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玉山鉄二、芝居では先入観やセオリーからはみ出ることも意識。「鼻水が出て何が悪いんだろう?」

2005年、映画『逆境ナイン』(羽住英一郎監督)で映画初主演を果たし、映画『手紙』(生野慈朗監督)、連続テレビ小説『マッサン』(NHK)、『トップリーグ』(WOWOW)、『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』(Netflix)など多くの映画、ドラマ、CMに出演してきた玉山鉄二さん。

映画『ハゲタカ』(大友啓史監督)で第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。シリアスな社会派ドラマからコメディーまであらゆるキャラクターを演じ分ける演技派として定評がある。

2022年4月8日(金)には主演映画『今はちょっと、ついてないだけ』(柴山健次監督)が公開される玉山鉄二さんにインタビュー。

 

◆ちやほやされたくて芸能界を目指す?

京都で生まれ育った玉山さんは、3人のお姉さんがいる末っ子で長男。小さい頃は恥ずかしがり屋で引っ込み思案だったが、中学時代は陸上とバスケットボールをやっていたという。

-芸能界に興味をもつようになったきっかけは?-

「京都の田舎なので、ちやほやされたいとか、みんなに知ってもらいたいとか、そんなくだらないきっかけだったと思います」

-ご家族にはお話しされていたのですか-

「いいえ全然。最初はモデルをやりたくて、向こうで小さなヘアーショーとか、そういうものは経験していたんですけど、親にはこういう夢があるとか、卒業したら何がやりたいとかいう話はしていなかったです。でも、親はお前の人生だからやりたいようにやれみたいな感じでした」

-高校卒業して東京に出てこられたときにはどうでした?-

「多分当時は根拠のない自信というか、行けばどうにかなるんじゃないかなぐらいの気持ちでした。そのときにはもう事務所には入っていたんですけど、たくさんお仕事があったわけでもないので、時間を持て余してアルバイトをたくさんやったりしてフラフラした生活を送っていました。お金もなかったですし」

-どんなアルバイトをされていたのですか-

「ガソリンスタンドとか派遣会社に登録して、電話がかかってきたらその都度いろんな仕事をするという感じで、携帯の販売店に行ってPRとか、CS放送のプレゼンというかアピールをして契約を取ったりしていました」

-上京されてわりとすぐ19歳のときにドラマ『ナオミ』(フジテレビ系)で俳優デビューされたのですね-

「はい。でも、そのときもまだ全然お金もなかったし、順風満帆という感じではなかったです」

-映画『逆境ナイン』主演のお話が来たときにはいかがでした?-

「デビューして3、4年目くらいからお仕事をたくさんいただけるようになったんですけど、うれしかったです。新人の自分に主演でと声をかけてくださった以上、やっぱりその期待に応えたいという思いがありました」

-主人公は、一本気で名前も不屈闘志(ふくつとうし)、結構コメディー的な要素もありましたね-

「はい。基本的にずっと三重県で撮影だったんですけど、行きっぱなしで、合宿生活みたいな感じでした。とにかく毎日がむしゃらに必死でやっていました」

-合宿生活だと余計連帯意識も芽生えたのでは?-

「もちろん同年代の役者さんがたくさん出てくださっていたので連帯意識もあるし、ライバル心もあるし、自分は主演だという優越感みたいなものもありました。若いときのそういうハングリーな気持ちは、いい意味でも悪い意味でも今よりはすごくあったと思います。

自分にすごく期待していた部分もありました。でも、テクニカル的な部分、自分の芝居に対してという部分では全然自信がなかったけど、自信あるふうに見せていたのでしょうね、当時は。だけど、本当の奥底にいる自分はすごく臆病で、何か押しつぶされそうというか、そういう思いを抱えながら日々を送っていた感じがします」

-主演というプレッシャーもあったでしょうね-

「そうですね。そこが多分若いときの自分と今の自分の大きな差なのかなとも最近は思います」

-完成した映画をご覧になったときにはいかがでした?-

「もちろんうれしかったです。でも、自分に対しては、もっとできたんじゃないのかなという思いもありました。それまで自分がやってきたことがこれで救われたみたいなことも別になかったです。自分はもっと頑張らなきゃとか、そういう思いのほうが強かったのかもしれないですね、当時は」

