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岡田健史が醸し出す“清涼剤”のような魅力!『桜の塔アナザーストーリー』が必見な理由

亡き父の死をめぐり、因縁と謀略が渦巻くドラマ『桜の塔』

警察官の父はなぜ自ら命を絶ったのか…。真相を知るべく、主人公・上條漣(玉木宏)は父と同じ警察官の道を選んだ。

その頭脳と野心で次々とライバルたちを蹴落とし、出世の階段を駆け上がる漣。だがその中で、父を自殺へと追い込んだ黒幕が、恩人でもある上司の千堂(椎名桔平)であったことを知る。

漣は、千堂を失脚させようとクーデーターを試みるも失敗。その強大な権力の前に完膚なきまでに敗れ去る。

復讐の舞台は5年後へ。泥をすするような屈辱を味わった漣は千堂の配下として従いながら、反撃の機会を窺っていた――。

◆スリリングな展開の清涼剤。岡田健史が主人公のアナザーストーリー

そんなスリリングな復讐劇の中で一服の清涼剤となっているのが、キャリア組のエリート警察官・富樫遊馬(岡田健史)だ。

警察大学校でトップの成績を誇りながら、現場である捜査一課を希望し事件解決のために奔走する富樫は、曲者揃いの登場人物の中で数少ない善良なキャラクター。上司である水樹爽(広末涼子)にひたむきな想いを寄せる場面は、張りつめた緊張感をほぐす癒しのひとときとなっている。

5月20日(木)放送の第6話では、一方通行のように見えた富樫の想いが実り、爽とは恋人同士に。捜査一課を離れ、漣の部下となった富樫は今までよりもずっと自信に満ちた表情を見せている。

はたして富樫の身に何が起きていたのか。本編では語られることのない裏側を描いているのが、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」で独占配信中の桜の塔アナザーストーリーだ。

本作は全3話によって構成。主に富樫を中心とした水樹班の日常が描かれている。

中でもほっこりさせられるのが、同じ水樹班の一員である轟啓一(駒木根隆介)とのやりとりだ。

キャリア組の富樫に対し、轟はノンキャリ。現場経験は轟の方が上だが、巡査部長である轟に対し、富樫はすでに警部補。先輩でありながら階級は下、そして今後確実に自分より出世するはずの轟は、本編でも富樫に対しておもねるような態度をとっていた。

2人のコミカルなコンビネーションは、このスピンオフでさらにパワーアップ。第2話では、2人が特製チャーハンの大食いチャレンジに挑戦する。

岡田自身、「撮影は本編よりもハードです」とコメントしていたが、山盛りのチャーハンをかきこむ様子は確かに大変そう。だけど、一生懸命チャーハンを頬張る富樫は愛らしく、その実直さについ富樫を応援したくなる。

恵まれた立場にいながら、それを鼻にかけることもなく、現場を貫きたいという富樫と、そんな富樫の青臭さを否定することなく、だけどいずれそうは言っていられなくなることを悟っている轟。

こうやって同じ釜の飯を食う仲間としていられる時間はごくわずか。そんな儚い予感が、微笑ましいはずの富樫と轟のやりとりに、かすかな切なさを染み込ませる。

男の友情に涙腺がゆるみがちな人にとっては、たまらないスピンオフとなっている。

◆スピンオフにしておくにはもったいない“重要エピソード”も

そして、全3話を通してより立体的に浮き上がってくるのが、富樫と爽の関係性だ。

漣と爽のあとをつけ、爽の実家の中華料理店「龍鉄」までやってきたり、爽とのデートの引き換え条件として、漣と対立する「薩摩派」にスパイとして潜り込んだり。まっすぐに爽を慕い続けた富樫。

なぜ富樫が世代も立場も違う爽に恋心を抱くようになったのか。まさに富樫にとっての“エピソード・ゼロ”と言える内容から、自らのキャリアをかなぐり捨ててでも爽のそばにいたいという向こう見ずな想いが、各話約10分という短いストーリーにぎゅっと凝縮されている。

特に本編を視聴しているファンにとっては、「あのシーンの前には実はこんなことがあったのか」という“回収”要素もたっぷり。

たとえば、第5話でいきなり「龍鉄」で働きはじめていた富樫。父・鉄朗(小松和重)ともすっかり打ち解けている様子に爽自身も驚いていたが、どうしてこんなに距離が縮んだのかも、『桜の塔アナザーストーリー』を観れば一目瞭然。

さらに、爽のデスクに放置されていたカビの生えたおにぎりなど、本編で登場したアイテムが効果的に用いられており、ささやかな感動を生んでいる。

どの回も必見だが、富樫が捜査一課を去る第3話はスピンオフにしておくにはもったいない重要エピソード。

唇をぎゅっと引き結び、目尻いっぱいにシワをつくって照れ臭そうに笑ったかと思ったら、ささやくような声で真剣に気持ちを伝えたり…。いつもの“ワンコ感”だけではない、富樫の男らしさや大人っぽさがふんだんにつめこまれており、そのギャップにドキッとさせられること必至だ。

『中学聖日記』(TBS系)や『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)などこれまでラブストーリーの相手役を演じるたびに評価を高めてきた岡田健史がその力量を余すことなく発揮している。

この5年の間に爽と富樫の間に何があったのかと気になるドラマファンはもちろんのこと、岡田健史ファンにとっても見逃し禁止の“神回”だ。

おそらく今後の本編では、漣への対抗意識にかり立てられ、権力争いに身を投じていくことで、純粋で正義感の厚かった富樫がどんどんダークな表情を見せていくのではないかと予想される。漣と爽との三角関係もこのまま決着というわけにはいかないだろう。

まっすぐな目をしていた若き日の漣が、桜の塔を登るうちに手段を選ばぬダークヒーローへと転じていったように、富樫もまた警察組織という伏魔殿を駆け抜ける中で、混じり気のない眼差しを失っていくのかもしれない。

そのときに、この『桜の塔アナザーストーリー』を見返せば、きっと本編の皮肉なシナリオにより胸が締めつけられることだろう。そして、屈託のない富樫がよりいとおしく思えるはず。

これからますますハードになっていくであろう『桜の塔』にとって、このスピンオフは貴重なオアシス。ちょっと癒し成分が足りないなと思ったら、いつでもTELASAから補給したい。<文/横川良明>

※配信情報:『桜の塔アナザーストーリー
動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」にて全3話独占配信中!