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『星降る夜に』第4話、吉高由里子の“くしゃっと笑顔”に幸せ願う。「ゆっくりゆっくり」何気ない手話が届けるメッセージ

<ドラマ『星降る夜に』第4話レビュー 文:横川良明>

人は、うわべだけではわからない。

どんなに幸せそうに見える人も、言葉にしないだけで、いろんなものを抱えている。

『星降る夜に』第4話は、雪宮鈴(吉高由里子)と柊一星(北村匠海)以外の人たちにスポットライトが当たった回だった。

◆親になることが怖い人がいてもいい

今でこそ多様な選択が随分と認められるようになった気がするけど、それでもいまだに人として生まれたのなら「親となる」ことは“当たり前”だと思っている人は多い。

結婚したら「お子さんは?」という質問はセットだし、「早くご両親にお孫さんの顔を見せてあげなきゃね」と無邪気にせっつく人も少なくない。

でも、全員が全員、親になりたいわけではない。生命の誕生は尊いと思うけれど、自分がその責任を負う覚悟はない。親になる自信がない。その気持ちも自然なものとして受け入れられてもいいだろう。

今回は、前職でのハードワークとストレスで心を壊してしまった佐藤春(千葉雄大)を通して、親になることへの恐れが描かれた。

まだ自分の心を立て直すのに精一杯で、とても親になんてなれないと涙をこぼす春に胸が潰れる思いがしたし、個人的に良かったのは、そこに看護師の蜂須賀志信(長井短)の意見が加えられていたこと。

子どもができたら今のような働き方ができなくなるし、好きに飲みにも行けない。親である人生を選んだ時点で、親ではない人生を捨てなければいけなくなる。

春のように強いトラウマを抱えているわけではなさそうに見える蜂須賀がそう言うことで、何か特別な事情がなくても、親になりたくないという気持ちを持っていていいんだと思わせてくれた。

もちろんそれは佐々木深夜(ディーン・フジオカ)の言うように「贅沢な悩み」なのかもしれないし、深夜には深夜でそう口にせざるを得ない事情があるのだけど、いずれにせよどんな考えも等しく尊重されるべきであり、個人の幸せは他人によって決められるものではないという、このドラマの根底となる考えが一貫されていて、バランスがとれていた。

春の抱える問題はこの回だけでは解決されていない。妻のうた(若月佑美)は春の気持ちを一番に考えてくれているけど、妊娠や中絶に直面したとき、身体に影響があるのは女性の方だ。

自分の苦悩や葛藤が、いちばん大切にしたい人の身体を不安にさらしている現実に、春はこれから向き合っていかなければいけないだろう。そのときに春はどう決断するのか。

親になる選択と、親にならない選択。心の優しい春だからこそどちらを選ぶか、とても気になる。

◆今の世の中に必要なのは「ゆっくりゆっくり」という心

そんな春の傷とリンクしていたのが、一星の「ゆっくりゆっくり」という手話だ。

一星と会話がしたくて、鈴は一生懸命手話を覚えようとする。だけど、そんな鈴を見て、一星は「休め」「頑張りすぎ」と言う。

自分が好きでやっていることでも、度が過ぎると負担になる。無理をせず、できる範囲から少しずつでいい。一星の優しい視点は、自分を追い込みすぎて心を壊した春のような人たちへのエールにも聞こえた。

同僚の方がいい成績をあげていたり、ミスが続いて上司に怒鳴られたり、仕事一色の毎日が続いたり。楽しみにしていたドラマも、疲れすぎていて、内容が全然頭に入ってこない、なんて人も世の中にはたくさんいると思う。

そんな乾いてひび割れた心に、一星の「ゆっくりゆっくり」が優しい雨のように沁み込む。

急がなくても大丈夫。人の幸せは先着順で決まるわけじゃない。つい足早になってしまう日常で、そう思えるだけで僕たちの人生は、きっともっと楽になる。

一星も春にそう言ってあげられたらいいな、と思う。みんながみんなすぐに親になれるわけじゃない。怖い気持ちだってあっていい。親になったとしても、ならなかったとしても、「ゆっくりゆっくり」やっていこう。

一星の「ゆっくりゆっくり」は、あくまで鈴へのいたわりだったけど、どこかこの作品全体が世の中に届けたいメッセージのように感じられた。

それにしても、あの「ゆっくりゆっくり」のシーンで、一星が窓ガラスに書いた「ステイ」はなんだかとてもドキドキした。

最初に「ス」だけ書いたとき、てっきり「スズ」と書くのかと思った。そこから、二本線が加わって、なるほど「スキ」なんだなと思った。

そこからのまさかの「ステイ」。前回の「ステイ」がもう一度ここに結びついてくるとは。

しかも、そこには前回の愛犬に向けての「ステイ」のような可愛らしさではなく、相手を気遣う優しさがこもっていて、無理をしない一星の生き方に、あの街の海のように心が穏やかになる。

今回は春の他にも、北斗千明(水野美紀)と娘・桜(吉柳咲良)の間に血のつながりがないことも明かされ、改めて世の中にはいろんな形の幸せがあるのだと教えられた。

その事実を知ってから見ると、「私の娘、可愛い。最高に可愛い」と自慢していた千明にまた違う想いがこみ上げる。

また、落ち込む一星を元気づけようとする祖母・カネ(五十嵐由美子)のお節介もいい。調べたら、演じる五十嵐由美子は日本ろう者劇団に在籍するろう者の俳優らしい。

当事者をキャスティングする番組の姿勢もいいなと思うし、何より五十嵐由美子が本当にチャーミングで、彼女が出てくるとほっこりする。俳優は健常者だけが“当たり前”ではなく、多様な個性を持った俳優がドラマに出てくる。そんな世界が、とても好きだ。

『星降る夜に』が目指すのは、さまざまな“当たり前”からの脱却なのかもしれない。

◆最後はやはりこの2人を語らせてください

そんなテーマに胸が熱くなりつつ、今週も吉高由里子と北村匠海は可愛かった。

鈴の突然の来訪に、慌ててボディシートで汗を拭き取る一星の思春期男子感に頬が緩みっぱなしだったし。洗面室から出てくるなり鈴と鉢合わせして何事もないように小さく手を振るところも、深夜の名前が出てきてヤキモキしているところも、まるで子犬みたいで、北村匠海の頭をわしゃわしゃする会とかあったら3日前から並びます。

と思ったら、ラストのキスは横顔の角度も、鈴の頬に添えた手も、まっすぐな色気と包容力に溢れていて、チワワがいきなりシベリアンハスキーに成長してた。犬種を超えたカッコ良さだった。

そしてデートの待ち合わせにやってくる鈴の可愛さと言ったら…。咄嗟に一星はカメラを向けたけど、あんなの可愛すぎて僕がレンズだったら直視できんわ。照れ臭すぎて勝手に蓋を閉じるわ。

吉高由里子はくしゃっとした笑顔が本当に素敵。好きという気持ちがあの笑顔から溢れていて、吉高由里子が笑うだけで、演じる役に幸せになってほしいと願いたくなる。

けれど、いよいよ鈴に悪意を向ける人間が近づいているみたいで…。次週は、相当波乱の予感。なんとこのドラマ、全9話だそうで、早くも折り返し地点に入っています。

どう考えても短すぎるので、最終話の翌週から『続・星降る夜に』の放送をお願いします! 『帰ってきた星降る夜に』でもいいよ!!(文:横川良明)

※番組情報:『星降る夜に
【毎週火曜】よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局

※『星降る夜に』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

※動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」では、地上波放送終了後にドラマ本編を配信!