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WRC第4戦ポルトガル、多くの観客がコース脇で観戦!トヨタ優勝し、勝田貴元も4位で自身最高リザルト

WRC(世界ラリー選手権)2021年シーズンの第4戦「ラリー・ポルトガル」が開催された。

©TOYOTA GAZOO Racing

欧州各国ではワクチン接種が進み、まだ制限人数などの規制はあるものの、飲食店の営業、国をまたがる移動、イベント活動といった経済活動が日常に戻りつつある。

2年ぶりの開催となった今回のラリー・ポルトガルでは、多くの観客がコース脇で観戦し、コロナからの復活ぶりが感じられた。11月開催を予定しているラリー・ジャパンに向けて大いに勇気づけられる光景だ。

そんなラリー・ポルトガルの上位陣の最終結果は以下の通り。

©TOYOTA GAZOO Racing

1位:エルフィン・エバンス(トヨタ)
2位:ダニ・ソルド(ヒュンダイ)/1位から28秒3遅れ
3位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同1分23秒6遅れ
4位:勝田貴元(トヨタ)/同2分28秒4遅れ
5位:ガス・グリーンスミス(Mスポーツ)/同4分52秒7遅れ
6位:アドリアン・フルモ−(Mスポーツ)/同5分3秒4遅れ
7位:エサペッカ・ラッピ/WRC2クラス/同9分37秒2遅れ
8位:ティーム・スンニネン/WRC2クラス/同11分20秒0遅れ

優勝は、今季初勝利を飾ったトヨタのエバンス。ほかトヨタからは3位にランキングトップのオジェ、そして4位に勝田貴元が入った。勝田にとって自身最高のリザルトだ。

今回のラリー・ポルトガルは予想外のサバイバルラリーとなり、7位と8位にはひとつ下のクラスのマシンが入った。それだけに、勝田の4位入賞の価値は非常に大きいものだったと言える。

◆強さ発揮していたヒュンダイにアクシデント続く

今回、サバイバルラリーとなった要因が、今季初のグラベル(未舗装路)ラリーであったことと、道は狭いが速度が出せるコースレイアウトに多くの選手が苦しめられたこと。初日からそれらが直撃したのがヒュンダイ勢だった。

©WRC

初日の金曜日、SS1からSS8までステージがあるなか、ヒュンダイはSS1からオット・タナック、ティエリー・ヌービル、ダニ・ソルドがトップ3を占め、SS6までトップ3を譲らずグラベルラリーでの強さを見せつけていた。

じつは今年、タイヤが新しくなり、最上位のWRCクラスはフランスのミシュランタイヤからイタリアのピレリタイヤへと変更になった。ピレリが提供する新しいグラベルタイヤの性能をどこまで引き出せるかが速さのポイントだったのだ。

そこでヒュンダイは一歩先を進んでいた。というのも、ひとつ下のWRC2クラスは2018年からピレリタイヤを使用しており、ヒュンダイはWRC2クラスにもマシンを提供していたことでピレリタイヤの特徴を把握していた。その結果として、この週末もグラベルで強さを発揮していたのだ。

しかし、ヒュンダイの強さは意外なところから崩れた。SS7でヌービルはスピードが乗った左コーナーを曲がりきれずマシン右側を岩にぶつけてしまう。なんとかSS7は走りきったが、右リヤタイヤが外側に大きく曲がり、その後の走行は難しいとデイリタイアを選択。

また、ソルドは同じSS7走行中に左ヘアピンコーナーでエンジンストールしてしまい、そのタイムロスでトップから3位に順位を落とした。

©WRC

2日目の土曜日、次はヒュンダイのタナックを悲劇が襲う。

SS9からSS15まであるなか、タナックは2位のエバンス(トヨタ)に22秒4のリードを保ってSS13までトップを守る。しかし、SS14を走行中、前日のヌービル同様、左コーナーを曲がりきれずマシンの右側をぶつけた。そのままマシンを走行させるも、右リヤタイヤがステージフィニッシュまで持たず、途中でマシンを止めてデイリタイアとなった。

これでヒュンダイは2台が入賞圏外となり、トヨタは1位、3位、4位へと浮上した。ただ、トヨタもカッレ・ロバンペラのマシンにトラブルがあり、SS14に向かうことなくデイリタイアを選択。

また勝田は、SS14走行直後に「途中、路面の石を乗り上げる形でマシンが外側に膨らみ、右リヤをコース脇の木にぶつけてしまった」と危うい場面があったことをカメラマンに語っている。ダメージはボディパネルだけだったが、一歩間違えばリタイアもあり得ただけに、運も勝田に味方したようだ。