-撮影のときには台風にも遭遇して大変だったとか-

「そうですね。途中で現場に避難勧告が出るくらい結構大きな台風が来て、セットが1回壊れたりとかいうこともありました」

-今はもう色々な作品に主演されていますが、初めてのときは感慨深いものがあったのでは?-

「あったのかな? どうなんだろう。僕は自分がすごいとか、自分はダメだとか、そういうふうに評価しないようにしている癖がついちゃっているから、こうして昔の映画のことをインタビューしていただいて思い返すと、別人の自分を客観で見ている感じがします。そう考えたら何かすごく変わったなあって思います」

※玉山鉄二プロフィル
1980年4月7日生まれ。京都府出身。1999年、ドラマ『ナオミ』で俳優デビュー。映画『ハゲタカ』、映画『亜人』(本広克行監督)、ドラマ『BOSS』シリーズ(フジテレビ系)、連続ドラマW『誤断』(WOWOW)、『バカボンのパパよりバカなパパ』(NHK)、『全裸監督』(Netflix)、『全裸監督2』(Netflix)など映画、ドラマ、CMに多数出演。2022年4月8日(金)に主演映画『今はちょっと、ついてないだけ』が公開。

 

◆映画『NANA』のタクミはやりたい役だった

初主演映画『逆境ナイン』が公開された2005年には映画『NANA』(大谷健太郎監督)も公開。玉山さんは、バンド「トラネス」のリーダーで長い髪がトレードマークのベース担当及びプロデューサーでもあるタクミ役で出演。2006年には『NANA2』(大谷健太郎監督)も製作され、漫画から抜け出してきたような王子様キャラが話題に。

「『NANA』のタクミは『この役がやりたい』と言ってそれが叶った役でもあったのでうれしかったです。原作が若い子にものすごく人気があったし、カリスマ性があって無機質なちょっとつかみどころがないようなキャラクターだったので、そこのキャラクター掴みにすごく気を遣った思い出があります」

-ベーシストの役でしたが、ベース弾いたことは?-

「なかったです。僕は楽器をほとんどやったことがなかったので、結構練習しました」

-『NANA2』ではタクミがハチ(市川由衣)と恋愛関係になって主軸になっていきますが、台本を受け取ったときにはいかがでした?-

「1と2でキャストも変わったりしましたから、『あれ?みんないないんだ』と思ったことはすごく覚えています」

-カリスマ性があって女の人にモテるクールな印象のキャラですが、ハチの妊娠を知って、自分の子どもかどうかわからないのに受け止めるという器の大きな男でカッコ良かったですね-

「漫画が大人気で熱狂的なファンの方々がいらっしゃったので、極力その再現性みたいなものをすごく重要視していたと思います。もちろん台本片手にいろいろトライしてみたりというのはあったんですけど、漫画の同じシーンのところを現場で見て確認する作業みたいなのは結構ありましたね」

-原作漫画のファンの方からはどのように?-

「最初は『よく引き受けたね』って、結構何人かに言われました(笑)。僕はもともと原作を読んでいなかったので、『何かえらいものを引き受けちゃったな』みたいな感じでした。髪の毛がすごく長くてエクステで対処したりしていたんですが、いろいろ評判はいただきました。自分では、ちょっとこっぱずかしい部分があったりしましたけど(笑)」

-とても良く似合っていて絵になっていました-

「ほんとですか(笑)。ありがとうございます」

 

◆15kg減量して挑んだ映画『手紙』で強盗殺人犯役に

2006年、玉山さんは映画『手紙』に出演。この映画は、弟・直貴(山田孝之)の学費を手に入れるために強盗殺人の罪を犯した兄・剛志(玉山鉄二)と、その兄の罪に苦しめられながらも懸命に生きる弟の姿を描いたもの。

-『手紙』のお話が来たときにはいかがでした?-

「やっぱり東野圭吾さんの作品に出られるというのが1番大きかったです。題材もすごくセンシティブでメッセージ性が強すぎるぐらい強い作品だったので、そこを変にねじ曲げないようにと思いました。

崩壊してしまったお兄ちゃんだけど、でもどこかでこのお兄ちゃんが救われて欲しいと思えるようなキャラクターに絶対してあげたいなって思いながら、当時の僕は役作りをしていたと思います」

-いかなる理由があってもやってはいけないことですが、強盗に入ったもののやめようとしたのに騒がれて結果的に殺害してしまいます-

「はい。でも、そこで何かしらこのお兄ちゃんがかわいそうだというふうに、視聴者の方の心にフックをかけないとあの話は成立しないので、何か憎めないというか、救われて欲しいというフックはどうにかかけたいと思ってやっていました」

