バドミントン渡辺勇大&東野有紗ペア、新たな戦いへ!解散危機も乗り越えた“余り者”同士10年の「コンビ愛」
9月26日(日)から開催される『世界バドミントン男女混合国別対抗戦2021スディルマンカップ』。世界12の国と地域からトップ選手が集結し、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスの5試合で世界一を争う。
前回大会準優勝の日本は、桃田賢斗、山口茜らエース級の選手が出場し、「史上最強」の称号を取り戻す戦いに挑む。
なかでも注目の選手が、東京オリンピックで銅メダルを獲得した混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗、通称“ワタガシペア”だ。
東京オリンピックでは、メダル獲得直後にコートの上で抱き合いながらよろこぶ姿が印象的だった2人。
中学からペアを組み、今年で結成10年。あの印象的なハグの裏には、10年分のさまざまな想いがあった。
オリンピック前に実施した2人へのインタビューをもとに、「結成秘話」「挫折と転機」「ペア解散危機」など、ワタガシペアのこれまでに迫る。
◆五輪メダリストペアは“余り者”同士
渡辺と東野の出会いは、中学のバドミントン部。女子の東野が一学年上の先輩後輩だった。
お互いの第一印象について聞くと、東野は「メッチャ小さくて、隅っこにいるような感じ」、渡辺は「ちょっと怖いなぁ」と振り返る。当時は学年も違うため、あいさつを交わす程度で話をしたこともなかったという。
そんな2人がペアを組んだのは2012年。
「自分が中学校3年生で勇大君が2年生の時、インドネシアの大会に出ることになって、その時に余り者同士で大会に出ました。強い人たちが先にペアになって、その中の余り者だったんです」(東野)
「弱い方の2人(笑)。下っ端だったよね?」(渡辺)
2人が通った富岡第一中学校は、桃田賢斗らを輩出したバドミントンの強豪校。余り者同士の彼らは期待されていなかった。
ところが、組んだ瞬間から相性は抜群だった。
「スピード感もコンビネーションも、何も話さずにうまくいったので楽しかったです」(東野)
「コートに入ってローテーションとか阿吽の呼吸がすごく合って、ミックスダブルスも楽しいなと思ったのは先輩との試合がきっかけでした」(渡辺)
ペアを組んではじめて出場した国際大会で3位の好成績を残し、運命に導かれるようにワタガシペアの歴史がはじまった。
◆「先輩とじゃないと金メダルはとれない」
しかし、ペア継続は一筋縄ではいかなかった。
1年先輩の東野は先に高校を卒業し、実業団チーム・日本ユニシスに入社。そのチームで渡辺が1年後に入ってくるのを待っていた。
「勇大君とじゃなきゃオリンピックにいけないと思って、自分が卒業する前ぐらいのタイミングで『ユニシス一緒に来ない?』と3回ぐらいLINEを送りました」(東野)
ところが、当時の渡辺はすぐにイエスとは言わなかった。
「その時はちゃんとひとりで考えたいなと思っていた時期で、『僕の人生なので考えさせてください。今行きますとは言えません』という話をさせてもらいました」(渡辺)
渡辺から返ってきた予想外の返事。
それでも、東野はまた必ず一緒に組めるという確信があった。高校卒業時、渡辺が東野に贈った送別のメッセージに、こんな言葉が綴られていたからだ。
「がしさん(東野)との思い出はやっぱり一緒に戦ったミックスかな。すごく頼りになっていつでも声かけてくれて、試合してすごく楽しかったよ。またいつか一緒に戦えたらなと思ったりもするなあ」
「また一緒に戦いたい」――。東野はその思いで、粘り強くラブコールを送りつづけた。すると、ついに渡辺もユニシス入りを決断。
「先輩とオリンピックで金メダルをとりたいっていうのが大きな要因でした。先輩とじゃないとオリンピックの金メダルはとれないなって元から思っていたので、諦めないで誘っていただいたのが嬉しかったですね」(渡辺)
◆挫折して気付いた「言葉にすることの大切さ」
ペア解散危機を乗り越えて絆を強くした2人だったが、2018年には挫折を経験したこともあった。
「2018年全英オープン初優勝する前の1年間はすごく辛かったです。僕も気分屋ですし、調子の波が激しいタイプだったので、うまくいかない時にちょっと諦めてしまったり…。それで先輩が余計に気を使って、勝つゲームができなくなっていました」(渡辺)
原因は、明らかな “コミュニケーション不足”。
「勇大君にすごく気を使いすぎちゃって、自分から「こうしてほしい」と言ったりするのがなかなかできませんでした」と東野も振り返る。
そんな状況を打開したのは、2019年に混合ダブルスの専任コーチに就任したマレーシアのジェレミー・ガン氏の存在だ。
「ジェレミーコーチが『コミュニケーションがすごく大事だよ』と教えてくれて、2人ですごく話すようになってから、徐々にうまくいくようになりました」(東野)
「2人で同じことを思っていても、阿吽の呼吸だけじゃなくて言葉にして伝えて、さらにその意味を深める作業が僕らにとってすごく必要だと気づけました。そこで1つ2つ壁を破れたかなと思います」(渡辺)
ペアとして長い時間をともにし、「言わなくてもわかるだろう」と思っていたことを改めて言葉にして伝え合うことで、より理解を深めていった。
それからは何よりもコミュニケーションを大切にし、その日の不調や弱みもすべて話すように。
「やっぱり言葉にすることで、より深い理解になって『ここは助けてあげたい』とか『ここは自分が頑張んなきゃ』と思える。言葉にすることってすごく大事だなと思いました」(渡辺)
◆最高のパートナーと新たな戦いへ
こうして10年もの間ともに歩んできたワタガシペア。
その間、2018年に全英オープン初出場で初優勝。さらに世界バドミントンで同種目初の銅メダルを獲得し、2020年には全英オープンをふたたび制覇と、数々の日本バドミントン界の歴史を塗り替えてきた。
そして2021年、東京オリンピックにて日本人同種目で初のメダルを獲得。目指してきた舞台で夢をかなえた直後、2人はインタビューでこんな言葉を残した。
「勇大くんとじゃなきゃオリンピックで金メダルをとれないと考えていたので、あの時諦めずに声をかけてよかったなと思います」(東野)
「当時の自分に『お前の選択は間違っていなかったよ』って言ってあげたいです」(渡辺)
10年の時を経て、“余り者”同士が最高のパートナーに――。『スディルマンカップ』で新たな一歩を踏みだす彼らの戦いに注目したい。
※番組情報:『世界バドミントン男女混合国別対抗戦2021スディルマンカップ』
◆テレビ朝日地上波(関東地区)
<準決勝>
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<決勝>
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<グループリーグ>
9月26日(日) よる10:00~深夜3:00
9月27日(月) よる10:00~深夜3:00
9月28日(火) よる10:00~深夜1:00
9月29日(水) よる10:00~深夜3:00
9月30日(木) よる10:00~深夜3:00
<準々決勝>
10月1日(金) ごご4時~、よる10時~
<準決勝>
10月2日(土) ごご4時~、よる10時~
<決勝>
10月3日(日) よる7時~