土曜日を終えて、1位エバンス(トヨタ)、2位ソルド(ヒュンダイ)、3位オジェ(トヨタ)となった。

◆優勝したエバンス、ラリーが通常に戻った喜びも語る

©TOYOTA GAZOO Racing

そして迎えた最終日は、SS16からSS20の5ステージ。完走が絶対目標のソルドが無理を避けたことで、エバンスは無理こそしないが攻めの姿勢を続け、余裕を持ったまま1位を守り、最後のパワーステージは5位で1ポイントを加算しての今季初優勝となった。

パワーステージのポイント狙いだったヒュンダイのタナックとヌービルはそれぞれステージ1位と2位を獲得し面目を保った。また、オジェはステージ3位、前日マシントラブルでデイリタイアしたトヨタのロバンペラがステージ4位だった。

トヨタより速さで勝っていたヒュンダイから1位と3位を奪った形に、トヨタチーム代表のヤリ‐マティ・ラトバラは、「本当に嬉しい勝利だ。エバンスは前回最終ステージで勝利を逃した。だが彼はモチベーションを切らせることなく、今週末は本当に堅実な走りを見せた。例えばタナック(ヒュンダイ)はエバンスより速かったが、大事なのは堅実な走りであり、ラリーを完走することだ。それが今週末のラリーだった。チームにとっても素晴らしい週末だった」と表彰式直後に語り、エバンスの走りとチーム全体の信頼が勝利を呼び込んだことを喜んだ。

©WRC

優勝したエバンスは公式会見で今季初勝利について聞かれ、「本当に嬉しい。あらゆる意味で楽なラリーではなかった。そして、ついにレッキもラリーも(週末の走行距離が新型コロナ以前の)フルレンジに戻った。(2年ぶりのフルレンジラリーは)各1日がすごく長かったね。この勝利が(2位だった)ラリー・クロアチアの埋め合わせにはならない。前回は前回、今回は今回だから。そして僕はハッピーだし、次に進むよ」と語り、ラリーが通常に戻った喜びと、常に前を向いている自身の姿勢を明かした。

©TOYOTA GAZOO Racing

こうして終わったラリー・ポルトガル。ドライバーズチャンピオンシップは以下の通りとなった。

1位:セバスチャン・オジェ/79ポイント
2位:エルフィン・エバンス/77ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/57ポイント
4位:オット・タナック/45ポイント
5位:カッレ・ロバンペラ/41ポイント
6位:勝田貴元/36ポイント
7位:ダニ・ソルド/29ポイント
8位:クレイブ・ブリーン/24ポイント

そしてマニュファクチュアラーズ争いは、トヨタが183ポイント、ヒュンダイ146ポイント、Mスポーツ64ポイントとなり、トヨタが1位につけている。

©TOYOTA GAZOO Racing

今回、自身最高の4位入賞を果たした勝田。その最終日の裏側について、チーム代表のラトバラが公式会見で語った。

「タカの週末は素晴らしかった。やれると思ったし、着実にステップを上がっている。じつは今朝、タカと話し合った。彼は土曜日からオジェと3位を争っていたが、最終日のオジェはより多くの新品タイヤを残していた。だから4位を守る走りを考えるべきだ、君の表彰台も時期にやってくるだろうと伝えた。そして彼は(自身で判断して)クレバーなドライビングに徹し、過去最高の4位を獲得したんだ」

完走することの重要性と、冷静に戦う相手との状況差を見据えることを学んだ勝田。今後も間違いなく才能を伸ばし続けるだろうと感じさせるエピソードだった。

次戦は第5戦「ラリー・イタリア」(6月3日〜6日開催)。今回と同じくグラベル(未舗装路)ラリーだ。

今回、ヒュンダイのほうが新しいグラベルタイヤへの対応準備が仕上がっていたことで速さが勝っていた。トヨタとしては、今回のラリー走行データを踏まえて、どこまで新しいグラベルタイヤの性能を引き出せるかが大きなポイントとなるだろう。

この先、サファリラリーと呼ばれたラリー・ケニア(6月24日〜27日開催)、ラリー・エストニア(7月15日〜18日開催)とグラベルラリーが続く。ヒュンダイ勢は今回の失敗を踏まえて、チーム戦略の修正をしてくるはずだ。

トヨタとしては、タイヤの能力を引き出してヒュンダイに並び、更には上回る速さを手にしたいところだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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