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俳優・江藤潤、息子と舞台で共演も演出家からダメ出し。居残り勉強させられ「大恥かきましたよ(笑)」

1972年、20歳のときに歌手&俳優として芸能界に入って以降、多くの映画・ドラマ・舞台に出演、今年2021年にはデビュー50周年を迎えた江藤潤さん。

2019年には小倉一郎さん、三ツ木清隆さん、仲雅美さんとともに「フォネオリゾーン」というユニットを結成し、『クゥタビレモーケ』でCDデビュー。2020年から神戸コミュニティFM局FM MOOVで『江藤潤「白秋の門」』のパーソナリティーをつとめている。

2021年10月12日(火)から17日(日)まで東京・俳優座劇場で舞台『浜辺の朝~俺たちのそれから~』に出演。円熟期を迎え、新たな挑戦を続けている。

◆雪深い北海道で高倉健さん&降旗康男監督と

1999年、江藤さんは映画『鉄道員(ぽっぽや)』で高倉健さんと共演。メガホンを取ったのは、多くの作品で高倉さんとタッグを組んだ降旗康男監督。廃線間近となった北海道のローカル線・幌舞線の終着駅の定年間際で孤独な鉄道員(高倉健)に訪れる小さな奇蹟を描いたもの。江藤さんは新人駅員役で出演している。

-雪深い中での撮影で寒かったでしょうね-

「僕はちょびっとしか出ていないので、僕よりも健さんとか稔ちゃん(小林稔侍)、スタッフのほうが大変でしたよね。四六時中ですから」

-撮影で印象に残っていることは?-

「列車です。汽車の正面が凍っているというので寒さの厳しさがわかりますよね。列車に氷がこういうふうになるんだ、すごいなあって。

普通は寒いからライティング(照明の設定作業)などをしているときには、役者は駅舎に入ってストーブの近くに座って待つわけですよ。でも健さんは座りませんからね。健さんが外で立っていて、僕たちがちょっと出番待ちで椅子に座っていても健さんが入ってこられたら立ちますよね。『どうぞ』て。だけど、健さんは絶対に座らないんだよね。そうすると誰も座らない。座れないですよね(笑)」

-皆さんそうおっしゃいますね。でも、雪の中に立っていて健さんほど絵になる方もいないですよね-

「そうですね。本当に絵になりますよね。かっこいい」

-降旗監督もお亡くなりになって残念ですね-

「そうですよね。僕はフルさん(降旗監督)とは一緒に現場をやる以前から新宿でよく飲んでいて飲み仲間だったんですよね。

だからみんなは『監督』って言うんだけど、僕は『フルさん』て言うから周りが『えっ? 普通監督って言うだろう?』って京都の東映に行ったときも言われたんだけど、普段の癖でフルさんって言っちゃって。『あっ、そうだ。ここは現場なんだから監督って言わなきゃいけないんだ』って気づいて、慌てて『監督』と言いなおしたりしていましたよ(笑)」

-印象に残っていることは?-

「フルさんとは2時間ドラマとかもいっぱいやりましたからね。フルさんは物知りだしインテリで、『網走番外地』シリーズなどもずっと撮っていたので、わりとそういう世界にも慣れているんですよね。

関西でちょうど抗争をしている最中に港町で2時間ドラマを撮っていたら地元のチンピラが来たんだけど、フルさんは撮影をしているからそんなのは全然眼中にない。『ちょっと君、そこうるさい!』とか言っちゃうわけですよ。

僕なんかは、『いやあ困ったなあ。変な人がからんできて』って思うんだけど、そこらへんは全然動じない人なんですよ。『網走番外地』シリーズからずっとそういう現場で撮影しているから慣れちゃってるんだよね」

-撮影を邪魔されたりというようなことはなかったのですか?-

「それはなかったですけど、一番しんどかったのは制作部ですよ(笑)。からまれて文句をつけられて。でもフルさんはまったく動じないからすごいなと思いました」

さまざまな監督とタッグを組んできた江藤さん。2016年には大沢樹生さんがメガホンをとった映画『THE ACTOR-ジ・アクター』に出演。刑期を終え仮釈放となった元ヤクザ・辰巳(野村宏伸)が成り行きでVシネマに出演したことから俳優になるというこの作品では、Vシネマの監督をワイルドに演じている。

