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柳ゆり菜、オーディションで決まった井筒和幸監督作。撮影後、愛を感じた監督からの言葉「簡単にパンツを脱ぐな」

“グラビアクイーン”として人気を集め、念願だった女優として数多くのテレビ、映画、舞台に出演している柳ゆり菜さん。

2018年に公開された映画『純平、考え直せ』(森岡利行監督)では、濃厚なラブシーン、殴る蹴るの暴力を受けるシーン、髪の毛を無理やり切られるシーンなどに体当たりで挑み、女優業への本気度を知らしめた。

2020年、映画『無頼』(井筒和幸監督)で「おおさかシネマフェスティバル」助演女優賞を受賞。2021年、約5年ぶりとなる写真集『女っぷり』(扶桑社BOOKS)を出版。2022年12月9日(金)には、映画『散歩時間~その日を待ちながら~』(戸田彬弘監督)が公開される。

 

◆オーディションでヒロイン役に

19歳でデビューして以降、多忙な日々を送ってきた柳さんだが、先のことはまったくわからない状況で日々の仕事に取り組んでいたという。

「忙しくなることはこの業界では幸せなことだと、きっとみんな思うけど、当時は本当に1カ月先がどうなるかわからないような気持ちでやっていましたから、いつ辞めるか自分でもわかっていないみたいな感じでした。

でも、辞められない、まだやりたいという気持ちもあるし…先のことを考えている時間もないというときもありました。デビューした最初のほうは、付いていくのに必死みたいな感じで。

それで、だんだん自分の思考ができてきて、自我が芽生えてきて、映画の勉強をしはじめたんです。本を読むようになって、映画の世界に覚悟を持ってチャレンジして。

それから何年か経ち、ドラマも映画もいい監督と仕事をさせていただく機会も増えていくなかで、今はすごく心地よくお仕事ができています。お仕事をする上でちゃんと自分のインプットの時間が取れるので、すごく楽になりました」

2020年、柳さんは井筒和幸監督の映画『無頼』に出演。この映画は、ヤクザの視点から激動の昭和史を描いた群像劇。

柳さんは、社会からはじき出された者たちを束ねて命がけで裏社会を生き抜いていく主人公(松本利夫)の組長の妻・佳奈役を演じた。柳さんをはじめ、出演者の多くはオーディションで決定したという。

「撮影当時、私は24歳だったんですけど、40代50代の俳優さんたちに『姐(ねえ)さん、姐さん』って言われて(笑)。役になっちゃっていたから、本当に生意気な態度をとっていたと思うんですよ」

-組長の妻・姐さんですからね-

「そうですね。だからいまだに、そのメンバーと会うと『よーっ!』みたいな感じで(笑)。でも、井筒さんや井筒さんのスタッフの皆さんとの絆もすごいし、キャストもみんな助け合っていたので、本当にいい出会いをしたなあって思っています」

-最初に台本を読んだときはいかがでした?-

「難しかったです。これは理解するのに相当時間がかかるなあって思いました。時代背景もわかっていないといけないので、その時代に起こった出来事から調べはじめました」

-井筒監督は厳しかったですか-

「厳しいけど、優しいんですよね。関西の人だから、言葉がちょっときつく感じるけど、愛のある言葉なんですよ。

私も関西人だからわかるんですけど、結構きつく言うときというのは、愛がないと言えないんです。たとえば、関西人は『アホか』ってよく言うんですけど、『アホか』というのは愛がある人にしか言えないんですよね。

興味がなかったり、あまり関係性のない人には言えない。井筒さんの演出には愛があって、信頼できるんですよね。それをみんな感じていたからすごく感謝しているし、いまだにみんなで集まったりして仲がいいですよ」

-出演者もかなり大人数でした-

「そうなんですよ。誰と誰がどうつながっているのかという関係性をつかむのも大変でした。そういうことも含めて、何カ月もかけて台本を読み解いていく作業をしていきました」

 

◆約3カ月間のリハーサルで“姐さん”に

『無頼』では、撮影に入る前のリハーサル期間が約3カ月間あり、キャストみんなで何度も演技をしてみて一緒に役をつかんでいったという。

「あのリハーサル期間があったから、撮影がスケジュール通りに進んでクランクアップを迎えられたんだと思います」

-リハーサル期間である程度固まっていたのですか-

「いいえ、リハーサルに井筒さんはいないので、固めてしまってはいけないんです。お芝居のプランを何パターンも考えるんです。何通りも何通りもの感情、引き出しをとにかく増やしていく。そのために2、3カ月かかるんです。私も『どのパターンでいこう?』ってずっと悩んでいました。

だから、本番に行く前のテストでカメラがセッティングし終わった後に、カメラの前に行って、井筒さんが見ているであろうと仮定して、自分がはじめたいポーズで待っているんです。

