テレビ朝日新人アナが振り返る、コロナ禍で行われた新人研修。「クローゼットで発声練習しました」
安藤萌々、佐々木一真、佐藤ちひろ、渡辺瑠海。――2020年4月にテレビ朝日に入社した新人アナウンサーです。
オリンピック・イヤーという記念すべき年に華々しく入社…だったはずが、冬から春にかけての新型コロナウイルス感染拡大により状況が大きく変わった4人。
しかし、この2020年という“特別な年”に新人アナウンサーになったことは、4人のこれからの社会人生活のなかで切っても切れない大きな経験になることでしょう。
すでに地上波放送をはじめさまざまな番組でアナウンサーとしてデビューしている4人ですが、例年とは違う史上初の“リモート研修”はどのように行われ、どのような苦労があったのか。4人に話を聞きました。
◆卒業の“節目”がないまま社会人に
入社をひかえた2月から3月。日に日に新型コロナウイルスをめぐる社会全体の状況が変わっていくなか、新人アナたちはどんな心境だったのでしょうか。
学生時代は“バックパッカー”として世界中を旅して巡った経験もあるという佐々木一真(ささき・かずま)アナは、次のように話します。
佐々木アナ:「例年2月にはテレビ朝日系列の新人アナウンサーで研修が開かれるのですが、その研修も予定より短い日程で終了してしまいました。2月から3月にかけて、本当に日に日に緊張感と不安が増していった印象です」
そして、「3月に予定していた卒業旅行に行けなくなり、学生生活の最後を楽しめませんでした…」と振り返るのは、“瑠璃色の海”が名前の由来だという渡辺瑠海(わたなべ・るみ)アナ。
大学時代は体育会ゴルフ部に所属していたという安藤萌々(あんどう・もも)アナも、「私も卒業旅行に行けなくなり、卒業式もなくなってしまい、“節目”というものがないまま社会人生活が始まることに不安がありました」と、部活動に精を出した学生生活の締めくくりが不完全になってしまったことを残念そうに語ります。
一方、マイペースかつ大胆さも持ち合わせていると言われる佐藤ちひろアナは、「私は、新型コロナウイルスの不安はありながらも、これからどんな生活が始まるのかなってワクワクした気持ちもありました」とのこと。
「これからどうなるのだろう」という不安と、「これからどうなるのだろう」という希望。過去に誰も経験したことのない状況での入社ということで、それぞれ同じところもあれば違うところもある、複雑な心境であったことがうかがえます。
◆自宅での発声練習で苦労。家族からクレームも…!?
そうして始まった新人アナウンサーとしての社会人生活。
4人は、話し合いも重ねながら、早い段階で前向きな気持ちを持つようになったといいます。渡辺アナは話します。
渡辺アナ:「もし自分が来年入社だったとしたら、今は大学生をやっていることになります。学生としてコロナ禍の状況にいるのと、テレビ局の一員として、ひとりのメディア人として報道にも携われている状況にいるのとでは、まったく違うと思ったんです。変化に対応し、意識を変えていかなければと感じました」
しかし、そんな気持ちとは裏腹に、当然のことながら研修が“リモート”であることによる弊害も出てきます。そのひとつが、発声練習。
オンラインで繋ぎながら発声練習をした場合、大きな声では音が割れてしまったり、また教える先輩アナウンサーにとっても細かい発音が聞き取れなかったりと、問題は絶えないそう。安藤アナは、「私は“音に芯がない”というのが課題なのですが、回線を通すと芯もなにもなくなってしまって…」とその苦労を振り返ります。
また、自宅で発声練習をするとなると、大きな声が“近所迷惑”になってしまわないかという不安も…。それぞれ、自宅では「遅すぎず早すぎない」時間に発声練習をしていたといいますが、佐々木アナはこんな工夫もしたそうです。
佐々木アナ:「先輩に、『布団をかぶって発声すると、大きい声を出しても外に漏れる音をかなり抑えられる』や『タンスの中は服が声を吸収してくれるからいいよ』と教わったので、布団やクローゼットにこもって発声していました(笑)」
