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世界王者ネイサン・チェン、異例のシーズン初戦へ。コロナ禍の生活、そして大学休学の理由を明かす

いよいよ、本格的なシーズン開幕となる「フィギュアスケート・グランプリシリーズ」。今年も日本時間の10月24日(土)よりはじまる「アメリカ大会」から、世界のトップスケーターたちの戦いが幕を開ける。

初戦の「アメリカ大会」には、グランプリファイナル3連覇中のネイサン・チェン(アメリカ)が登場。新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間を経て、今シーズン初戦を迎える。

9月22日(火)にCSテレ朝チャンネル2で放送されたスポーツ番組『私が今やるべきこと ~フィギュアスケーターたちの2020~』では、ネイサン・チェンにリモートインタビュー。テレ朝POSTでは番組未公開パートを加え、前後編の2回にわけてこのインタビューの模様をお届けする。

前編となる今回は、コロナ禍でのアメリカでの過ごし方や大学休学について聞いた。

◆「あれやこれをやっておけば良かった」と後悔したくない

――カリフォルニアでの状況を教えてください。ロックダウンはありましたか? 滑ることはできましたか?
ネイサン・チェン(以下、チェン):いいえ、ロックダウン下だったので。僕がカリフォルニアに戻ってすぐにすべてのリンク、すべてのジムが閉鎖されました。

リンクの再開までにかなりの時間がかかり、本当にここ最近、1カ月ほど前にようやくリンクが完全に一般開放されました。(9月4日時点)

ですが今また(コロナの)感染者数が増えているので、いろいろなところが再閉鎖しています。アメリカはコロナウイルスの対応があまりうまくいっていません。だからまだまだたくさんの感染数があり、状況は一進一退です。

――ステイホーム中は何をしていましたか? 何か新しいことをはじめましたか?
チェン:最初にカリフォルニアに戻ったときは、まだ学校の授業が数週間分残っていました。だからその勉強をしていて、オンラインで大学2年目の授業を終えました。そのあとはたいしたことはしていません。

主に友達や家族に電話したり、もう今となっては何をしていたか、あまり覚えていませんが、ほとんど家にいました。リラックスして、ゆっくり過ごしていました。テレビや映画を見たりしていましたね。

――いつからいつまで、どれくらいの期間スケートが滑れなかったのですか?
チェン:おそらく7月はじめくらいから氷上練習ができたと思います。約3カ月間氷上練習がありませんでした。

――そこまで長期間、氷上練習をしなかったことはありましたか?
チェン:オリンピックの1年前にお尻のケガをしたので半年間滑ることができませんでした。それ以外だと、今回が一番長い期間になると思います。

――今回は健康なのに滑れなかったというのはどんな気持ちでしたか?
チェン:ちょうどシーズン終わりに起こったことだったので、少し救われたと思います。もしこれがシーズンはじめに起こっていたら、試合に出る機会が失われて、きっと僕は少しガッカリしたでしょう。

でも今回はシーズン終わりに起こったことなので、スケーターたちはみんなかなり疲れていたと思いますし、僕たちの何人かはいくつかの小さなケガを抱えていたり、痛みがあちこちにあったので、リカバリーの時間が与えられたことは実はとてもいいことでした。

とはいえ、思ったより長期化したので、「いつまた(滑ることが)許されるのだろう」と疑問に思いました。今回は終わりがなく、いつすべてが収束するのか、いつまた滑る機会が訪れるのかがまったくわかりませんでした。連盟の人たちにも話を聞きましたが、もちろん彼らも何も答えを持っていませんでした。それが一番つらいことでしたね。

◆スケートに専念するため大学休学

――大学の方はどうすることにしましたか?
チェン:今年はすべてがオンライン授業なので、1年休学することに決めました。なぜなら僕は同じ経験ができないと感じたからです。僕が大学に行きたかったのはもちろん教育のためですが、同時に学生として、フルタイムの学生として経験できることをしたり、新しい人に会ったり、スケート界以外の人々と交流したかったんです。
でもすべてがオンラインとなるとそれはかなり制限されてしまいます。だから少し(学業から)離れて、スケートに集中することに決めました。多分オリンピックまでそうするでしょう。

――それはあなたの元々の計画でしたか? それともコロナの影響で計画を変えたのですか?
チェン:それについては半々でした。オリンピックが近づくにつれ、とくに今はもう(オリンピックまで)約1年、1年半後なので、その方が賢明だと思いました。(学業から)離れて、スケートだけにもう少し集中した方が賢明でした。

でも同時に僕はスケートと学業の両方でうまくやっていました。2つを両立させる方法を学んでいたと思うので、両立することにも前向きでした。最終的にコロナがその決断を楽にしてくれ、僕はここに残ることに決めました。

◆「オリンピックは唯一これまで僕がいい戦いができなかった試合」

――ラファエルコーチと離れて、一緒に練習できない環境でも優勝を重ねましたが、大変なこともあったでしょうね?
チェン:ラファはとてもいいコーチで、彼のトレーニングの方法は、必ずしも毎日毎分、生徒に何をしろと指示するものではありません。彼は大まかな方針だけを与えて、あとは自分のことは自分でやって、責任も自分で負います。

僕は子どものころから彼とやってきたことで、そういったことはすでに学んでいたので、彼から離れる移行期間も思っていたほど実際は大変ではありませんでした。なぜなら僕はすでに氷上で自分のやるべきことをやる方法を知っていたからです。

時々、技術などが変わるときに、少し不安定になったりするので、そういうときにはコーチがいた方がいいです。

自分で何がおかしいのかを見極めるためにこのジャンプを10回跳ぶより、彼がそばにいてくれた方がその過程をより早く乗り越えられて有益です。

彼は僕が1回跳んだだけで何が間違っているのか教えてくれるので、ジャンプを修正するのがずっと楽になります。

――大学を休学する理由のひとつは、オリンピックに専念するためですか?
チェン:オリンピックにも関係しています。もちろん僕の今の目標は可能な限り、すべての試合に出場しつづけることですが、オリンピックは唯一これまで僕がいい戦いができなかった試合です。

だから少なくともオリンピックの舞台で戦うためにベストなポジションに自分を置けるようにしたいです。その先はなるようにしかなりませんが、「あれやこれをやっておけば良かった」と後悔したくないんです。

次回の後編では、チェンが今シーズンの新プログラムや欠場する羽生結弦について語る。

 

※番組情報:『フィギュアスケート・グランプリシリーズ2020「第1戦・アメリカ大会」』
10月24日(土) あさ8:05~「男女ショート」 CSテレ朝チャンネル2
10月24日(土) 深夜2:55~「男女フリー」 CSテレ朝チャンネル2