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WRC(世界ラリー選手権)、最終戦は森林火災の影響でキャンセル。年間リザルトが確定

2019年のWRC(世界ラリー選手権)は年間14戦の最終戦となる「ラリー・オーストラリア」(11月14日〜17日)を残すのみだったが、12日、ラリー・オーストラリア主催者より最終戦のキャンセルが発表された。

©WRC

これにより、2019年のWRCは前戦の「ラリー・スペイン」までの競技結果で年間リザルトが決定。ドライバーズ・チャンピオンシップは、ラリー・スペインでチャンピオンを決めたトヨタのオット・タナックが、そしてマニュファクチュアラーズタイトルは、韓国のヒュンダイが初のタイトル獲得となった。

今回ラリー・オーストラリアがキャンセルされた原因は、オーストラリア東南部にあるニューサウスウェールズ州各地で発生している大規模な火災だ。12日の時点で延焼火災が約1000kmにも渡り、同州内で発生した森林火災は300カ所ほどにも拡大していると同州のメディアが報じている。

延焼規模の大きいところでは10万ヘクタール以上が複数カ所延焼しているという。10万ヘクタールといえば、東京ドーム約2.1個分の敷地にもなる広さだ。

約3000人の同州消防士に加えて、他州やニュージーランド、国防軍なども消火活動にあたっているが、鎮火の目処は立っていない。

州当局は史上最悪の山火事を経験しており、その結果として一部地域では壊滅的な状況が予想されると緊急非常事態を発令していた。この発令により、消防当局に住民の避難指示や道路封鎖など広範囲な権限が7日間与えられる。

ラリー・オーストラリアが開催されるコフスハーバー地域でも森林火災による煙がサービスパークなどに漂っており、これらの危機的状況から、主催者は州当局、FIA、非常事態対応組織、そして地元と相談を行い、オフィシャルなど1000人以上が関わるラリー・オーストラリア関係者の安全面からも、イベントキャンセルが唯一の選択肢であることを発表した。

主催者であるラリー・オーストラリア代表のアンドリュー・パパドプロス氏はメディアのインタビューでこう答えている。

「このような形でこのイベントを終了することは悲しい。しかし、私が思うに重要なのは、オフィシャルやこの地域コミュニティの安全であり、それがイベントのキャンセル理由だ。実際にキャンセルの決断をしたのは昨晩(11日)だった。しかし、これは国際規格のラリー競技であり、FIAや州当局、地元警察などとも相談が必要だった。そのため慎重を期してキャンセル発表までの準備を進めた」

今回の発表より前の時点(11日)では、イベント日程や距離を短くして開催することも検討されたが、森林火災は8日以降状況悪化の一途をたどっており、キャンセルは不可避だったと思われる。

◆年間リザルト&2020年最終戦は「ラリー・ジャパン」

こうして、2019年のWRCシーズンは終了した。リザルトも確定し、年間のチャンピオンシップは以下の通りとなっている。

<ドライバーズ・チャンピオンシップ(1~10位)>
1位:オット・タナック/トヨタ/263ポイント
2位:ティエリー・ヌービル/ヒュンダイ/227ポイント
3位:セバスチャン・オジェ/シトロエン/217ポイント
4位:アンドレアス・ミケルセン/ヒュンダイ/102ポイント
5位:エルフィン・エバンス/Mスポーツ/102ポイント
6位:クリス・ミーク/トヨタ/98ポイント
7位:ヤリ‐マティ・ラトバラ/トヨタ/94ポイント
8位:ダニ・ソルド/ヒュンダイ/89ポイント
9位:ティーム・スンニネン/Mスポーツ/89ポイント
10位:エサペッカ・ラッピ/シトロエン/83ポイント

<マニュファクチュアラーズ・チャンピオンシップ>
1位:ヒュンダイ/380ポイント
2位:トヨタ/362ポイント
3位:シトロエン/284ポイント
4位:Mスポーツ/218ポイント

WRCはシーズン期間が長い。すでに2020年のWRCカレンダーは発表済みで、その最初のラリーイベントは2020年1月23日~26日に開催される。また、最終戦は10年ぶりのWRC開催となった「ラリー・ジャパン」が決定している。2020年のラリーカレンダーは以下の通りだ。

第1戦:ラリー・モンテカルロ/1月23日~26日
第2戦:ラリー・スウェーデン/2月13日~16日
第3戦:ラリー・メキシコ/3月12日~15日
第4戦:ラリー・チリ/4月16日~19日
第5戦:ラリー・アルゼンチン/4月30日~5月3日
第6戦:ラリー・ポルトガル/5月21日~24日
第7戦:ラリー・イタリア/6月4日~7日
第8戦:ラリー・ケニア/7月16日~19日
第9戦:ラリー・フィンランド/8月6日~9日
第10戦:ラリー・ニュージーランド/9月3日~6日
第11戦:ラリー・トルコ/9月24日~27日
第12戦:ラリー・ドイツ/10月15日~18日
第13戦:ラリー・グレートブリテン/10月29日~11月1日
第14戦:ラリー・ジャパン/11月19日~22日

このカレンダーを見てわかるように、同じ地域にある「ラリー・ニュージーランド」が新たに加わったことで、結果的にラリー・オーストラリアは今年のWRCが一旦最後の開催になることが決定していた。大会主催者であるパパドプロス氏が発言した「このような形でこのイベントを終了することは悲しい」という言葉には重みがある。

それだけに、安全を重視した主催者やWRCの決断は英断と言えるだろう。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>