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トヨタ、WRC第3戦クロアチアで0.6秒差ワンツーフィニッシュ!オジェがドライバー首位に

WRC(世界ラリー選手権)2021年シーズンの第3戦「ラリー・クロアチア」が開催された。

©TOYOTA GAZOO Racing

2021年シーズンは、いまだ世界に影響を与える新型コロナウイルスや政情不安などにより今年に入ってからも開催スケジュールに変更があったが、ラリー・メキシコに代わって新たにカレンダー入りしたラリー・クロアチアは無事開催。

ラリー・クロアチア終了時での最新2021年シーズンカレンダーは以下の通りだ。(ラリー・フィンランドは、新型コロナ感染拡大で中止が決まったラリー・スウェーデンの代替開催地となり、変則的に年2回開催となっている)

第1戦:ラリー・モンテカルロ(1月21日〜24日)
第2戦:ラリー・フィンランド(2月26日〜28日)
第3戦:ラリー・クロアチア(4月22日〜25日)
第4戦:ラリー・ポルトガル(5月20日〜23日)
第5戦:ラリー・イタリア(6月3日〜6日)
第6戦:ラリー・ベルギー(6月24日〜27日)
第7戦:ラリー・ケニア(7月15日〜18日))
第8戦:ラリー・エストニア(8月13日〜15日)
第9戦:ラリー・ギリシャ(9月9日〜12日)
第10戦:ラリー・フィンランド(9月30日〜10月3日)
第11戦:ラリー・スペイン(10月14日〜17日)
第12戦:ラリー・ジャパン(11月11日〜14日)

こうしたなか開催された第3戦ラリー・クロアチア。上位の最終結果は以下の通り。

©WRC

1位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)
2位:エルフィン・エバンス(トヨタ)/1位から0秒6遅れ
3位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同8秒1遅れ
4位:オット・タナック(ヒュンダイ)/同1分25秒1遅れ
5位:アドリアン・フルモ−(Mスポーツ)/同3分9秒7遅れ
6位:勝田貴元(トヨタ)/同3分31秒8遅れ
7位:ガス・グリーンスミス(Mスポーツ)/同3分58秒8遅れ
8位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/同4分28秒2遅れ

今季2勝目を挙げたトヨタのオジェだが、この週末は波乱の連続だった。

まず、SS1の5.4km時点の右コーナーでいきなりコースオフ。危うくマシンごとコース下へと落ちそうになるが、なんとかコースに留まった。しかし、これで左リヤタイヤがホイールリムから外れるという状態になり、SS1はトップから6.5秒落ちでのラリー・スタートとなった。

走行後のオジェによると、路面が非常に滑りやすくなっていて左リヤタイヤがコース外に落ちたとのこと。このオジェとまったく同じコーナーでコースオフしてしまったのが、この日1番目に走行したチームメートのカッレ・ロバンペラ。

©WRC

こちらはオーバースピード気味にコースへ進入、そのままマシンを滑らせながらマシンごとコースオフして樹木に激突。ドライバーとコドライバーは無事だったが、マシンは大破し、ロバンペラのラリー・クロアチアはSS1で終了してしまった。オジェも同じようにリタイアする可能性があったこともあり、なんとかコース内に留まったのは不幸中の幸いだった。

初日を終えて総合1位はヒュンダイのヌービル、2位オジェ(トヨタ)、3位エバンス(トヨタ)、4位タナック(ヒュンダイ)、5位ブリーン(ヒュンダイ)と、トヨタとヒュンダイの戦いは互角で始まった。

◆リエゾン区間で一般車と接触事故も

2日目の土曜日、この日の注目は日本人ドライバー勝田貴元に集まった。

©TOYOTA GAZOO Racing

昨シーズンの最終戦、ラリー・モンツァのパワーステージで自身初のステージトップを獲得した勝田だが、このラリー・クロアチアのSS10とSS14でステージトップ。SS10は2位オジェに3秒4差をつける圧巻の走りだった。

この2本のステージトップ以外も好調な走りを見せ、1日目の総合9位から2日目は総合7位にまで順位を上げた。

そして、ラリー全体ではオジェが3本のステージトップを獲得して総合1位へ浮上。2位エバンス(トヨタ)、3位ヌービル(ヒュンダイ)、4位タナック(ヒュンダイ)と、トヨタ2台がワンツー体制となった。しかし、3位ヌービルは1位から10秒4遅れとステージひとつで逆転が起こる争いが続いた。

©TOYOTA GAZOO Racing

そして3日目となる最終日。この日はオジェとエバンスによるトヨタ内争いが激しくなる。

この日最初のSS17でエバンスがステージトップを取りオジェとの差を4秒2まで縮める。しかし、意外なトラブルが最終日のオジェを襲った。

SS17からSS18へと移動するリエゾン区間でオジェのマシンが現地の一般車に接触事故を受けてしまったのだ。右へ車線変更するオジェに右車線を走っていた一般車が後ろから突っ込むというものだった。

これでオジェのマシンは右側ドアを大きく破損。しかし、前後タイヤやサスペンションには大きなダメージはなく、その後のラリーは継続できた。初日同様に不幸中の幸いだったと言える。

