青学・原晋監督、きっかけは“日本の教育への疑問” 選手によって使いわける“ツンデレ育成法”
テレビ朝日が“withコロナ時代”に全社を挙げて取り組む初の試み『未来をここからプロジェクト』。
日曜あさの情報番組『サンデーLIVE!!』内で放送中の『TOKYO応援宣言』では、「未来は褒めることから」と題し、褒められて飛躍を遂げたアスリート、褒めることで選手を伸ばしたコーチの逸話など、スポーツにまつわる“褒めエピソード”を紹介している。
11月1日(日)放送の同番組では、大学駅伝界の名門・青山学院大学を率いる原晋監督を特集。
3大駅伝大会で11回の優勝をはたすなど、常勝チームを作り上げた名将に、こだわりの“褒める”指導法を聞いた。
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「私の考えは、強みをどういかしていくかという視点です。強み=褒めてあげること、これ大切だと思います」と語る原監督。
名将ならではの指導は、長所を伸ばすために選手をとにかく褒めること。
2020年の箱根駅伝では、区間終盤の勝負所で「区間新記録出るよ。3分ペースでいっても区間新だ!大幅更新だ!いいよ~すごいよお前!すごいっ!」と選手をべた褒めしていた。
他の大学では「がんばれ!」「あと少しだ!」など選手へ激を飛ばすことが多いなか、原監督の指導法は独特といえる。いったいどんな意図があるのだろうか。
「ツライときに『お前すごいよ。かっこいいよ』と選手に伝えると、ちょっとリミッターが切れていきなり走るんですよ。とくに駅伝における後半部分、疲れたときに『輝いてるよ、すごいなお前』が効くんです」
そこには、原監督ならではの伝え方があるという。
「ダラダラしゃべっても響かないんですよ。短くてキャッチーで、未来志向の言葉で『すごいなお前、輝いているよ、いけるよ、がんばってるな、みんなが見てるぞ』。こんな感じで話しています。
それと、語尾を上げるんですよ。これ、絶対違います。『すごいなー↘、がんばってるなー↘』ではダメなんです。上から目線で指導している感じでしょ? でも語尾を上げて『すごいなー↗、がんばってるなー↗』。それで、半音上げるんですよ。低音よりは高音の方がいいんです。半音上げて、言葉の語尾を上げるんです」
受けた相手がどう感じるか、細かなニュアンスまで考えて言葉をかけている。その指導は、選手によって使いわけることも。
「もう今は声かけて欲しくない、放っておいてくれって学生もいるんですよ。これは箱根駅伝、各種駅伝の大会当日もそうなんですけど、普段の生活でもあんまりガタガタ言ってほしくない学生もいます。
でも見てほしいんですよ。最近の学生は都合がいいんです。だからそういう選手には『見てるよ』っていう雰囲気を出して、通りすがりに『がんばってるな』と声をかけます。そのときは“ロー”な言葉なんですよ。低音でさっとさりげなく。まぁ“ツンデレ手法”ですね」
◆「どうせやるんなら、楽しくやった方がいい」
原監督がこのような指導法をはじめたのは、少年時代に日本の教育へ疑問を感じたことがきっかけだった。
「私自身もそうなんですけど、人格まで否定されるとテンション上がってきませんよね。どうせ同じことをやるんだったら、楽しくやった方がいいじゃないかっていうのが私の発想なんです。
私54歳になりますけど、当時の少年期は楽しくやったら否定される文化があったような気がします。でも当時から僕は『それっておかしいね』となんとなく感じていたんです。
どちらかというと日本の教育はマイナス面を補っていこうというもので、プラス面を言うと『なに勘違いしているんだ』という風に否定される文化。
指導者の立場としてそれはアカンと、やっぱりいいところはいい、悪いところは悪いという風に前を向いて未来志向でがんばっていこうという思想になっていくんですね。自分の経験から出たものだと思います」
「かける言葉によって学生がプラスアルファの力を出してくれる」と話す原監督。褒める指導で劇的に変化した選手について聞いてみた。
「一人目は、やはり初優勝、山の神・神野大地の走りですね。宮ノ下の交差点を曲がった所の坂が一番きついんですけど、『さぁ神野ここからだぞ、山の神になれるよ』と言ったら、いきなりターボエンジンのごとく登って行きました。スゴイですよ。これが山の神だと思いました。
二人目は秋山雄飛ですね。箱根駅伝の3区、2年連続たしか区間賞だと思います。『すごいよ秋山。お前、湘南の神になれるよ』と言ったら、いきなり走ったんです。テレビ中継では『明らかに腕の振りが変わった秋山』と言われていました。あの映像を見たら一発でわかりますよ。
三人目は、2019年の箱根駅伝4区で区間新記録を作った吉田祐也ですね。彼も最後のラスト3キロから、4区は坂なんですね、わりとラスト3キロは登って行くんですけれども、『すごいよ、かっこいいよ』と声をかけたら、ガッツポーズしながらラスト3キロを駆け抜けました」
選手のやる気を引き出す原監督の褒め言葉。それは、「その子のいい所をできるだけ見てあげよう」という気持ちから出たもの。
「正しく伝えて褒めるところは全力で褒めていく、そういう世界を作っていかないといかんと思います」
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系