-無精ひげにくわえタバコでワイルドなVシネマの監督ですが、どなたかをモデルにされたのですか?-

「いえ、直接のモデルはいないですけれども、『こんな監督もいたな』とか『こんな助監督もいたな』と思いつつ、いろんな人を思い出しながらやりました(笑)」

-出所した主人公が俳優になるきっかけを作る監督役で-

「そうですね。台本ではあそこまでなかったんだけど、現場で俺がテンション上がってやっていたら、『それおもしろい。もう1パターンいきましょうか』みたいな感じであんな監督像になったんですよね。それはそれでおもしろかったですけどね(笑)」

-大沢さんが監督をされていましたけど、撮る寸前にスポンサーがいなくなってしまって大変だったそうですね-

「そうそう。そうみたい。僕らはその辺はちょっとわからなかったんだけど、大沢君は大変だったみたい。やっぱり映画を作るっていうのは大変ですよね。何が起こるかわからないから。途中でダメになることもあるしね。大沢君は大変だったと思うけど、完成してよかったですよ」

※舞台『浜辺の朝~俺たちのそれから~』
2021年10月12日(火)~17日(日)
東京・俳優座劇場
出演:勝野洋 江藤潤 十碧れいや 上島尚子ほか
ストーリーテラー:尾藤イサオ
脚本・演出: 勝野雅奈恵 / 演出: 高橋征男

◆映像だけでなく舞台もやっていたから救われた

浮き沈みの激しい芸能界で50年間仕事を続けることはなかなか難しいが、これまで仕事が途切れて大きく空くということはなかったという。

「映像専門でやってきていたら年齢的にちょうど過渡期とかで苦労したかもしれないけれども、そういうときに舞台をやっていたということがあるからよかったんじゃないかな。今はコロナで大変な状態になっていますけど、映画をやりつつテレビもやりつつ、舞台もやっていましたので。舞台も今、僕はものすごく楽しくてしょうがないんです。手作り感がまさにありますからいいですよね。楽しい」

-10月に出演される舞台『浜辺の朝~俺たちのそれから~』はどんなお話ですか?-

「昭和50年代に人気を博したテレビドラマ『俺たちの朝』(日本テレビ系)の仲良し3人組、オッス(勝野洋)、チュー(小倉一郎)、カーコ(長谷直美)を取り巻く30年後を描いた作品なんですけど、社会的な問題を取り入れながら、切なくて懐かしさを感じるお話です」

-今、お稽古の真っ最中だと思いますが、いかがですか?-

「脚本・演出は、勝野雅奈恵ちゃん(勝野洋さんとキャシー中島さんの次女)なんだけど…稽古初日にいきなり一幕通しの立ち稽古。いやはや僕の稽古経験でははじめての出来事なんだよね。まぁ、公演が一年延期になった分、雅奈恵ちゃんの舞台にかける熱い思いを感じています。久しぶりの舞台ですからね。とってもワクワクしているし、無事に幕が開けることを願っています」

フォネオリゾーン

◆平均年齢69歳のユニットに

10年ほど前からライブ活動も行なうようになったという江藤さん。2019年には小倉一郎さん、三ツ木清隆さん、仲雅美さんとともに「フォネオリゾーン」というユニットを結成することに。

-「フォネオリゾーン」を結成することになったのは?-

「僕が舞台をやっているときに(仲)雅美が見に来てくれて、『(小倉)一郎も一緒にやっているから、もしよかったら潤ちゃんも顔出して1曲か2曲、ギターもって歌ってもらえたらありがたいんだけどね』なんて言われたのがライブのきっかけになったんですけれどもね。

それで、『雅美と一郎』というトーク&ライブをやっているときに僕が参加して、そこにミッキー(三ツ木清隆)もときどき参加していて、たまたま4人が集まったことがあったんだよね。

それをやっているときに、『何かいいチームワークだから、何かやってみようか』みたいな話になって、『フォネオリゾーン』を結成することになって。あそこまで行くとは誰も思っていなかったんだけどね。CDデビューするなんて(笑)」

-平均年齢67歳のときに『クゥタビレモウケ』でCDデビュー。現在は平均年齢69歳のユニットに。覚えやすい曲でいいですよね-

「ありがとうございます。宇宙からやってきたという設定で派手な衣装と変わった髪型でね。ただ、せっかくCDも出したんだけど、コロナ禍でライブとかができない状況だから先が見えないですよね。あれから2、3年経っているのでもっとみんな年をとっていますから、どうなっちゃうんでしょうかね。いろいろ計画はあったんですけど全部できなくなってしまって」

