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トヨタWタイトルへ!世界ラリー選手権、最終戦はモンツァ 特殊な開催方法でコロナ対策

現地時間の12月3日~6日、WRC(世界ラリー選手権)最終戦となる第7戦「ラリー・モンツァ」が開催される。

11月に第7戦「ラリー・ベルギー」が準備され、このラリー・モンツァは第8戦の予定だったが、欧州で再び新型コロナウイルスの感染拡大が活発化したことでベルギーはキャンセルに。

そうして、一時中断という波乱や再スケジュールの紆余曲折があった2020年WRCシーズンは、このラリー・モンツァで締めくくられることになる。

ACI RALLY MONZA

第6戦がサルディーナ島で開催された「ラリー・イタリア」だったため、今回同じ国名となるイタリアの名前は使えない。そのため、開催地のモンツァから名前を取り、ラリー・モンツァとなった。

イタリア北部、ロンバルディア州に位置するモンツァは、イタリア最大の商業都市であるミラノの北東約15kmにある小さな市だ。

しかし、市の小ささとは裏腹にその名前は世界にとどろいている。世界中のレースファンに知られるF1イタリアGPの開催地がモンツァだからだ。1950年に始まった現在のF1の歴史で、1980年を除き70回ものF1開催を実現している。

そのモンツァの象徴的存在であり、今回のラリー開催の中心地ともなるのが、国立公園内にあるモンツァ・サーキット。1922年に世界で3番目の舗装された常設サーキットして誕生した。

ちなみに、世界最古の常設サーキットは1907年にイギリスでつくられたブルックランズ・サーキット(1939年を最後にレースは開催されていない)。2番目の常設サーキットは1909年にアメリカにつくられたインディアナポリス・モーター・スピードウェイ。1911年から開催され、今年佐藤琢磨が日本人として2勝目を挙げた世界3大レースのひとつ「インディ500」として知られるインディアナポリス500マイルレースの開催地である。

◆コロナ対策で、非常に特殊な開催方法

ACI RALLY MONZA

今回のラリー・モンツァは、新型コロナウイルス対策として非常に特殊な開催方法をとっている。

ラリー自体は木曜日から日曜日まで4日間開催されるのだが、土曜日以外はモンツァ・サーキットの敷地内ですべてのSS(スペシャルステージ)を設定。

モンツァ・サーキットはオーバルコースと現在F1で使用されているロードコースという2つのコースが組み合わされた特殊なレイアウトのサーキットで敷地面積が広い。本コースと敷地内の移動時に使われる未舗装のサービスロードを組み合わせることで関係者のみが滞在する閉鎖空間をつくり、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ施策をとった。

その結果総走行距離は短くなり、木曜日はSS1で4.33km、金曜日はSS2~SS6で69.61km、土曜日はモンツァ近郊の山道を閉鎖してSS7~SS9で126.95km、そして日曜日は再びモンツァ・サーキット敷地内のSS10~SS12で40.25km。4日間のSS総距離241.14km、全16のSSで競うこととなる。当然無観客ラリーであり、一般道使用も最小限にとどめている。

ALPHA TAURI

ちなみに、最終日最後のSS16を終えた後の表彰式はF1開催時と同じ表彰台を使用する。ラリードライバーにとっても、モンツァ・サーキットの表彰式は大いに記憶に残るものになるだろう。

なお、現地のロンバルディア州環境保護局の天気予報によれば、モンツァ周辺およびモンツァ近郊の山道はかなり冷えており、3日の予報は最低気温がマイナス1度、最高気温6度、一部で降雪。4日は最低気温3度、最高気温7度、一部で小雨か降雪。5日以後はさえらに天候が崩れる可能性があるという。

ACI RALLY MONZA

ちなみに、2日の時点ではモンツァ・サーキットも土曜日走行の山道も降雪の景色となっている。ただし、走行路面に雪が積もったり凍ったりするほどではなく、舗装路は滑りやすく、グラベル(未舗装路)は泥道状態というトリッキーなラリーとなりそうだ。

◆ダブルタイトルへ士気高まるトヨタ

この寒い天気とは裏腹に、最終戦のチャンピオン争いはドライバーズチャンピオンシップ・マニュファクチャラーズチャンピオンシップともに熱い戦いが予想される。

現在のドライバーズチャンピオンシップは、1位エルフィン・エバンス(トヨタ)/111ポイント、2位セバスチャン・オジェ(トヨタ)/97ポイント、3位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/87ポイント、4位オット・タナック(ヒュンダイ)/83ポイントと続いており、優勝ドライバーが25ポイント、最後のパワーステージ1位が5ポイント加算されることを計算すると、数字上ではこの上位4人にチャンピオン争いは絞られた。

