遠藤憲一、新型コロナによる“自粛生活”で「少し太って心配なこと」海外ドラマ&料理にハマり…
新型コロナウイルス感染拡大防止のための様々な分野での自粛要請がつづいている。テレビや映画の撮影をはじめ、イベント、舞台公演も全面的にストップという、かつてない事態に。
極悪人から優しいお父さんまで幅広い役柄を演じ分け、バラエティ番組でもユニークな天然キャラで引っ張りだこだった遠藤憲一さんも、これだけ長い期間、撮影がないというのは、20年以上なかったことだという。
連日のように撮影、収録に追われていた緊急事態宣言以前とは、まったく違う今の生活を聞いてみた。
※今回、新型コロナで“自粛生活中”の遠藤さんの取材を行い、2017年7月のロングインタビューと合わせて構成したものです。
◆料理にチャレンジ、海外ドラマの一気見にもハマって
新型コロナウイルスがなければ、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(フジテレビ系)が4月14日(火)から放送スタートするはずだった遠藤さん。
このドラマでは久々にバリバリの悪役。悪質な乗っ取りを行う運送会社のワンマン社長で、かつて乗っ取った運送会社の社長夫婦を自殺に追い込んだことから復讐(ふくしゅう)のターゲットとなる役どころ。近年はバラエティ番組への出演がきっかけで、鋭い眼光とコワモテからは想像もできないユニークなキャラが注目を集め、愛嬌(あいきょう)のある役が多くなっていた遠藤さんにとって久しぶりの悪役。
「悪役もそろそろやりたいと思っていたから、うれしい。でも、最近は自分でも信じられないくらい小学生が慕ってくれるようになっていたんだけど、これを見たら怖がってドン引きされるかもしれない(笑)」
-放送が延期になり、今は撮影が止まっていますが、どんな風に過ごされていますか?-
「今は、ただただ終息を願いながら、ずっと家で過ごしているよ。撮影は止まっているけど、ドラマの台本はつぎつぎと届いているから、撮影が再開したときのために、そのセリフを覚えるようにしたりしてね。
それに撮影は延期になっているけど、来年の企画もいくつかあるから、その原作本を読んだりしている。
あと、夜は周りの人が面白いと言っていたアメリカのドラマ『ブレイキング・バッド』をシーズン1から5まで一気見している。見始めたら面白くて止まらなくなっちゃった。時間があるときにしかドラマの一気見はできないからね。想像より斜め上を突き進んでいく展開で、刺激にもなるし」
※ドラマ『ブレイキング・バッド』
「テレビ界のアカデミー賞」と言われるエミー賞で、2年連続で「ドラマ・シリーズ作品賞」を獲得した米人気ドラマ。余命わずかと宣告された高校教師が家族に財産を残すために、化学の知識をいかし、麻薬の精製という危険な副業に乗り出すことに…。
-お料理もされているそうですね-
「たまにね。シリアルや簡単なレトルトやインスタント麺だったりするんだけど、朝と昼は自分で適当に作って、夜は女房と一緒に食べているよ。
今はずっと家にいるから、食事が終わった時点で、『次は何を食べようかな?』って、食べることだけが楽しみ。
ご飯も炊くから、毎回上手に炊けたか気になるようになった。うまくいったときにはうれしい。
よく食べてよく寝るようになったから、少し太っちゃった(笑)。
途中で止まったままのドラマの撮影が再開したら、すでに撮ってある部分とつながらなくなると困るからね。これ以上太らないように気を付けないと!」
◆声をかけられることが多いのは…
ヤクザから茶目(ちゃめ)っ気タップリのお父さんまで幅広い役柄を演じ分ける遠藤さんだが、やはりユニークなキャラが人気のよう。
「今はできないけど、まだ旅行に行けていたときに旅先で出会う外国の方からはよく『「民王」や「ドクターX」を見ています!』って声をかけられることが多かったので、あれは万国共通の面白さがあるんだなって(笑)」
※ドラマ『民王』(テレビ朝日系)
内閣総理大臣である父(遠藤憲一)とその大学生の息子(菅田将暉)が、ある日突然、互いの「心」と「からだ」が入れ替わってしまったことで巻き起こる騒動を描く。
-『民王』では、パンツ一丁でメソメソ泣くシ-ンなど、これまでのイメージとのギャップも話題になりました。エンディングのダンスシ-ンも大人気で-
「あれは俺だけNG出して何度も撮ったんだよね。俺はああいうのを覚えるのがすっげぇ遅いんだけど、女房はすぐ覚えるの。
