若手実力派俳優・中山麻聖、水谷豊監督作品への出演が俳優としての転機に「一個深いところに…」
2012年、父・三田村邦彦さんと父子役で共演した『アノソラノアオ』で映画初主演を果たした中山麻聖さん。
2014年には特撮テレビドラマ『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演。2015年には、テレビアニメ『牙狼-紅蓮ノ月-』(テレビ東京系)で声優にも初挑戦。
そして2019年、2本の主演映画、『轢き逃げ 最高の最悪な日』(水谷豊監督)と『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』(雨宮慶太監督)が公開され、若手実力派俳優として話題に。
◆人気シリーズ主人公に抜てき「飛び上がるほどうれしかった」
2014年、麻聖さんは、オーディションを経て、特撮テレビドラマ『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』の主人公・冴島雷牙役を演じることに。
※ドラマ『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』
牙狼(GARO)シリーズの第4期テレビ作品。この世の闇に潜む魔獣「ホラー」を狩ることを宿命付けられた「ガロ」の称号を持つ若き魔戒騎士・冴島雷牙の活躍を描く。
-冴島雷牙役に決まったと聞かされた瞬間は?-
「牙狼シリーズはずっと見ていたので、飛び上がるほどうれしかったです。でも、それと同時に、はたして自分につとまるのかと思うと、とてつもない不安に駆られました」
-人気シリーズですからプレッシャーもかなりあったでしょうね-
「はい。冴島の名前を継いでいるので、どこの部分を引き継いだら良いのか、どこの部分を新しく雷牙として作っていくのか、悩みました」
-特撮シーンが多いので、撮影のときにはどんな映像になるのかわからなかったと思いますが-
「そうですね。いろいろ驚くことばかりでした。もちろん現場でも説明をされるんですけれども、実際に見てみると、想像していたのをはるかに超えた映像になっていたりして」
-牙狼シリーズといえば、激しいアクションシーンも見どころですね-
「格闘シーンやワイヤーアクションは初めてだったので、4か月ぐらい基本的なアクションの練習をしてから撮影に入りました」
-白い衣装が似合ってカッコ良いですね-
「ありがとうございます。あれは作るのに型紙からスタートしているので、衣装合わせも8回以上あったと思います。1回作って、ちょっと違ったらもう1回という感じで、何度も呼ばれて作ったんですよね」
-あの衣装でアクションシーンというのは大変だったのでは?-
「はい。アクションシーンもほとんど自分でやったんですけど、重いので、布団をかぶって動いているような感じでした(笑)。
それに、『白コートはアクションするときには汚しちゃいけない』って言われていたので、絶対に汚さないように気を使いました。
『白コートは絶対に汚れないものなんだ』っていう監督の意識があったので、なるべく両手で裾を持って歩いていましたし、撮影じゃないときには、汚さないように脱いで置いておくとか…当たり前のことなんですけど、常に意識していました」
2019年には、『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』の続編となる映画『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』(雨宮慶太監督)が公開。主人公・雷牙(中山麻聖)と初代主人公で雷牙の父である冴島鋼牙(小西遼生)との邂逅が描かれ、雷牙、鋼牙、大河(渡辺裕之)3世代の共演も話題に。
「映画化の話は前から出ていましたので、実現して本当にうれしかったです。テレビシリーズのときの経験があったので、特撮シーンがどうなるのか、細かく確認してという形をとっていました」
-雷牙、鋼牙、大河…親子3代揃うと壮観ですね-
「そうですね。牙狼シリーズを見てくださっている方は皆さん、そうおっしゃっていただけてうれしいです。
映画では、黄金騎士の家系に生まれ、人の心の闇に棲む魔獣ホラーを狩る日々を送りながらも、黄金騎士であることへの使命と重圧、いつまでも父が戻らないことへの葛藤も描かれているので、見ごたえのある作品だと思いますし、演じていてとても面白かったです」
テレビアニメ『牙狼-紅蓮ノ月-』(2015年)では声優に初挑戦。主人公・雷吼の声を演じ、原作者・雨宮慶太さんも「声質が良い」と大絶賛。「僕は声変わりというのがほとんどなくて、幼稚園の頃から低いトーンでコンプレックスだったんですけど、やっと年齢と声が合ってきたかなって思います」と話す。低音でソフトな声が耳に心地良い。
◆水谷豊監督作品だとは知らずにオーディション
2019年、麻聖さんは水谷豊監督映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』に主演。俳優として転機になった作品だったという。
※映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』(水谷豊監督)
結婚式を目前に控えた秀一(中山麻聖)は、親友・輝(石田法嗣)と結婚式の打ち合わせに向かう途中、車で若い女性を轢き殺して逃げてしまう。被害者の両親(水谷豊・檀ふみ)は突然の娘の死を受け止めきれず、父親は事故の真相を調べはじめる。そして予想だにしなかった事実が明らかに…。
「オーディションのときにはいらっしゃらなかったので、監督が水谷豊さんだということは知りませんでした。