-冒頭の強盗殺人のシーンは、ご自身が考えていた演技プラン通りだったのですか?-

「そうですね。あれはセットだったんですけど、何かある種偶然が重なって悪い方向に転んでしまった感というのは、その表情であったり、動きであったり、その被疑者としての過失の分量みたいなものをどのくらいのバランスでやればちょうどいいのかというような話は監督と結構していました」

-根っからの悪人ではないのに、初めて盗みに入った家で取り返しのつかないことにというのがすごく伝わって来ました-

「ありがとうございます。良かったです」

-撮影している期間は役が抜けなかったのでは?-

「そうですね。当時はとにかく痩せなきゃいけないと思っていて。その痩せ方も運動して痩せるというよりも、本当に食べてなくて魂が薄くなっているような痩せ方をしなきゃいけないと思っていました。

とにかく食わなかったし、何か友達の家に遊びに行っても、食わないと寝られないけど、そのうち友達が食っているのを見ても、だんだん欲しくもなくなっちゃうんですよね。あれは若いからそこまでできたんだと思います。15kg以上痩せましたからね」

-あの撮影期間はほかのお仕事もされていたのですか-

「いいえ、あの映画1本に集中してやっていました」

-とくに最後の弟が刑務所に慰問に来て漫才をするシーンは圧巻でした。玉山さんの大泣きしながらの笑顔が絶妙で泣きました-

「ありがとうございます。原作は歌だったんですけど、原作ものを変えてあれだけうまくいくことってそんなにないんですよね。だからそれがうまく回って良かったなと思います。

あとは小田和正さんのあの曲が、あのタイミングで流れるというのが僕はわからなかったんですけど、でもあの曲が『手紙』の曲に決まったと聞いて、車の中でその曲ばかり聴いていた思い出はあります。

撮影がちょうど春だったんです。僕はすごい花粉症で、泣きの芝居をするともう鼻水がめちゃくちゃ出ちゃう。テクニカル的な感じで鼻を押さえながら泣いたりとかいろいろあるんですけど、それを1回全部やめようと。

出ているものはしょうがないし、それもそれでうまく伝わればと思ったんですよね。その切り替えが多分、良かったんだと思うんです。

鼻水も出ているんだけど拭かない。汚いけど哀愁があったり、人間味があったりとか…何かどうしてもフィクションもので撮影という定義がわかっていると、やっぱり汚いものに対して、それをなくしたりとか、よりきれいに見せたりとかしがちなんですけど、でもそういう時代じゃないんじゃないかと。

みんなが持っている先入観とかセオリーからはみ出たものが、より感動に結びついたりするということが結構あると僕は思っているので。だから、そこはもうあえてきれいにはしないというのがありました」

-だから余計リアルに伝わってきたのでしょうね。きれいな人はあまり汚したがらなかったりしますけど、それがまったくないところがすごいなと思いました-

「よく泣きのシーンで『ちょっと鼻水が出たのでもう一回やらせてください』ということがよくあるんです。でも、普通鼻水が出るし、『鼻水が出て何が悪いんだろう?』っていうのが僕の意識では昔からあって、『こうでなきゃいけない』という檻をみんな崩しきれないんですよね。

だから僕は今でもそうなんですけど、キャラクターもそうだし、芝居のプランをたてるときなども、視聴者の方もそうだし、作り手が思うそのセオリーみたいなものをいかに自分なりに外せるか、先入観から逃れるかというのが僕の中では本当にこの10数年のテーマになっています」

『手紙』で演技力を高く評価された玉山さんは、『フリージア』(熊切和嘉監督)、『カフーを待ちわびて』(中井庸友監督)など主演映画をはじめ、多くの映画、ドラマに出演。2009年に公開された映画『ハゲタカ』で第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。

次回は映画『ハゲタカ』と映画『カフーを待ちわびて』の撮影エピソード&裏話も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:TAKE for DADACuBiC@3rd
スタイリスト:袴田能生(juice)

©2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

※映画『今はちょっと、ついてないだけ』
2022年4月8日(金)より新宿ピカデリー他全国順次公開
配給:ギャガ
監督:柴山健次
出演:玉山鉄二 音尾琢真 深川麻衣 団長安田(安田大サーカス) 高橋和也ほか
かつて秘境を旅する番組で人気カメラマンとして脚光を浴びながら、表舞台から姿を消した立花(玉山鉄二)。彼に写真を撮る喜びを思い出させ、再び自然へと導いたのは、シェアハウスに集う不器用な仲間たちとの笑顔の日々だった…。

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