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中村憲剛「本当に幸せでした」復帰戦で「あのまま時間が止まればいいのに」と感じた瞬間

2019年、39歳にしてサッカー人生初となる大けがを味わった中村憲剛(川崎フロンターレ)。

長く険しいリハビリを経て、2020年8月にピッチに帰ってくると、復帰戦でいきなりのゴールをあげた。

10月18日(日)の『GET SPORTS』では、ナビゲーターの中西哲生がリハビリ中と復帰戦直後の2度にわたって中村を直撃し、激動の1年間を振り返ってもらった。

◆コロナ禍でのリハビリ、支えてくたれた家族とサポーター

悪夢が襲いかかったのは、2019年11月2日(土)のことだった。

リーグ3連覇へ向けひとつも負けられないなか、迎えた広島との一戦。川崎1点リードで折り返した後半21分。

中村は相手陣内でプレッシャーを掛けるべく、前線から激しくチェック。ここで左ひざが相手選手のひざと交錯。その場に倒れ込んだ中村は、担架で運ばれ退場した。

『バキッ』とか『ゴリゴリ』とか経験したことのない音がしたから、これはヤバいなと思った。ロッカーに下がって時間が経ったら普通に歩けたので、内側側副靭帯とかだったらいいなと思ったんですけれど、夜MRIを撮りに行って前十字靭帯がなかったので『あぁ…』と」(中村)

診断の結果は「左膝前十字靭帯損傷」「左膝外側半月板損傷」。全治7か月の大怪我だった。

それからおよそ9か月後の2020年7月、復帰を目指す中村のもとを中西が訪ねた。

中西:「キャリアの末期にきたときに人生で一番大きい怪我をして、『なぜ今ここでこんな大きな怪我』っていうのは思いませんでした?」

中村:「今まで本当に大きな怪我をしてこなかったんですよ。顎を折ったくらいで、それも1か月半くらいで復帰しているし。こういう長期離脱ははじめてだったので、17年やってきて逆によくここまで怪我しなかったなって思いました。ただ、あそこでカットしに行ったのは全然後悔していません。あのプレーをやらないのは自分でもないですし

39歳という年齢で選手生命に関わる大怪我。当時、周囲からは引退の言葉もささやかれた。

「みんなに『結構やったよね』『もういいんじゃない?』って言われましたけれど、自分のなかではまったく引退という発想はなかった。怪我して引退したくないなというのはあったし、あの試合を最後にしたくなかった。

逆にキャリアの終盤で怪我するっていうのは何か意味があるんじゃないかなって。ネガティブなことよりもポジティブに捉えることの方が多かったですね」(中村)

復帰へ向け迷いはなかった。周囲のサポートを受けながらリハビリに取り組み、一歩ずつ着実に歩み出す。

©KAWASAKI FRONTALE

しかしそんな矢先、新型コロナウイルスの感染が拡大し、Jリーグ各クラブは活動休止を余儀なくされた。

「緊急事態宣言が出て練習場にも来られなくて、トレーナーにもドクターにも見てもらえない。Jリーグも再開が決まっていない。家でずっとひざと向き合っていました。あのときが一番キツかったです」(中村)

順調に見えたリハビリ生活から一転、先の見えない状況となり、不安にさいなまれた。そんななか、中村を支えたのは家族の存在だった。

「家族とずっと一緒だったのでフォローしてもらっていました。今まであんなに一緒にいたことなかったから。逆に家にずっと居たからよかったかもしれない。コロナで何もなくなったのはショックでしたけれど、逆に膝にとってはよかったので、あそこでいろんな意味で充電できたかなと思う」(中村)

さらにもうひとつ、不安を和らげてくれた存在が。

サポーターから『待ってます』とか『がんばってください』とか。当時の俺にはすごく励みになったし、自分がサッカー選手であるということを再認識させてもらった時期でもあった」(中村)

家族やサポーターの声援に支えられ再び歩み出すと、その後は順調にリハビリメニューをこなし、7月には全体練習にも合流。リーグ戦も再開し、復帰が現実味を帯びてきた。

©KAWASAKI FRONTALE

中西:「Jリーグが再開になったことについてはどうですか?」

中村:「僕らプロは再開しましたけれど、学生や子どもはいろんな大会が中止になりました。そういう意味では、自分たちがプロとして再開する意味を噛みしめてやらなきゃいけない。責任はあると思うし、全力でやらなきゃいけない。それがサポーターや見ている人たちの胸を打つと思う。

自分はまだ(ピッチに)戻れてないですけど、あそこに戻りたい。戻る姿を見せることで、たぶんいろんな人にいろんな感情が湧き起こると思う。だから(リハビリを)がんばれる。自分ががんばる姿を見せることで、同じ怪我した人たちや別の大怪我とかで長くサッカーができなかったり、スポーツができなかったり、自分の好きなことができない人たちに何かを見せられるのかなというのは感じています