それで井筒さんのイメージと合致していると、助監督さんのインカムを通して『ゆり菜、その体勢ええな。そこからはじめようか』というのが聞こえてくる。違っていたら、別のことを指示されるんですけど、そうやってアピールしていました。

井筒さんに『私はこうしたいんですけど』って言えるほど、度胸も経験もまだなかったので、自分がいいと思ったお芝居を色々試して、それを見てもらうようにして。そして、絶対それを見ているところが井筒さんなんですよね。その瞬間に『井筒さんにすべてを預けよう』って思いました」

-柳さんが考えていた演技プランと監督のイメージは合致していました?-

「それがたまたま合致していたから本当に良かったんですよ(笑)。外していたら本当に大変だったと思います」

-だんだん貫禄が出て“極道の妻”に変わっていく様が良く出ていましたね-

「ありがとうございます。周りの役者さんたちに本当に助けていただきました。私が帰るときにはみんなが『姐さん、お疲れさまです』ってやるんです。それで私も『お疲れー』って言って帰る。

年齢的には私が一番後輩だったと思うんですけど、そういうこともあって、私は姐さんになっていけたという感じです。だから、私は本当にあそこに出ている人たちみんな大好きですし、みんなのおかげだと思っています」

-松本さん演じる主人公は、ちょこちょこ浮気はするし…大変な役でしたね-

「そうなんですよ。何度浮気されても受け入れるというか、それでも『帰ってこい』ということができる女というのを理解するのが難しかったです。『きっぷがいい女』と監督はよく言っていましたね。

私が演じた佳奈は、姐さんとしていろんなものを抱えていて、やっぱり組員たちの存在は大きいですよね。浮気をされたり、つらいことがあっても逃げなかったのは、家族のような組員の存在が大きかったと思います」

-『無頼』はフィルム撮影でしたね-

「はい。全編フィルム撮影という経験はとてもぜいたくで、特別な経験になりました。フィルム撮影は本当に時間がかかるんですけど、フィルムが回りはじめる音がして、『アクション』って言われる瞬間がたまらなかったです。

ただ、フィルムだとその場で映像を見返すことができないので、どうなっているかチェックすることができないのが不安でしたけど」

-撮影終了後、井筒監督は何かおっしゃっていました?-

「いっぱいいろんな言葉をかけていただきました。本当にうれしいことばかりで。でも、私が『また井筒さんの現場を経験したい』って言ったら、『お前はもう俺の作品なんかに出んでいい。簡単にパンツを脱ぐな』って言われて。

井筒さん独特の表現なんですけど、それは濡れ場をするなとかそういう意味じゃなくて、『もっともったいぶれ』みたいなことだと思うんですよね。みんなに『めちゃくちゃ愛されているなあ』って言われました(笑)。愛を感じますよね」

-最近はお会いされました?-

「それが会えてないんですよ。去年『おおさかシネマフェスティバル』で助演女優賞をいただいたとき、授賞式は中止になってしまって、代わりに身内だけで『おめでとう会』を開いていただいたんですが、今年は会えてないです。コロナが始まってから簡単に会ったりできなくなりましたけど、また会いたいです。企画を立ててもらわないと(笑)」

『純平、考え直せ』と『無頼』で女優として広く認知されるようになった柳さんは、映画『ゾッキ』(監督:竹中直人・山田孝之・齊藤工)、映画『プリテンダーズ』(熊坂出監督)、『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京系)などに出演することに。

次回後編では、コロナ禍の日々、2022年12月9日(金)に公開される映画『散歩時間~その日を待ちながら~』の撮影エピソードも紹介。(津島令子)

ヘアメイク:菅野綾香

©2022「散歩時間~その日を待ちながら~」製作委員会

※映画『散歩時間~その日を待ちながら~』
2022年12月9日(金)新宿シネマカリテほかにて全国公開
配給・宣伝:ラビットハウス
原案・監督・編集:戸田彬弘
出演:前原滉 大友花恋 柳ゆり菜 中島歩 篠田諒 めがね 山時聡真 佐々木悠華 アベラヒデノブ 高橋努

新型コロナウイルスの感染拡大で不安が漂う2020年を舞台に世代も職業も異なる人々が織りなす人間模様を描いた群像劇。しし座流星群がピークを迎えた2020年11月17日。新型コロナの影響で結婚式を挙げることができなかった亮介(前原滉)とゆかり(大友花恋)は、都会から離れた友人(柳ゆり菜)の家でお祝いのパーティを開いてもらうことに。しかし、あることがきっかけで日頃から本音を話そうとしない亮介に不満を抱えていたゆかりの怒りが爆発し、不穏な空気に…。

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