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『警視庁アウトサイダー』次々とつながっていく事件 主題歌が流れるラスト数分に起こる出来事が要注意フラグか

<『警視庁アウトサイダー』第5話レビュー 文:赤山恭子>

西島秀俊、濱田岳、上白石萌歌がクセの強いキャラクターに扮する刑事ドラマ警視庁アウトサイダー

前回の第4話では、架川英児(西島秀俊)が信頼していた元上司・藤原要(柳葉敏郎)に陥れられ、さらにはその藤原が何者かに射殺されるという怒涛の結末を迎え、物語は一気に緊張感をはらんだ展開に。

2月2日(木)に放送された第5話では、藤原を殺した犯人の行方を追う一方、架川と桜町中央署刑事課のエース・蓮見光輔(濱田岳)&新米刑事・水木直央(上白石萌歌)の3人が新たな事件にも乗り出し、通常通り(?)ボケとツッコミの応酬も見られた。

物語を進める上での重要かつ真面目なシーンは抑えつつ、3人がそろうパートでは、小ネタも満載で彼らのコメディセンスが冴えわたる。そのやり取りはもはや安定の域に達しており、シリアスとポップさが入り混じる絶妙のバランスを保った回に仕上がっていた。

◆第5話ラストであっと驚く出来事

第5話の軸は大きくわけてふたつ。ひとつは藤原を殺した犯人の正体を探るというところ。架川は、当該人物こそが蓮見の父のホステス殺人事件の冤罪に絡んでいるのではとにらむ。

推理を進めるため、架川は蓮見から10年前の事件の全貌を教えてもらうことに。蓮見の父は、当時の彼の同僚にあたる折原大吾にでたらめの証言をされたことから、犯人扱いされることになったという。

藤原は別件で、この折原という男にたどり着いていたわけで、彼こそが“踏んではならない尻尾”だった。バラバラに見える事件は実はつながっていたと、ここではっきりと気づかされる。

このようにさまざまな事件が入り混じったり、重要な登場人物が多かったり(大半はおじさん)、さらには明かされていない謎も多く、整理していくのが大変&だからこそ見がいのある本ドラマ。

第5話終盤では、10年前の事件当時、信濃一家組長の愛人だった小浜三代子(石野真子)が登場し、組長の当麻秀和(鈴木一真)まで姿を見せた。架川らを「片づけちゃえ」という不穏な指示を出していた当麻は、裏社会のにおいを存分にまとい、まさに真打ち的存在。

…ではあるが、まだ第5話なのでさらに当麻を操っている誰か、もしくは何かの組織が影にいるのかも?と推察してしまう。

第4話では最後の最後で藤原が射殺されたが、第5話でもラストに三代子や当麻が出現し、さらには三代子のバーが放火されるというあっと驚く出来事まで起こった。

本来、刑事ドラマは終盤で主題歌が流れると、「今週はこれで終わりか~」と事件解決でホッと一息ムードが漂うものだが、『警視庁アウトサイダー』においてはまったく違う。山下達郎の主題歌『LOVE’S ON FIRE』が流れたら、そこからが要注意フラグ、事件が動き出すきっかけなのかもしれないのだから。

◆我が道をいく“アウトサイダー”な水木直央

そして、第5話のもうひとつの軸は、管内の雑木林から死後5年ほど経過した暴力団“仁英組”の構成員・楠本貴喜の白骨死体が見つかるというもの。

楠本を殺害した犯人を、架川・蓮見・水木が探っていく。楠本は生前、暴力団から足を洗いたいと考えており、清掃会社を営む元暴力団員・小松崎実(デビット伊東)に相談を持ちかけていた。そんな楠本がどうして無残な姿になってしまったのか、トリオが鮮やかに暴く。

事件解明を進めるなかで、架川は自分のペン型ボイスレコーダーが水木のペンと取り違えてしまっていたと気づいた。レコーダーには蓮見が偽りの身であることに加え、架川との取引についてまで録音されている。

焦ったふたりは、水木を行きつけの居酒屋・竜宮城(たつみやぎ)に呼び出す。水木はすべてを知っていたわけだが、彼らを警察に引っ張ろうとしなかった。不審に思った架川と蓮見は理由を尋ねると、水木に「エモいから」と返される。

水木いわく、冷たくてナルシストな蓮見がなりすましまでして父の冤罪を晴らそうとしていることがエモく、そして架川の共犯関係がさらにエモ散らかしている、と大げさなまでに情感たっぷりに説明する。

その水木の様子は想像の斜め上どころか、突拍子もなさすぎた。「エモい…!?」と鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする架川&蓮見。

しかし、それは視聴者とて同じだろう。少なくとも水木は刑事なわけで、さすがに「エモいから」だけで済ます人間ではないはず。何か別のことをたくらみ、わざと流しているのだろう。

…なんて思いたくなるところだが、きっと、そうではない。本当にエモいから、水木は熱弁したのだろう。なぜかと言うと、この第5話だけでもわかりすぎるほど、水木という人間は非常に個性的で、我が道をいく“アウトサイダー”な性格の刑事だから。

たとえば、水木は市民や地元警察に絡む際に自分の名声を確かめ、「こんなところまで(自分の名が)轟いちゃっていたかあ~!」と照れる仕草をみせたり、仁英組事件捜査の会議中には、「謎はすべて解けた!」「犯人はこの中にいる!」と金田一一の往年のパロディをやり、しまいには課長が犯人ではと、とんでもない勘違い推理をしたりする。もはやキャラクターが崩壊しかけるほどの、おもしろキャラを確立したのだ。(そんな上白石の演技が絶品なのだが!)

自由奔放で独自路線な思考の水木だからこそ、架川と蓮見の共犯関係や本来、一大事となるなりすましを「エモい」の一言で自己完結するのも、さもありなん。きっと水木の脳内では、演劇部出身ならではの感受性の豊かさで、架川や蓮見のそれぞれのストーリーを作り上げ納得しているのだろうと、思わずこちらまで納得してしまう。

この先、当然、架川と蓮見はホステス事件の解明を進めていくわけだが、水木は「ノータッチ」でいくと口では言っている。しかし、きっと彼女は巻き込まれるなり協力していくことになるのだろう。

トリオとして事件をどう華々しく収めていくのか、その活躍もだがいきさつに楽しみが募る。

蓮見の父がおこした事件の真相を究明するミッションのもと、小ネタも満載でエンターテインメントとして魅せてくれている本ドラマ。

西島&濱田という大先輩たちの胸を借りて、堂々とコメディに振っている上白石のダイナミックな演技にもやみつきになるし、3人の台詞の応酬も絶妙で阿吽の呼吸のトリオ演技を楽しめる。

第5話では小山内雄一(斎藤工)が新党を立ち上げるシーンもあり、第6話以降のストーリーラインに多いに絡んできそうだ。トリオがカルテットになるのか、それとも…? 期待したい。

(文:赤山恭子)

※番組情報:『警視庁アウトサイダー
【毎週木曜】午後9:00~午後9:54、テレビ朝日系24局

※『警視庁アウトサイダー』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

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