゃない、子役に負けている場合じゃないみたいな感じでした。子役の子って臨機応変にできるんだなあって。

大人になった楓役の(AKB48の倉野尾)成美ちゃんも本当に元気な子で、役にピッタリでした。幼さを残しながらも、これから社会人として頑張っていくというのも伝わってきたし、大人でも子どもでもない端境期のお芝居をちゃんとしていたと思います」

-この映画は、「白血病と骨髄移植」、「ドナー登録」について理解を深めて欲しいという思いを込めて作られたということですが-

「そうですね。私もこの映画で骨髄バンクのことを知って登録しようとしたのですが、年齢制限があることを知らなかったんですよね。年齢ではじき飛ばされてしまいました。でも、この映画で関心を持つ人が少しでも増えて欲しいと思っています」

-今後はどのように?-

「私は、とにかくいただいた仕事一つひとつに向き合って取り組んでいこうと思っています。

去年(2022年)は生涯来ると思わなかったミュージカル『東京ラブストーリー』もやらせていただきましたし、バラエティ番組やクイズ番組にも出させていただいて、今まで敬遠していたものもどんどん挑戦してみたんですね。それは変わらず今年(2023年)もそうでありたいなと思います」

新たなことに挑戦し続ける姿がカッコいい。スリムなプロポーションの秘訣は日課のウォ―キング。1日の距離を決めて行っているという。ハーレーを乗り回す姿もまた見てみたい。(津島令子)

ヘアメイク:佐々木大輔(TRINE)
スタイリスト:村井緑
衣装・ネックレス:MOGA(モガ)
アクセサリー(ピアス、リングブレスレット):ABISTE(アビステ)