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『愛しい嘘』ついに真相が明らかに。悲しすぎる“あの男”へ送る愛の手紙【7話ネタバレ有り】

<ドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』第7話レビュー 文:横川良明>

今から始まるのは、もはやレビューではなく、ある人に宛てた長い長い手紙です。

ついに真相が明らかになった金曜ナイトドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』第7話。真実に辿り着いたとき、こみ上げてきたのは、こんなふうにしか生きられなかったある男への愛でした。

◆優しすぎる中野くんだから、悲劇は起きた

拝啓、雨宮(林遣都)くんへ。

もう中野幸くんと呼んだ方がいいでしょう。顔を変え、名前を変え、自らの人生を捨ててまで雨宮として生きることを選んだ中野くん。いや、違いますね。選んだんじゃない。中野くんには、そんな道しか残されていなかった。そのことにもっと早くに気づいてあげればよかったと、今、遅すぎる後悔が胸をかきむしっています。

両親からひどい虐待を受けてきた中野くん(中学時代:池田優斗)。あなたにはずっと家庭にも学校にも居場所がなかった。だからあのとき、美術の授業で望緒(中学時代:足川結珠)に声をかけてもらったことがうれしかったんですよね。

誰も自分のことを見ていない。気にかけてくれる人など、どこにもいない。そう思っていた中野くんにとって、望緒とのあのささやかな時間は幸せだった。

両親からも愛されたことのない中野くんは、望緒のあの絵を見て、自分はこんなふうに優しい顔をしているんだと知った。温かいものを感じた。だから、忘れられなかった。

でも、運命は、あなたにばかり残酷だった。両親を殺して、自分も死のう。そう誓ったはずの中野くんにとって、本物の雨宮(中学時代:荒木飛羽)が抱きしめてくれたことは、救いだったんだと思う。あの抱擁が、死ぬつもりだった中野くんに未来を残してくれた。けれど、その未来は決して優しいものではなかった。

証拠の動画をネタに、雨宮(林遣都/二役)から搾取され続ける日々。両親の支配から逃れたと思ったら、今度は雨宮が自分を支配する。地獄の先は、また別の地獄。この世に自由なんてない。その絶望を思うと、胸が押し潰れさそうになります。

中野くんのやったことが、すべて許されるとは思いません。この際、クズすぎる雨宮の方はいい。クズ宮は始末しとけ。

だけど、自分の保身のために優美(黒川智花)に近づき、その寂しさにつけ込み、奈々江(新川優愛)を殺させたことは、相応の罰を受けるべきこと。まやかしの恋に踊らされた優美はやっぱり哀れだなと思います。

でも、中野くんが本当に悪い人じゃないことはわかる。だって、あの同窓会のとき、サユリ(高橋ひとみ)のもとに駆けつけたのは、中野くんが優しい人だから。もしもあの場に残って無事に携帯電話を手に入れていたら、こんなことにはならなかった。奈々江が携帯に残された動画を見ることもなかったし、真実を闇に葬ることができた。

もちろん自分が帰ったあとにタイムカプセルが掘り出されたことは中野くんにとっては想定外だったかもしれないけど、万が一のリスクを残してまで、あの場を去ったのは、サユリを本当の母親のように思っていたから。

親からの愛に恵まれなかった中野くんと、実の息子に背を向けたサユリは、ただの偽装親子。でも、その愛は偽物じゃなかった。だから、悲劇が起きた。

◆それは、世界でいちばん残酷な両想いだった

望緒のこともそう。最初に望緒に声をかけたときは、淡い初恋を少しだけ思い出したかったのかもしれない。だけど、望緒に近づけば近づくほど、どんどん望緒のことが好きになった。本気で望緒がほしいと思った。

でも、望緒からの愛は、あくまで雨宮に向けられているもので。望緒は、自分のことさえ覚えていなかった。こんなに残酷な両想いがあるでしょうか。望緒といるとき、あなたの目がいつも少し寂しそうだったのは、どんなに想いを寄せられても、決して自分自身が愛されているわけではないとわかっていたから。

望緒は言ってました。「私、雨宮くんの何を見ていたんだろう」と。確かに望緒が興味を抱いたのは、雨宮の顔をした中野くんだったかもしれません。雨宮じゃなければ、恋は始まらなかったかもしれない。

