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仲野太賀主演で魅せる『ジャパニーズスタイル』 従来の“シットコム”のイメージを一新する“小粋さ”も

<土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』第1話レビュー 文:横川良明>

土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』が始まった。

本作の肝は《ほぼ本番一発勝負》の本格シットコムであること。

リハーサルは1日のみ。翌日に本番を行うという過酷なスケジュールに加え、本番では実際に観客を入れ、やり直しのきかない緊張状態の中、腕に覚えのある俳優たちがノンストップで暴れまくる。

日本のシットコム作品といえば、三谷幸喜氏の『HR』が有名だ。あれから20年。その間、NHKでは『ママさんバレーでつかまえて』が放送され、三谷氏自身も配信に場を移し、『誰かが、見ている』でも再びシットコムに挑戦。

今年に入ってからは秋元康氏が『よだれもん家族』でシットコムに挑むなど前例はあるものの、日本のテレビカルチャーに浸透しているとはまだまだ言いがたい。

そんな中で放たれる新たなシットコムドラマが『ジャパニーズスタイル』だ。主演は、若手実力派の最右翼・仲野太賀。

脚本は『俺の話は長い』『コントが始まる』の金子茂樹氏。はたして『ジャパニーズスタイル』は日本のシットコムの代名詞になり得るか。注目の第1ラウンドのゴングが鳴った。

◆10年ぶりの帰省を阻むのは、曲者だらけの従業員たち

舞台は、ひなびた温泉旅館・虹の屋。

跡を継ぐことを嫌がり家を飛び出した息子・柿丘哲郎(仲野太賀)が、父が病気で倒れたと聞きつけ、10年ぶりに帰ってくるところから幕を開ける。

しかし、久々の我が家はすっかり様変わりし、見知らぬ従業員たちが哲郎を出迎える。さらに哲郎自身も人に言えない事情を抱えているようで……というのが第1話のストーリー。

まず目を引くのが、個性的なキャラクター陣だ。

気ままで飄々としたフラメンコダンサー、寺門・ルーシー・数子(市川実日子)や、温泉のお湯を産湯に使おうとする古株従業員・梅越一二四(柄本明)など、クセのある登場人物が哲郎の前に立ちはだかる。

ルーシーとは、シットコムの元祖『アイ・ラブ・ルーシー』からの引用だろう。市川実日子らしい、肩に力の入っていないストロークが会話のラリーに緩急を生む。

クスッと笑わせてくれたのが、スネ夫を実写でやったらこんな前髪になるのだろうかという奇妙なヘアスタイルの支配人・影島駿作(要潤)だ。

「一切ございません」や「急に田舎が恋しくなったってところですか」などヒネリを効かせた台詞回しが面白く、哲郎の素性が明るみに出るや手帳片手に刑事の真似事をするなどいいアクセントになっている。たぶんプロフィール欄の尊敬する人は船越英一郎か内藤剛志だと思う。

個人的には、UNOをないがしろにされると激昂する料理長・浮野奏太(KAƵMA)もなんだか気になる。

イカついビジュアルとUNOのギャップにニンマリさせられるし、ものすごくUNOが好きなのに全然上がれないところもコメディのキャラクター造形としてはおいしい。UNOをやるときは、相手の手札で今何色がないのかを常に把握しておくことが大事なんだよって浮野には教えてあげたい。

また、小ネタ係となっている浅月凛吾郎(石崎ひゅーい)も見逃せないキャラクターの1人。

「防虫剤の匂い好き」「こいつ嘘ついてるよ」など合間合間に差し込まれる一言で観客を温めつつ、「ウサギ小屋」の台詞からつなげてウサギ飛びで退場していくところなんかは、舞台っぽい遊びだ。

メインとなっている人たちの後ろでしょうもない小ネタに興じている役者に忍び笑いを浮かべるのも1場モノの群像劇の醍醐味。こうした小ネタはどんどん入れていってほしい。

また、キャラクターのインパクトで見せつつ、シットコムらしいシチュエーションの面白さもしっかりと仕掛けられていた。

社長の言いつけを守り、哲郎を頑なに上がらせようとしない仲居頭の浅月桃代(檀れい)。上がり框に足を乗っける哲郎と、それをガードする桃代の攻防は実にコメディらしいシチュエーションだ。

それがいつの間にか他の従業員たちも連なって、意地でも哲郎を上がらすまいとフリーキックの壁みたいになっているのも面白かった。

シチュエーションコメディは、単に1場ものという意味ではなく、主人公がどうにもならない状況に陥りてんてこまいとなっているそのシチュエーションで笑いを生むところが魅力。つまり状況設定力が物を言う。

次回以降もどういうシチュエーションを繰り出してくるかは楽しみにしたい。

アメリカに比べシットコムがなかなか根づかない日本で、果敢に挑むそのチャレンジスピリットがまず頼もしい。

スタイリングに伊賀大介氏を迎え、主題歌をVaundyが担当するなど、従来のシットコムのイメージを一新するような小粋さも、まだ見たことのないものを生み出したいというつくり手たちの野心を感じる。

これがシットコムの新しい「ジャパニーズスタイル」となるのか。最終回を迎えたとき、その答えが下される。(文:横川良明)

※番組情報:土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』第2話
2022年10月29日(土)よる11:30~深夜0:00、テレビ朝日系24局

※『ジャパニーズスタイル』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

※動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」では、地上波放送終了後にドラマ本編を配信!過去回も配信中。

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