またマニュファクチャラーズチャンピオンシップも、1位ヒュンダイが208ポイント、2位トヨタが201ポイントとほぼ互角。この最終戦ですべての勝負が決まる。

ACI RALLY MONZA

それだけに、トヨタ陣営の士気は高い。チーム代表トミ・マキネン、タイトルがかかるセバスチャン・オジェ、エルフィン・エバンスのコメントにも大いに意気込みが感じられる。

※トミ・マキネン(チーム代表)
「今シーズンの締めくくりとして、できればあと一戦ラリーをやりたいと誰もが思っていたと思います。この大事な一戦はファンの皆様、関係者の皆様のご支援により実現しました。チーム一同感謝申し上げます。

今回のラリーは、通常のWRCイベントとは少し違った形での戦いになります。山間部のステージは、全選手にとって初めての経験となるので特に難しいと思います。我々のドライバーはこのクルマでのターマックラリーの経験があまり多くありませんが、今週のイベント直前テストも含めできる限りの準備を進めてきました。

エルフィンとセブのどちらかがドライバーズタイトルを獲得することができそうですし、我々としては彼らを全面的にサポートします。マニュファクチャラーズタイトルについてもまだ獲得できる可能性があるので、ベストな結果を目指し最後までプッシュしなくてはなりません」

※セバスチャン・オジェ
「モンツァは新たな挑戦になるでしょう。再びクルマに乗り込み、タイトルを争う最後の機会を得られたことを嬉しく思います。家でシーズンの終わりを迎えるよりも、このように最後まで戦い抜くほうがいいのは間違いありません。

過去、このイベントに出場した経験はありませんが、ビデオの映像を見た限り、サーキット内のステージは最初のイメージほど簡単ではないと思いました。グラベルのセクションも少しあり、草や泥の上も走行しますが、ターマック用にセッティングされたマシンで走るのは簡単ではないでしょう。土曜日のステージは素晴らしい山道が舞台となりますが、天候次第では非常に難しいステージになるかもしれません。

ターマックは開幕戦モンテカルロ以降走っていなかったので、今週のテストはできるだけ多くの経験を積むためにも非常に重要です。失うものは何もないと思っていますので、プレッシャーは感じていませんし、できる限りの準備をして最善を尽くすのみです」

※エルフィン・エバンス
「サルディニア以降、我々は常に次に出るイベントの準備に集中してきました。できるだけ多くのラリーが開催され、出場できることを常に願っていましたので、モンツァにはポジティブな気持ちで臨めます。良い結果を残すことが必要だと理解していますし、最大の力を発揮する準備はできています。

主催者から提供されたビデオを見た限り、土曜日の山の上でのステージはとてもいい感じです。速くて流れるようなターマックのステージがいくつかありますが、この時期に走るのはかなり難しいかもしれません。このクルマでのターマックでの走行経験がやや不足しているのは確かですが、モンテカルロでは良いフィーリングでしたし、我々のクルマがターマックで速いことは知っています。

難しいのは、サーキット内のステージは山間部とは全く違うことです。ですので、良いフィーリングを見つけられるようにベストを尽くし、クルマを上手くセットップしなければなりません」

ドライバーズチャンピオンの争いには加わらないが、マニュファクチャラーズ争いは各チーム上位2台のポイントが加算されるので、トヨタ3人目ドライバーであるカッレ・ロバンペラの責任も重大だ。新人らしからぬ速さをもつロバンペラへの期待は大きい。

そして今回、日本人ドライバーの勝田貴元もラリーに参加する。かなり特殊なラリーとなるが、それは他のWRCドライバーも同じ。勝田の対応力に注目したいところだ。

ACI RALLY MONZA

各曜日の予定スタート時間は、木曜日のSS1は現地時間14時08分(日本時間22時08分)、金曜日のSS2は現地時間7時58分(日本時間15時58分)、土曜日のSS7は現地時間7時52分(日本時間15時52分)、そして日曜日のSS14は現地時間7時48分(日本時間15時48分)となっている。

果たして、トヨタはダブルタイトルを獲得するか。決戦のWRC最終戦がまもなく始まる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>