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<WRC>トヨタがダブル表彰台!最年少19歳ロバンペラ、オジェを相手に圧巻の大逆転

2020年のWRC(世界ラリー選手権)の第2戦「ラリー・スウェーデン」(現地時間2月14日~16日開催)が行われた。

©WRC

今シーズンからトヨタに移籍したエルフィン・エバンスとスコット・マーティンのイギリス人コンビが今季初優勝。トヨタに2020年シーズン最初の勝利をもたらした。

優勝したエバンスは、2017年のラリー・グレートブリテン以来のWRC2勝目。コ・ドライバーのマーティンにとってはWRC初勝利となった。

©TOYOTA GAZOO Racing

また、1973年から始まったWRCにおいて、ラリー・スウェーデンでイギリス人ドライバーが勝利したのは初の出来事。

過去、WRCの世界には多くのイギリス人ドライバーが誕生し、1995年WRC王者のコリン・マクレー、2001年WRC王者のリチャード・バーンズと2人のWRC王者も誕生しているが、ラリー・スウェーデンを制した者はいなかった。

今回エバンスが勝利したことで、WRCに新たな歴史が刻まれたことになる。

最終結果(上位9位まで)は以下の通り。

1位:エルフィン・エバンス(トヨタ)
2位:オット・タナック(ヒュンダイ)/1位から12秒7遅れ
3位:カッレ・ロバンペラ(トヨタ)/同20秒2遅れ
4位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同23秒6遅れ
5位:エサペッカ・ラッピ(Mスポーツ)/同32秒4遅れ
6位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同33秒8遅れ
7位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/同1分0秒9遅れ
8位:ティーム・スンニネン(Mスポーツ)/同1分24秒5遅れ
9位:勝田貴元(トヨタ)/同1分59秒6遅れ

◆スポット参戦のラトバラ、悔しいラリーに

©WRC

今年のラリー・スウェーデンは、暖冬による雪不足が大きな影響を与えた。

まず、4日間開催19ステージを予定していたのだが、2月4日の開催決定発表時には8ステージがキャンセルとなり11ステージを暫定で予定。その後、木曜日のSS1がキャンセルとなり、3日間開催10ステージに。そして実際にラリーが始まると、さらに日曜日のSS17がキャンセルとなり、最終的には全9ステージとなってしまった。

雪不足は、ドライバーたちにとっても難しい状況を生んだ。

雪道では、スタッドタイヤと呼ばれるタイヤに金属ピンを打ち込んだタイヤを使用する。スタッドタイヤの金属ピンが雪道に食い込んでグリップ力を生み出すからだ。

しかし、スタッドタイヤでグラベル(未舗装路)を走ると、グリップ力が足りず走りが難しくなってしまう。雪不足のため、一部では雪道だがそれ以外はグラベル(未舗装路)というステージが多く、この路面コンディションの変化がドライバーたちを苦しめた。

そうして始まったラリー・スウェーデンは、初日の金曜日から波乱が発生した。

不運に見舞われたのは、トヨタからスポット参戦したヤリ‐マティ・ラトバラ。SS4でマシンがメカニカルトラブルに見舞われ、SS4までは大幅にタイムが遅れながらなんとか走りきったが、このメカニカルトラブルが原因でリタイアとなってしまった。

次回のスポット参戦はラリー・イタリアを予定しているが、WRC最多出場記録を持つラトバラにとっては悔しい2020年シーズン最初のラリーとなってしまった。

©TOYOTA GAZOO Racing

初日の4ステージを終えて、トップはトヨタのエバンス。2位にヒュンダイのタナック、3位にトヨタのロバンペラ、そして4位にはトヨタのオジェが続いた。ステージトップはエバンスが2回、タナックが2回と勝負は互角だったが、総合タイムではエバンスが8秒5の差をつけてヤリスWRCの速さを証明した。

◆勝田貴元、SS16でステージ5位に

2日目はSS5からSS7、SS16の計4ステージ。この日も強さを見せたのはトヨタのエバンスだ。

SS5~7の3本のSSでトップを獲得。SS16はヒュンダイのヌービルに遅れを取ったが、2日目を終えて2位のタナックに17秒2差をつけ、今シーズン初勝利へ大いに近づいた。