スタッフの方が何人かいらして、ビデオカメラで撮影という形だったので、映されているときもまったくわからなくて。
オーディションは2人1組で、僕は秀一をやってほしいと言われました。それで、『もしかしたらシャッフルしてやるかもしれないので、待っていてください』って言われたんですけど、シャッフルがなかったので、『あぁ、ダメだったんだな』って思っていました」
-決まったことを知らされたのは?-
「オーディションから3か月ぐらい経ってからでした。それで、秀一を演じることが決まって台本を渡されたとき、初めて水谷豊監督だと知って驚きました」
-麻聖さんが演じた秀一は、結婚式を控えた前途洋々のエリートサラリーマン。幸せの絶頂からどん底へと落ちることになります-
「全体の本読みをする前に、水谷監督が僕と(石田)法嗣君と3人だけの時間を作ってくださって、そこで出演シーンの読み合わせをさせていただきました。
撮影前に幾度となく本読みをさせていただいたんですけれども、役作りとか、本の読み方というのも人それぞれあると思いますが、水谷監督からは『自分の価値観に固執せず、なるべくフラットな状態で現場に来て欲しい』と言われました。
なので、秀一というキャラクターをガッチリと固めて作り込んでいくのではなく、現場で何を求められても対応できるようにということを意識して撮影に臨みました」
-役作りで何かされたことは?-
「スーツを着慣れていなかったので、クランクインする1か月前からはスーツを着て過ごしていました。コンビニに行くときもスーツでしたし、部屋に入るときもスーツだったので、周りの人からは『就職活動をはじめたのか?』と思われていたかもしれないですね(笑)」
-撮影現場の雰囲気はいかがでした?-
「水谷監督は、毎朝、スタッフとキャストひとりひとりに握手して、『おはよう、きょうもよろしくね』って、声をかけながらあいさつをしてくださるんです。それで現場の士気も高まって、みんな一丸となっていたので、とても良い雰囲気でした。
『こんなにチームワークがすばらしい現場の仲間に入れてもらえて幸せだなあ』って感激しました」
-水谷監督の演出で印象に残っていることは何ですか?-
「水谷監督は、撮影現場で自ら演じて見せてくれながら演出を付けていくんです。大先輩の役者さんのお芝居ですから、これはもう絶対に見逃せないので、食い入るように見ていました。
秀一を演じて見せてくださった後、すぐに監督の顔に戻るんです。瞬時に変わるのがすごいなあって思いました」
-ご自分の出番がないときでも撮影をご覧になっていたそうですね-
「はい。極力行くようにしていました。監督はあまり遠くから演出される方ではなく、役者のもとに行ったりとか、それこそモニターの前にいるときにぼそっと言ったりとかいうのも、聞き逃したくなかったので。
自分に対してだけじゃないですけど、どういうことを感じて、どういうことを思っているのかを知りたかったので、現場にいるようにしました」
-中山さんが演じた修一は、轢き逃げをした罪悪感からどんどん壊れていきます。切り替えが難しかったのでは?-
「そうですね。役が抜けないというか、撮影のとき以外でも、つねに秀一のことを考えていたので、どっちがどっちというか…。
撮影がないときでも、今、自分が選択したことというのは、僕の考えなのか、秀一の考えなのかというのが、どっちか分からなくなるぐらいでした。
秀一として過ごした時間がものすごく濃かったので、作品を見ると、撮影中に水谷監督から言われたことやそのときの情景が思い浮かびます。
水谷監督に現場で教わったひとつひとつが僕にとっては宝物です。僕を役者として一個深いところに連れて行ってくださったんだと思えることばかりで、感謝しかありません」
-撮影が終わった後、水谷監督とは何か話されましたか?-
「初号試写が終わった後、『ありがとうございました』と言ったら、『グーでしょう?』って、すごくにこやかにおっしゃってくださいました。
撮影が終わった後、父(三田村邦彦)が水谷さんとお会いする機会があって、あいさつに行ってくれたらしくて、『どうでしたか?』って聞いたら、『グーでしたよ。どこに出しても恥ずかしくないよ』って言ってくださったって聞いて、すごくうれしかったです。
本当に幸せな現場でした。僕が俳優として生きていく上で支えとなる作品です。また水谷監督の作品に出させていただきたいですし、是非、共演もさせていただきたいと思っています」
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水谷豊さんのまっすぐな眼差しに俳優として生きていく覚悟が漲り、すがすがしい。今はコロナウイルス感染拡大防止のため、ドラマや映画の撮影もストップしている状態。家のなかでできる体力作りをして、食事も外食が多かったのが自炊するようになったという。努力はきっと報われる。誰もが不安を隠せない時期だが、心とからだをキープして、テレビ、映画の撮影が再開した際には、新たな役柄に挑戦してほしい。(津島令子)
※映画『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』
Blu-ray&DVD 発売中!配給:東北新社
原作・脚本・監督:雨宮慶太
出演:中山麻聖、石橋菜津美、水石亜飛夢、螢雪次朗
松田悟志 渡辺裕之 / 小西遼生 京本政樹(特別友情出演)
この世の闇に棲みつく魔獣ホラーと戦う魔界騎士たちの姿を描く「牙狼 GARO」シリーズ最初の主人公で雷牙(中山麻聖)の父である冴島鋼牙を演じる小西遼生をはじめ、渡辺裕之、京本政樹らこれまでシリーズを彩ってきたキャストが集結!