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「あの負けから何を学ぶのか」バドミントン日本代表、東京五輪の“誤算”と復権の“カギ”

バドミントン最強国を決定する『世界バドミントン国別対抗戦2021 トマス杯・ユーバー杯』が、10月9日(土)から開催される。

史上最強と期待されながら、メダル1つという結果に終わった東京オリンピックから約3カ月。バドミントン日本代表は、3年後のパリオリンピックに向けて新たなスタートを切ろうとしている。

そこでテレビ朝日では、オリンピックの会場で日本代表の全試合を解説した3人の識者にインタビュー。不振に終わったオリンピックでの戦いを振り返りながら、日本が復権するためのカギについて話を聞いた。

◆「打倒日本」の海外勢に気持ちで負けた東京五輪

自国開催の東京オリンピックで日本バドミントン協会が目標に掲げたのは、金メダル3個を含む全種目でのメダル獲得。しかし、結果は混合ダブルスの渡辺勇大&東野有紗ペアが獲得した銅メダル1つだけだった。

日本代表が目標に遠く及ばなかった要因について、ロンドンオリンピックで日本バドミントン界初のメダルを獲得した藤井瑞希さんは、次のように分析する。

「選手たちが感じたことがないプレッシャーや期待を一気に感じてしまって、気持ち的な部分でみんな委縮しているなと見ていて感じました。観客が入っていないことで、気持ちを上げ切ることができなかった部分もあると思います。

選手はみんなオリンピックという感じがしないと言っていましたが、観客の力があったら『今ここで負けられない』という気持ちになって、勝てた選手もいるんじゃないでしょうか」(藤井さん)

自国開催のプレッシャーに加え、無観客で地の利を生かせなかったことが大きく影響したようだ。さらにJOC専任コーチの今井紀夫さんは、精神面での準備不足を指摘する。

ほかの国の選手が目の色を変えて向かってきている姿勢が印象的だったが、日本チームはそれに対して『絶対に負けないぞ』という気持ちがちょっと弱かったかなと。気持ちの準備不足があった。全体的にみんなで戦おう、がんばろうという気持ちが上手く作れなかったかなというのはあります」(今井さん)

2大会連続で五輪出場を果たした池田信太郎さんは、新型コロナウイルスの影響で実戦を積む機会が少なかったことも大きかったと話す。

「自国開催でプレッシャーもある中で、試合数が少ないまま大会に挑まなくちゃいけなかった。中国などは国内で頻繁に大会をやっていたという話もありますが、日本の選手は緊張した場面での大会が国内でも少なかった。練習しかできなかったというところがある」(池田さん)

◆桃田賢斗、復活のカギは“攻撃力”の強化

自国開催のプレッシャー、コロナ禍、無観客…さまざまな障壁によって思うような結果を残せなかった日本代表。なかでも男子シングルス・桃田賢斗の予選敗退は衝撃的だった。

この試合を現地で解説した池田さんは、桃田が負けた理由をこう分析する。

「やはりディフェンスが彼の大きな持ち味でもあるので、まずはいつも通りのプレーでディフェンスをして攻撃に移りたいという気持ちが強かったと思うんですよね。ただ韓国の選手が非常にアグレッシブに攻撃して、かなりのプレッシャーを桃田選手自身が感じてしまった」(池田さん)

攻撃力が持ち味の選手に対し、受け身になってしまったことが敗因だという。今井さんもまた、桃田の“攻める気持ち”について指摘する。

「自分から攻めていかなきゃいけないところを最初からあまり攻めずに、ただ守ってやろうというスタイルにならざるを得ない雰囲気をつくってしまった。攻める気持ちをなかなか出せない試合だったかなと思う」(今井さん)

そのうえで、桃田がこれから世界で勝つために、変えていくべき点は何なのだろうか?

彼自身も課題だと感じていると思うけど、やはり攻撃ですよね。桃田選手はラリーで勝負してラリーの中で崩す、相手のミスを誘うプレーが得意なので、そういったプレーで今までは勝てた。でも、これからはラリーをして点を取りに行く、自分から仕掛けてラリーを“切っていく”プレーをしていかないといけない。

自分から攻めて自分でポイントをとっていかないと、どうしても勝負になったときにディフェンスに回ってしまう。これからは攻撃面をどれだけ成長できるかがカギになる」(池田さん)

◆ナガマツペアはディフェンスに課題

日本代表のエース・桃田に続き、金メダル候補として期待された女子ダブルス・永原和可那&松本麻佑の“ナガマツ”ペア。

準々決勝で計6本のマッチポイントを握りながらも勝ち切れず、はじめて挑んだ夢の舞台は、ベスト8に終わった。

この結果について、藤井瑞希さんは次のように語る。

「オリンピック前からナガマツペアの課題はディフェンス力だったと思うんですけど、それが予選のときに上手くいかず、ずっと引きずってしまったという印象。もう少しディフェンスの部分で声を出したり、がむしゃらに向かっていく気持ちがあれば、どうにか乗り越えられたと思うんですけど。

自分たちにディフェンス力がないと思っていて、ずっとその不安を抱えながら結局準々決勝も競ってしまったので、最後相手に打ち切られたという印象です」(藤井さん)

ただ、この負けは2人を成長させるとも話す。

経験が大きく2人を変えるんだろうなと考えています。こういう経験をして、より絆が強くなったり、コンビネーションがよくなっていくのは確実なので、ここからが楽しみだと思える2人です。技術面でいうとディフェンス力。ここをどうにか自信を持ってプレーしてほしいと思います」(藤井さん)

◆東京五輪の敗戦、今後どう生かす?

思い望んでいた結果には及ばなかったバドミントン日本代表だが、負けて得たものも少なくなかった。敗戦を乗り越え、再び史上最強の称号を取り戻すためには、何が必要なのだろうか?

「東京オリンピックでは絶対的な実力で負けたのではなく、100%の力を出せていれば獲れていたメダルの数は多かったです。ただ、なぜ力を出せなかったかと振り返ると、どうしてもメンタル的な部分が大きかったと思います。ひとつの課題としては、メンタルの強化が大事だなと思います」(藤井さん)

これまでやってきたことだけをやっても、ある程度壁ができていると思うので、壁を取っ払って、プレーの幅や取り組むスタイル、いろいろ変えていくことも必要なんじゃないかなと。決して甘えていたわけではないと思うんですけど、選手はさらに自分に厳しく、周りのスタッフも選手のレベルアップに向けてみんなで協力してやることが大事なんじゃないかなと思います」(今井さん)

「どれだけオリンピックを意識して次の大会に挑めるか。準備も大切ですけど、個人の精神的な強さが非常に重要になってくる。精神的な強さは選手自身が練習で培う部分もありますが、周りの環境や精神的ケアも大事。

パリ大会は幸運なことに4年後ではなくもうすぐで2年になるので、準備としては非常に急がなくちゃいけない。東京オリンピックで感じたことを次のパリ大会でどれだけ具現化できるか。選手もスタッフもここから新しいチームジャパンを作っていかなくちゃいけないと思います」(池田さん)

2024年のパリオリンピックまであと約3年。

『スディルマンカップ』でリスタートを切ったバドミントン日本代表は、『世界バドミントン国別対抗戦2021 トマス杯・ユーバー杯』で次なる戦いに挑む。

オリンピックで悔しい経験をした日本代表がどんな成長を見せてくれるのか、期待したい。

※番組情報:『世界バドミントン国別対抗戦2021 トマス杯・ユーバー杯
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〈男子準々決勝〉
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