日本人のラリーファンにとって2日目の大きな話題は、日本人ドライバーの勝田貴元がSS16でステージ5位を獲得したことだろう。6位にヒュンダイのタナック、8位にチームメイトのロバンペラがつけており、勝田はその非凡な才能の一片を証明してみせた。

©TOYOTA GAZOO Racing

またこの日、最終日に予定していた2本のSSのうち最初のSS17がキャンセルとなり、最終日曜日はSS18パワーステージだけという展開になった。

そして迎えた最終日。雪道からグラベル(未舗装路)へと路面変化する状況に加えて、雨も降り出す最悪のコンディション。どのドライバーも「路面がトリッキーだ」と口をそろえる状況下でSS18パワーステージはスタートした。

◆最年少ロバンペラ、パワーステージ1位を獲得

この日最大の注目は、トヨタ同士の3位表彰台争い。土曜日を終えて、3位オジェと4位ロバンペラの差は僅か0秒5。この日1本だけ開催されるパワーステージがすべてを決める場となったのだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

そして、このSS18パワーステージで圧巻の走りを見せたのは、今季WRC初挑戦、まだ19歳と現役ドライバーでは最年少のロバンペラだ。

なんと、誰よりも速いタイムでSSを通過し、パワーステージ1位を獲得。大逆転で3位初表彰台も獲得し、5点のエクストラポイントも追加となった。

また、2位表彰台を獲得したヒュンダイのタナックは、前戦のクラッシュの影響もなく強い度胸と速さを見せつけた。

©TOYOTA GAZOO Racing

こうして終えたラリー・スウェーデン。1位と3位のダブル表彰台に加え、2位は昨年トヨタで王者を獲得したタナックという、トヨタファンにはなんとも嬉しい顔ぶれとなった。

この顔ぶれを大いに喜んでいたのが、トヨタチームの総代表をつとめる豊田章男トヨタ自動車社長だ。チームを通じてコメントを発表した。その一部を紹介しよう。

「例年とは異なる雪のないスウェーデンで、エバンス/マーティン組が我々の新チームに今季初優勝をもたらしてくれました。エルフィン、スコット、優勝おめでとう。エルフィンはチーム加入当初、エストニアの工場に来てメカニック達と遅い時間までヤリスの使い方や整備の仕方を勉強してくれていました。

仕事の後は、その仲間達とボーリングに行くなどして、早くからチームに溶け込んでくれていました。こんな新メンバーがチームと一緒に成績を残してくれたこと、本当に嬉しく思います。ありがとう。

また、ロバンペラ/ハルットゥネン組が、チームメイトのオジエ/イングラシア組とわずか3秒差の熾烈なバトルを制して3位表彰台を獲得してくれました。貴重なポイントを獲得し、ファンも沸かせてくれた4人の選手の走りにもお礼を言いたいと思います。

勝田選手は、攻めると決めたSSではタイムをしっかり残しつつ、全ての道を走りきってくれました。ひとつのステージで普段から仲の良いタナック選手よりも早いタイムを出せたことは、今後の大きな自信につながったことと思います。引き続きがんばれ!

(中略)

スウェーデンでは、ラトバラ選手がハンニネン選手をコ・ドライバーにしてヤリスWRCでプライベート参戦してくれていました。WRC再参戦を果たした2017年のオリジナルメンバーの2人です。

ラトバラ選手は“トヨタの一員でいられて嬉しい、ヤリスに再び乗れて嬉しい”と言ってくれていたと聞きました。2人がヤリスを選んでくれたこと、私も本当に嬉しいです。しかし、今回は、車両トラブルによりリタイアとなってしまいました。もっとヤリスを楽しんでもらいたかったのに申し訳ない気持ちです。

次は、ラリー・イタリアでの参戦を計画してくれていると、マキネン代表からも聞きました。万全な状態でヤリスを提供できるよう、しっかり準備しておきます。次は思いっきり走ってください」

