考古学者・吉村作治氏、エジプト史上“最も偉大な王”の魅力を語る。「今この時代にぴったり合っている」
2025年3月8日(土)~9月7日(日)まで、ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo(豊洲)にて、エジプト史上“最も偉大な王”と称されるラムセス大王(ラムセス2世)とその時代にまつわるエジプトの至宝180点を展示する特別展『ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』が開催される。
エジプト政府公認として過去最大級の展覧会である本展は、アメリカ、フランスなど5会場でのワールドツアーにて200万人を動員。アジア初上陸となる東京での開催に先立ち、1月23日に記者発表会が行われた。
第一部には、小池百合子東京都知事や、エジプトの博物館に展示されている彫像とそっくりだと大きな反響を巻き起こしたチョコレートプラネットが登壇。第二部には、駐日エジプト大使モハメド・アブバクル閣下、本展ジャパン・キュレーターで考古学者の吉村作治氏、エジプト考古最高評議会事務総長モハメド・イスマイル氏、本展グローバル・キュレーターのザヒ・ハワス博士が登壇し、本展の見どころについて述べた。
その後、個別インタビューに応じたジャパン・キュレ-ターの吉村氏が、本展のメインテーマであるラムセス大王ことラムセス2世の偉大さについて、そして本展でしか得られない貴重な体験について以下のように語った。
まず吉村氏は、本展の開催によせた寄稿のなかで、ラムセス大王について「ファラオのなかのファラオ」と表現している。ラムセス2世が「大王」たるゆえんについて吉村氏は、古代エジプト史上最も長い67年間もの間エジプトを統治したことをまず第一に挙げ、次に、自分の妻に神殿をつくったことにも述べた。
そして、紀元前1274年のヒッタイトとの戦いに勝利したこと、さらに「ラムセスは戦争だけで終わらない、ちゃんと和平する」と、紀元前1258年に締結された、エジプトとヒッタイト間における歴史上初の平和条約も重要なポイントだと話す。
自身の巨大なモニュメントを含む広範囲にわたる偉大な建築物の制作を多数主導したことでも知られるラムセス大王だが、吉村氏は「(当時は)いつ死ぬか、いつ殺されるかわからない時代。ラムセスが作りたい・遺したいと思っているものを、下の者が勝手にでかく作るんです。権利者は、それがうれしい。そして作っているうちに、だんだんその気になっちゃうんだよね、ラムセスのためにやろうって。(ラムセスは)すごく優しい人なんですよ」と、建造物を通して想像する、ラムセスの人柄にも触れた。
何人もの偉大な王妃をもち、生涯に100人以上の子どもをもうけたこともラムセス大王の人柄ゆえのエピソードだといい、「困っている人がいるとみんな妻にしちゃう。女性が困っていると救うのがラムセス2世だった」と話す。「ラムセス大王はよき王だったのか」という問いにも、「そうですね」と迷いなく答えた。
そんなラムセス大王の貴重な木棺が47年ぶりにワールドツアーに出され、このたび本展に展示されることについて吉村氏は、「うれしいですね」と感慨深げにうなずいた。本展のあと、再び日本で見られる可能性があるかという質問には、「持ってこようとする人がいればね。そして、許可が出れば」と見解を示した。
ラムセス大王の貴重な木棺が展示されることは、言うまでもなく本展の目玉。あらためて、吉村氏が思う「本展のすごさ」についてたずねると、「ラムセス2世をテーマにした展覧会であること」と、本展の原点を挙げた。「現代には、ラムセス2世のような人が出てこなければいけないと思う。今この時代に、ラムセス大王という人がぴったり合っている」と、時代に即した人物にフィーチャーした展覧会であると話す。
「今この時代に」。吉村氏がそう考える理由は、ほかにもある。それは、本展に展示される180点の至宝のなかで、とくに吉村氏が注目するものについてたずねたときのことだ。
吉村氏はジュエリーに注目しているといい、「あんなに細かいものを素晴らしく作る技術者や芸術家が、今から3000年ほど前にいたということ。そして、そういう人たちが作ったものを王様が持っていた。それは真の民主主義だと思う」と、至宝を通し、ラムセス大王が統治した時代をも分析する。しかし、そうした深い洞察をせずとも、ただ「きれいだ」「すごい」と、そうした楽しみ方でいいと話す吉村氏。
「深く考えるには、10年20年かかる。僕はエジプト(の研究)を始めて、エジプトに行って60年。それくらいかかるものなんです。それでもまだ謎が多く、その謎解きが楽しい」と話した上で、「(展示を見て、考えて)、“どうしてこんなものができたんだろう?”と、“どうして?”“どうして?”となってくると、勉強をするようになる。人間は疑問を持たないとだめ。今はなんでも教えちゃう時代だけど、お腹がすかないと、どれがおいしいかわからないでしょう?脳が腹をすかさないとだめです」。最新機器で何でもすぐに知ることができる現代。本展を通して古代エジプトの壮大さと謎に触れることそのものに意義があると、吉村氏は考える。
最後は、「来たい人はそんなに深く考えないで、すごいな、きれいだな、それでいいんだよ。それがスタートだから。感動しないと始まらない」と、来場者にメッセージを送った。
古代エジプト新王国時代(紀元前1539年~1075年)に由来する180点の貴重な遺物や華麗な黄金の工芸品の実物を、最新のデジタル体験や音響・照明とともに新しいスタイルで展示する体験型展覧会『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』。展示物には、貴重なラムセス大王の木棺、高価な宝石、荘厳な王のマスク、動物のミイラ、精巧なお守りなど、エジプト国外に出たことのない唯一無二の遺物が含まれ、それらとの出会いはまさに「一生に一度の機会」。
開催は、2025年3月8日(土)〜9月7日(日)、ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo(豊洲)にて。チケットは、2025年1月24日〜2025年9月7日、ART PASS/ローチケ/チケットぴあ/イープラスほか各種プレイガイドにて一般発売スタート。当日窓口販売料金は、平日:大人4100円、中高生3100円、小学生2400円。土日祝及び特定日:大人4300円、中高生3300円、小学生2600円。詳細は、オフィシャルサイトを参照。
主催:ラムセス大王展 ファラオたちの黄金 実行委員会/NEON JAPAN 株式会社