だから家で練習するしかないじゃん。女房にすごい怒られてマジギレされた。『だから何で?右からなのに!』なんてさ。そういうのは厳しい人だからね」
-奥様の指導がなければ覚えられなかった?-
「うん、覚えられない、ホントに。コツがわからない」
-リズム感も良くてノリノリ、満面の笑顔で踊っていると思っていました-
「覚えきっちゃうと、楽しいんだよね(笑)。でも、それまでがすごい時間がかかる」
-セリフ覚えは?-
「すごい時間がかかる。だからその作業が苦しいけど、こればかりはやらないと。人の何倍もやらないと覚えられない。
みんなは例えば前日という人もいるし、前々日という人もいるけど、そんなんじゃ間に合わないから、台本をもらって読んだ翌日から、もう覚えはじめる。
覚えて、気持ちのなかに落としてなめらかにさせていく作業、深くしていく作業が一番大変。でも、ちゃんと覚えきっていないと、現場で当日にガラッと変えられてもできなくなるし、ただ覚えたことを言うだけになっちゃうからね」
-真面目ですね-
「うん、真面目。臆病なんだと思う。好きじゃないんだよ、そういうお稽古ごととか、何度も繰り返すことは大嫌いなんだけど、ちゃんとやれるようにするためにはこの形しかできないと思っているから…。基本は人より何倍もやっていると思うよ。練習みたいなのはね」
セリフ覚えも何でもすぐにできてしまう天才肌の人だと思っていたが、実は真面目な努力家だったということは驚きだった。自粛期間延長でおうち時間が多くなった今、ぜひ見て欲しい出演ドラマを遠藤さんに聞いてみたところ、『民王』だそう。奥様に怒られながら覚えたというエンディングのダンスシーンも必見。
◆犬嫌いだった遠藤憲一が愛犬家に!
一見コワモテの遠藤さんが優しい人だということがわかるエピソードがある。1997年、犬好きの奥様が生後3か月のマルチーズ“まめ”ちゃんを飼うことになる。その1年半後には“エレキ”君も加わり、慣れない2匹の世話に悪戦苦闘することに。
「俺は中学生のとき、犬に追いかけられて噛まれたことがあって、トラウマになっていたから犬は嫌いだったんだよね。それなのに、ある日帰ったら家にいるからさ、最初は『え-っ!?』って思ったけど、情が移るし可愛くなるよね」
-飼いはじめた頃は、「女房には懐いてるんだけど、俺にはダメなんだ」と言っていましたね-
「そう。エレキはずっと俺には『ウーッ!』て唸ったり、吠えたりしていたからね(笑)。慣れるまで結構時間がかかった。家に来てすぐに電気のコードを噛んじゃったから、名前をエレキって付けたんだよね(笑)」
2005年頃からは、まめちゃんとエレキ君と一緒に女性誌などに取り上げられることも多くなり、愛犬家として知られるように。
-まめちゃんとエレキ君と一緒の写真も話題になりました-
「周りからは“世界一マルチ-ズが似合わない男”なんて言われたけどね(笑)」
2007年、まめちゃんが「免疫介在性血小板減少症」(免疫機能が自身の血小板を破壊してしまい、さまざまな症状を示す病気)を発症したことをきっかけに、9年間にもおよぶ2匹の介護生活がはじまったという。当時、奥様が撮影した映像には、遠藤さんが衰弱したまめちゃんをそっと優しく抱いて水をあげたりして介護する姿が残されていた。
-余命宣告を受けた後、家で献身的に介護もしていましたね-
「うん。女房があんなに克明に撮影していたとは思わなかったから驚いたけどね。『一緒に生きてきたんだなあ』って思った。
病院は病院で先生もちゃんとしてくれるんだけど、ずっとそばに付いてはいられないじゃない?他の動物たちもいるからね。
それにまめのときに、あとどれくらいと余命を言われてから相当延びたからね、寿命が。
だから、エレキも家に帰ったらもう少し生きられるんじゃないかなと思って連れて帰ったんだけど、案の定数カ月延びたからね。
飼っている本人が後悔しないようにしたほうがいい。やり尽くしたっていうところまでね。だから後悔みたいなのはない。生き物の命はすごいって教えられた。女房は24時間ずっとだから大変だったけどね。
女房と犬たちの関係を見ると、『あと数日ですよ』って言われていても、数か月生き延びたし、女房の愛情が犬たちにも伝わるんだなあって思った」
2014年1月にまめちゃんが16歳で、2016年2月にエレキ君が17歳で天国へと旅立った。家族で看取(みと)ろうと決めて24時間介護しつづけた奥様と遠藤さんの夫婦の絆。恐妻家として知られる遠藤さんだが、奥様のことを話す表情はとても優しくて愛妻家そのもの。そんな遠藤さんが久々に挑む悪役ぶりも楽しみ。(津島令子)