中西:「自分に期待しますか?」

中村:「自分に期待しなかったら、このリハビリは耐えられなかったと思う。そこ(復帰した姿)を見たいっていう気持ちは自分のなかにもあるから、『がんばれ、俺』って思う。怪我したとき1回プレーは止まっているので、もう一度そこからスタートしたいなって思います。『何してくれるんだろう、俺』っていうのはある」

中西:「今日練習見ていても、左足でループ打ったりしていましたよね」

中村:「逆に今は楽しむようにしている。『サッカー楽しいな』と毎日思いながら練習しているので

中西:「もしかしたら怪我をする前の中村憲剛とはまた違った、よりアイディア豊富な中村憲剛が見られる可能性がある?」

中村:「見えているものが変わらなければいいと思うし。自分がどうプレーするか楽しみです」

長期離脱をしたことで気付かされた「サッカーを楽しむ」という原点。

ひざの怪我から10か月が経った8月。中村はついに今シーズン初のベンチ入りをはたした。

首位を走る川崎は、この日も危なげないゲーム運びで3対0と大量リードを奪う。そして迎えた後半32分、中村がピッチへ。スタジアムには万雷の「ナカムラコール」が響いた。

中村は怪我明けとは思えない姿で積極的にシュートを放っていく。すると相手ゴール付近でパスカットし、怪我をした左足でループシュート。見事、復帰戦でゴールをあげた。

試合後、中村は自らの左足をねぎらうかのように触り、サポーターたちに深く頭を下げた。

そして試合終了直後のインタビューでは、次のようなコメントを残した。

ひとりじゃここまでやってこられなかったなっていうのは、この10か月すごく感じました。ここに戻ってくるのがゴールじゃなくて、ここでチームに貢献することがスタートラインだと思っていたので

◆「『これは神様がいるな』って思いました」

復帰戦での劇的ゴールから1か月。再び中村のもとを中西が訪れ、心境を聞いた。

中西:「ここでゴール取る?って感じだったんですけど、ゴールは狙っていた?」

中村:「正直全然狙っていなかったですよ。ただ一発目にシュートを打ったときに、『これは点取れるかもしれん』と思いました。感触もよかったし、ボールが転がってきてパッと見たら、センターバックの選手がキーパーと並んでいたので、『上だな』って。感覚ですね。上だったら誰も届かないから、上に打てば入るなと思った」

中西:「前回ここで取材させていただいた日、左足でループの練習をしていましたよね。復帰戦でいきなりそれとほとんど同じ(シュート)を打ったので、びっくりしました」

中村:「正直、最初は強く蹴れなかったんですよね。蹴らざるを得ないっていうのもあったし、
『左のループを決められたらカッコよくね』って自分のなかで思いながら」

中西:「ループって軌道がゆっくりじゃないですか。そのときは時間がゆっくり流れていましたか?」

中村「こんなことあるんだなって。復帰戦が(ホームスタジアムの)等々力で。自分が点取るなんて考えられないですよ。それが現実で起こったので『これは神様がいるな』って思いました

中西:「よろこんでいるサポーターを見てどう思いましたか?」

中村:「自分もこの瞬間を待っていたし、サポーターの人たちなんてもっと待っていてくれたと思う。メッセージもくれていましたし。5千人でしたけど、映像を通じて多くの人が見てくれたと思うので、鳥肌が立ちましたね」

中西:「試合終了後にひざを触るシーン。あれは何を(思って)?」

中村:「労ったというか、『よく戻ってきてくれたな』っていうのはあった。上手くいかない時間もリハビリのなかにあったんですけど、そのときにはじめて自分の膝の状態を気にかけましたし、そこから戻ってきて、何より無事に終われたことがよかったなとあの日は思いました」

中西:「怪我で苦しんでいる人たちにも勇気を与えられるようなゴールだったと思うんですけど」

中村:「それがこのリハビリを乗り越えるうえで、ひとつの大きなモチベーションでもありました。『39歳でもスゲー!』って言ってもらえるような戻り方をしたかったので、すごくうれしかったですね。言えるもんね『治るよ』って、『大丈夫だよ』って。『39歳でもいけたんだから!大丈夫』って言えます

中西:「復帰後の景色が楽しみだって言っていましたけど、景色は楽しめましたか?」

中村:「『あのまま時間が止まればいいのに』って帰りながら思っていましたからね。それくらい本当に幸せでした。あんまりそういう気持ちになったことないので」

中西:「次の目標は何かありますか?」

中村:「2019年はリーグ3連覇を逃して自分も最後怪我をして悔しい思いがあるので、やっぱり奪還したいですし、今のこのチームで優勝したい。そこにしっかり自分が役割を果たせるように絡むというのが今最大目標です」

激動の1年を乗り越え、10月31日(土)には40歳を迎えた中村憲剛。節目となる試合でバースデーゴールを決め、その翌日の11月1日(日)に、今季限りで引退することを発表した。この先の試合で、どんなプレーをみせてくれるのか。

番組情報:『GET SPORTS

毎週日曜日夜25時25分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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