でも、中学時代の望緒がずっと見つめ続けていたのは、あくまで外側の雨宮くん。彼がどんな闇を抱えているかなんて知ることもなかった。恋と呼ぶにも幼すぎる、上っ面の憧れでした。

一方、今の望緒が心癒されたのは、中野くんの中身です。臆病で、自分に自信がなくて、言いたいことを何ひとつ言えなかった自分を、認めてくれて、応援してくれて、勇気づけてくれたあなただから、望緒は恋をした。決して報われない恋じゃなかったよ、と伝えてあげたい。

でもきっとそう言われても中野くんはかぶりを振るでしょう。望緒に近づいたのは全部利用するためだったという態度。あれは、嘘ばっかりだった中野くんが最後についた“愛しい嘘”ですか。

この悲しい事件に巻き込んでしまった望緒の心を少しでも楽にしてあげるための嘘。でも私たちは知っているのです。この人の口からこぼれる「嫌い」はおおむね「好き」で、「全部嘘」は「全部本当」だということを!!!

中野くんは、愛に飢えた人生を生きてきたかもしれない。でも、そんなあなたをこんなにもいとしく思っている人がテレビの前にたくさんいることを伝えて、この手紙は終わりにしたいと思います。

ありがとう、中野くん。どうかラストまで生き残ってください。

◆キーパーソンは野瀬? 最後はどう終わるのか…!?

そんな悲恋で終わったかと思いきや、ラストのラストでクズ宮が復活し、事態は思わぬ展開に…。きっと最終回は望緒を守りたい中野くんとクズ宮の最終対決が繰り広げられることでしょう。

大体の謎はこの7話で回収されたと思いますが、いまだにちょっと引っかかっているのは、あのタイムカプセルの中から出てきた「みんな 忘れないよ 中野幸」という紙は誰が入れたかということ。中野くんはもうその場をあとにしていたので、中野くんではありません。

とすると、もともとクズ宮が入れていたものなのか? でも、そんなことをする動機も見当たらないので、ちょっと謎。このあたりの謎解きは最終回のお楽しみでしょうか。

この第7話は、波瑠と林遣都の、愛憎という糸を互いに引っ張り合うようなお芝居にただただ引き込まれっぱなしでした。

望緒に「あなたこそ悪魔よ」となじられた直後の、中野くんのからっぽの目。心臓からはだらだらと血がこぼれている。肉がえぐられたような傷口をぎゅっとおさえつけて、何も感じていないように振る舞おうとするけれど、全身から悲しみが張り裂けそうになっているのが、上体の揺れから痛いくらい伝わってきました。

林遣都は、思っていることと口にしていることが違うときの演技が本当にうまい。心と体がバラバラになってしまいそうな苦しみがダイレクトに届くから、観ているこちらまで切り刻まれそうになるのです。

一方、この望緒という役は本当に難しい役だと思います。自分の意思が薄弱で、ともすると類型的な巻き込まれ系のヒロインになりがち。でも、波瑠が演じると、そこに圧倒的な不可侵性が加わるのです。

14年の月日が流れても、望緒の心にあるものは純粋なままだと説明しなくてもわかるから、おぼろげな初恋のために自らの手を染めてまでりえ(松村沙友理)に制裁をくわえた中野くんの気持ちに共感できる。

誰にも汚されることのないイノセントな存在感は、波瑠だからなし得たもの。それが、このドラマに説得力を与えていました。

望緒と中野くんの悲しい恋はどんな結末を迎えるのか。なんとなく野瀬正(徳重聡)が最後の鍵を握っていると思うんですよね。ずっと雨宮を追い続けている野瀬がこのままフェードアウトで終わるとは思えない。最後に野瀬は何をやらかすのか…?

想像するだけで悲しくなりますが、最後までしっかり見守りたいと思います!(文:横川良明)

※『愛しい嘘~優しい闇~』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

※過去回は動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」で配信!

※番組情報:金曜ナイトドラマ『愛しい嘘~優しい闇~
【毎週金曜】午後11:15~深夜0:15放送、テレビ朝日系24局(※一部地域で放送時間が異なります)

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