新人アナにとって、入社後すぐは“声の基礎”をつくる大事な時期。しっかりとした発声練習が不可欠ななか、自宅トレーニングはとくに大変だったようです。
また安藤アナには、まさに“リモート研修ならでは”のこんなハプニングが起きたそう。
安藤アナ:「いろんな役になりきってテキストを読む研修があったのですが、私はとても声の高い“萌え系のキャラ”という設定で本読みをしていました。私は実家に住んでいるので、そのとき隣の部屋から弟が『うるさい!』って入ってきたんです(笑)。弟はちょうど大学のオンライン授業を受けていて、『萌えボイスしか聞こえないんだけど!』と怒られてしまいました…」
さらに、その一部始終はオンラインで研修メンバーにも見られていたとのこと。安藤アナが思い出して恥ずかしがるなか、渡辺アナは「面白かったですよ。安藤が『もうちょっとで終わるから!』って言っていて(笑)」と楽しそうに振り返っていました。
◆先輩アナにとっても“初めて”のリモート研修
このように、史上初の“リモート研修”に臨んだ新人アナですが、新人を迎える先輩アナたちにとってもリモートで研修を行うというのはもちろん初めてのこと。
新人アナ4人は4月からすでにデビューしており、それぞれ番組や取材に出たり自宅でテレワークしたりとスケジュールも異なるなか、全員が参加するオンライン研修だけでなく週に1回ずつのリモート個別研修も開かれるなど、一丸となって“今できること”に最大限取り組んだといいます。
佐々木アナ:「今年は、今できることを考えようと、例年以上に“知識面”の強化に力が入れられたと聞きました。地名やなじみのないスポーツなど、知識面・ソフト面の強化を重点的にしてくださったのは、僕たち新人にとってすごくありがたかったです」
佐藤アナも、「発声や声のことは基本としてもちろん、(知識面では)難読地名や一般常識などのテストもたくさんつくってもらえました。本来自分たちで身につけるべき部分に関してのフォローもあり、すごく嬉しかったです」と振り返ります。
また、先輩や同僚たちにはなかなか「会えない」、「近づけない」、「(直接)話せない」状況が続くなかでの“番組デビュー”もあり、話を聞いていると、当時の不安や緊張を思い出して思わず目が潤む瞬間も…。
そうしたなか、先輩たちから仕事のことだけでなく「最近どう?」などと“気にかけてもらえる”ことそれだけでも大きくモチベーションが上がっていったといいます。
◆「あの時代に入社したからこそ…」と思えるように
そして、多くの企業の新入社員は通常、研修の後には一緒に食事などに出かけお互いの頑張りを労うものですが、今年はそれもできませんでした。
そこで新人アナ4人は、リモート研修が終わった後には同期の“トークルーム”でいつも顔を見せ合って電話していたそう。リモートだからこそコミュニケーションは多くなったようで、同期の絆はむしろ強くなっていることがうかがえました。
先輩アナからの助言もあり、「悩みはもちろんたくさんありますが、悩み抜いてたどり着いたところが“正解”だと思うので、今はむしろたくさん悩んでいきたいと思っています」と、大変だった入社からの約3カ月を振り返る新人アナたち。
最後に、福島県南相馬市出身の佐藤アナは次のように話していました。
佐藤アナ:「私は、中学1年生のときに東日本大震災で被災しました。当時の復興ボランティアなど、震災のときの経験がアナウンサーを目指したきっかけのひとつであり、9年以上経った今、私はアナウンサーという仕事に就くことができています。
今年、このコロナ禍のもとで社会人になったからこそ、何か(社会人・アナウンサーとして)また別の一歩を踏み出せる気もしているんです。それが何なのか今はまだわかりませんが、きっかけはどこかに転がっているのだと思います。
振り返ったとき、『あの時代があったからこそ、あの時代に入社したからこそ、私は今こうなれたんだな』と思えるよう頑張っていきたいです」
<構成:宇佐美連三、宍倉一誠>
※アナウンサーズ配信情報:「女性アナウンサ―ゆかた壁紙コンテンツ2020」
こちらのコンテンツは、2020年9月末までの配信です。
登場アナウンサー:大木優紀、並木万里菜、斎藤ちはる、安藤萌々、佐藤ちひろ、渡辺瑠海