最後はリタイアしたラトバラのことも気遣うなど、なんとも豊田社長らしいコメントとなっている。

◆トップ3ドライバーのコメント

ラリー後、トップ3ドライバー会見の一部抜粋は以下の通り。

※エルフィン・エバンス(トヨタ)

©TOYOTA GAZOO Racing

――キャリア2度目のWRC勝利です。気分はいかがですか。
「嬉しいね!素晴らしい週末だったよ。まだ全体像が掴めないなかでも、シェイクダウンで凄く良い感触を感じ取っていた。そして実際マシンの動きは凄く良くて、自信を持ってプッシュすることができた。結果は最高で、本当に嬉しい」

――これでチャンピオンシップのトップに立ちました。ラリー・メキシコに向けてどのような気持ちですか。
「まずは2つの特別なラリーイベントをどちらも(ポイント獲得まで)活かすことができた。次はラリー・メキシコだけど、ここも特別なラリーイベントだ。でも、(ここからはじまる)グラベル(未舗装路)コースは、チャンピオンシップにおいて大きな部分を占めている。最初の2戦同様に良い結果に繋がることを願うよ」

※オット・タナック(ヒュンダイ)

©WRC

――ポイントを獲得できてハッピーですか。
「今シーズン最初のラリー完走ができて、ポイントも獲得できたのでハッピーだよ。ラリー・モンテカルロの後、無事マシンに戻ってこられて嬉しい。今シーズンはドタバタのなかスタートしてしまったが、今週は何かを得られると思っていた。少なくとも(マシンや状況に)より理解を深めたし、これからのことを考えると楽しみだ」

――ヒュンダイのマシンは力強いですか。
「一歩一歩だけど、確実にマシンをモノにしているよ。ここ2戦、まだ難しい一面もある。もう少し時間は必要だけど、今週末は自信も持てたし、やれたと思う。今後についても、僕はとても前向きに捉えているよ」

※カッレ・ロバンペラ(トヨタ)

©TOYOTA GAZOO Racing

――初めてのWRC表彰台です。最後のパワーステージについて、これまでのラリーキャリアで最高の走りでしたか。
「そうだね、そう思うよ。僕がやり遂げたなかで最高のステージだった。今日のステージは多くのことが求められる難しいものだったけど、グラベル部分では気をつけながら、雪道部分ではプッシュする形で…差し引きゼロでいけたよ」

――6回もの世界王者を経験したチームメイト(オジェ)を打ち負かした感想は?
「本当に嬉しい出来事だったよ。走り終えたとき、そこまで良い感じだとは思っていなかったんだ。コ・ドライバーも『逆転には足りてないかも』と言っていたのだけど、実際は逆転した。最高に嬉しかったよ」

――WRC初勝利の最年少記録は、22歳で成し遂げたヤリ‐マティ・ラトバラです。(現在19歳のあなたは)この記録を破れそうですか。
「それはわからない。だけど、もちろん破れるように挑戦するよ。まだまだ十分な時間的猶予が与えられているからね」

◆次戦は「ラリー・メキシコ」

こうしてラリー・スウェーデンは終了。パワーステージのポイント加算を加えたドライバーズチャンピオンシップは以下の通りだ。

1位:エルフィン・エバンス/42ポイント
2位:ティエリー・ヌービル/42ポイント
3位:セバスチャン・オジェ/37ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/30ポイント
5位:エサペッカ・ラッピ/24ポイント
6位:オット・タナック/20ポイント
7位:ティーム・スンニネン/11ポイント
8位:セバスチャン・ローブ/8ポイント
9位:勝田貴元/8ポイント

マニュファクチュアラーズチャンピオンシップは、トヨタが逆転してトップに立った。フォードを使用するMスポーツは3位につけている。(トヨタ/73ポイント、ヒュンダイ/63ポイント、Mスポーツ/40ポイント)

これでWRCは冬のラリーを終え、次戦は暑く高地でエンジンに厳しいラリー・メキシコ(3月12日~15日開催予定)へと移動する。

トヨタは2017年の復帰以降、まだラリー・メキシコは攻略出来ていない。ここをいかにして攻略するか、チームの総合力とヤリスWRCの真価が問われる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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