しかし、マシンパフォーマンスに影響が出たのか、SS18でエバンスが逆転して総合1位へ。SS19もエバンスが1位を守り、オジェは3秒9差をつけられた2位で最後のSS20パワーステージを迎えた。

◆オジェ、0秒6差で逆転

こうして迎えたSS20。鬼神のような走りを見せたのはオジェだった。

©TOYOTA GAZOO Racing

初開催の難しいコースで躊躇なく全力で挑みステージトップを獲得。あとは最後を走行するエバンス次第だったが、エバンスは最後の最後にコーナーでマシンが外側へ横滑りして土手に引っ掛ける場面がありタイムを失い、なんと0秒6差でオジェが逆転。今季2勝目をあげた。

チームメート同士の激しいトップ争いだったが、ラリー後のオジェとエバンスは笑顔で握手を交わす。お互い最後まで全力で闘ったことが感じられる場面であった。

©TOYOTA GAZOO Racing

その雰囲気は、ラリー後のお互いのコメントからもうかがえる。

※セバスチャン・オジェ
「まるでジェットコースターのように、感情が大きく揺れ動いた週末でした。何よりも重要なのは、今朝のロードセクションでのアクシデントで、怪我をした人がいなかったことですし、私にとってはそれが最大の気がかりでした。

私のラリーはそこで終わってしまうのではないかとさえ思いましたが、クルマのダメージはそれほど大きくなく、競技を続けることができました。

あれだけのことが起きたので、優勝できるとは思っていませんでしたが、皆さんが知っているように私は決して諦めない男ですし、最後まで戦い続けようとしました。今週末、良い仕事をしていたエルフィンには同情していますし、特に今朝は強かったです。

しかし、我々もこの週末ペースは良かったのに、いくつか問題が起きその都度タイムを失いました。チームのために、今回も1、2で表彰台に立つことができて嬉しく思います」

※エルフィン・エバンス
「最後のステージでラリーをリードしていながら、総合2位で終わるというのは望んでいた結果ではありません。最後のステージでセブが本当に速かったのは事実ですが、私は最後のコーナーでミスをしてしまいました。とても悔しいですが、決して悪くない結果だと思いますし、チームにとっては非常に良いリザルトです。

チームはセブと私のためにとても良い仕事をしてくれましたし、今週末は素晴らしいクルマを用意してくれました。最初から最後まで全力で戦い、ラリーを楽しむことができました」

◆勝田貴元、3戦連続で総合6位

そして、チームオーナーである豊田章男氏からもチームに嬉しいコメントが寄せられた。一部紹介しよう。

※豊田章男氏
「WRC初開催のクロアチアでオジエ、イングラシア組が我々のチームに勝利をもたらしてくれました。セブ、ジュリアン、そしてチームのみんな、おめでとう! 二人はリエゾンを走っている時に事故に遭い、その後走りにくい状況に陥ったにも関わらず、諦めずに走り続けて勝利を手にしてくれました。

二人の走りに感謝したいと思います。最後まで勝利を争ったエルフィン、スコットの二人も素晴らしい走りでした。ワンツーフィニッシュをありがとう。

貴元はステージトップタイムを2回もとってくれました。WRCでのトップタイム、本当にすごいことです。先日、帰国した際の私からのアドバイスが役に立ったね…と言いたいところですが、努力を続けている貴元自身の成長の結果だと思います。次戦以降も楽しみにしてます。

序盤戦のカッレのコースオフにも驚きました。カッレもヨンネも無事で本当によかったです。ほとんど走れませんでしたが、学びの多いラリーになったと信じています」

©WRC

こうしてトヨタのワンツーで終わったラリー・クロアチア。ドライバーズランキングは以下のようになった。

1位:セバスチャン・オジェ/61ポイント
2位:ティエリー・ヌービル/53ポイント
3位:エルフィン・エバンス/51ポイント
4位:オット・タナック/40ポイント
5位:カッレ・ロバンペラ/39ポイント
6位:クレイブ・ブリーン/24ポイント
7位:勝田貴元/24ポイント
8位:アドリアン・フルモ−/12ポイント

そしてマニュファクチュアラーズ争いは、トヨタが138ポイント、ヒュンダイ111ポイント、Mスポーツ42ポイントとなり、トヨタが1位につけている。

©TOYOTA GAZOO Racing

今回、日本人ファンにとって嬉しいのは、勝田貴元が3戦連続で総合6位となり、2日目に2本もステージトップを獲得したことだ。

まだ3日間通じてのトップ争いには経験不足が否めないが、表彰台は十分あり得る実力がついてきた。とくにサーキット育ちのレーシングドライバーからラリードライバーに変更した勝田にとって、タイヤグリップの限界ギリギリを攻めるターマック(舗装路)ラリーはトップドライバーたちと互角のレベルになりつつある。

最終戦のラリー・ジャパンに向けて、今後も大いに期待が持てそうだ。

次戦は最終日の大ジャンプが人気の「ラリー・ポルトガル」。今シーズン初のグラベル(未舗装路)ラリーだ。トヨタのマシンがシーズンを通じて強さを示すことが出来るのか。このラリー・ポルトガルは大きな指針となるはずだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>