-仲さんと三ツ木さんは「フォネオリゾーン」のキャラでリモートクイズなどをネット配信されていて、4人でやりたいとお話されていました-

「俺も一郎も苦手でムリなんですよね。前にやってみたんだけどフリーズしちゃってダメで(笑)。雅美とミッキーは達者ですけど、俺と一郎はムリ」

※『江藤 潤「白秋の門~まだまだ青春篇」』ラジオ公録+α!2021 OCT受付中
2021年10月2日(土) 午後5:15~午後7:00 UTC+09
M’s Cantina エムズ・カンティーナ

-ラジオで『白秋の門』をされるようになったのは?-

「それはいつもライブをやっている『エムズ・カンティーナ』というライブハウスがあって、そこで自分の単独のライブをやっていたときにオーナーから、『もし興味があったら15分番組になりますけど、今やっている人たちが終わるのでそのあと江藤さんが何か好きな形でやってみる気はありませんか。ギャラにはなりませんけど』と言われて。

何か挑戦したいし、15分とはいえラジオのパーソナリティーで企画から構成から全部自分でやっていいのであればそんな機会なんてなかなかないですから、『ぜひやらせて』ってやることに」

-もう1年ぐらいになります?-

「1年経ったんですよね。半年間2クールやって延長になったので、また2クールということで1年。2021年9月で1年の放送が終わって、10月からまた2クールはじまることになったので、今度はちょっとプチリニューアルで『白秋の門〜まだまだ青春篇』というタイトルで続けていくことになりました。

月に1回、4本録りなので、マネジャーと一緒に曲も含めて話の内容も全部作らなくちゃいけないからちょっと大変ですけど、全然苦じゃないです。題材があったらかえって楽しいよね。デフォルメ、デフォルメって(笑)。

でも、この仕事をはじめてから台本を作るのは大変だということがよくわかった。役者はよく『本がよくないから』とか言うじゃない。俺もそういうことがあったけど、もう絶対に言わないようにしようと思いましたね(笑)」

私生活では3人の息子さんをもつ父親。長男の江藤慶さんは俳優の道に。これまでに舞台で一度共演したことがあるという。

「明治大学でずっと日本史を勉強していて、歴史の先生になりたいと言っていたからそうなると思っていたんだけどね。俺がやっているのにやめなさいとは言えないしね(笑)。いろんな舞台に参加しているんだけど、お金にならないからアルバイトもしていますよ。

2020年からは決まっていた舞台もコロナで全部ダメになっちゃって。俺も息子も困ったんだけど、たまに息子が家に遊びにくるといろんな話をしてもまだ嬉々としているので、これはまだいいかなと。これが暗く落ち込んでいるようだったら困っちゃうけど」

-父子共演されたことは?-

「1回あります。そのときの演出家がちょっとクセのあるひとでね。俺もそうだし、息子もケチョンケチョンにやられて(笑)。大恥かきましたよ。『江藤さん、違いますよ』なんてダメ出しされて。

『ちょっと江藤さん、今日は居残って勉強しましょう』って言われて、『はい』と言っているようなところも息子は見ているわけですよ。でも、何十年やっていたってこういうこともあるんだということだから、いいんですけどね(笑)」

-今後やってみたいことは?-

「コロナが終結したら大劇場の舞台。今でもお話はくるんですけど、大劇場は企画が立ち上がってもほとんどコロナで潰れていますからね。だから、また大きな劇場にも参加したい。まだまだいろんなことに挑戦したいですね。

あと、ラジオがもっともっと好評になってリスナーが多くなって欲しいなあと思っています。ただ、いつも現場は真摯に向き合って、くさらず楽しく僕は臨んでいますよ。男の子は死ぬまで男の子ですから(笑)。僕の座右の銘は『八勝七敗 各駅停車 ゆるりゆるりと 一歩づつ』。くさったり焦っちゃダメです。男の子はいつまでも可愛くなくちゃね(笑)」

茶目っ気たっぷりの笑顔がチャーミング。楽しんでお仕事をされているというところがすてき。今一番の楽しみは、大好きなオートバイでのツーリングとお酒だとか。ワイルドに“男の子道”を突き進んでほしい。(津島令子)

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