体操・谷川兄弟、弟の優勝で兄が流した涙の意味。同じ競技で世界一目指す、兄弟ならではの絆
10月4日(金)に開幕した「世界体操」。1年後に控えた東京オリンピックのメダルを占う、最後の頂上決戦だ。
大会6日目の今日10月9日(水)には、男子団体決勝が行われ、日本はロシア・中国・アメリカとのし烈なメダル争いに挑む。
5つの枠をめぐる代表争いでは、長年体操界を牽引してきた内村航平や白井健三がその座をつかめないなか、代表選考会にて脚光を浴びたのが史上初の兄弟ワンツーフィニッシュを飾った谷川航(わたる)(23)・翔(かける)(20)の“谷川兄弟”だ。
弟・翔にとっては初となる「世界体操」の代表入りとなり、表彰式では、兄・航が弟を思い涙する場面もあった。
一方で翔は、「お兄ちゃんには特に負けたくない」と兄弟ならではのライバル心を燃やすことも。
“兄弟だけどライバル”――そこには、同じ競技で世界一を目指す2人だからこその絆があった。
◆兄弟で明暗分かれた選考会
2人は幼い頃からいつも一緒だった。
幼少期は、ショー・コスギ氏が経営するアクションクラブに所属。子役としてテレビやCMにも多数出演し、“異色の幼少期”を過ごした。
小学校に入学すると、先に体操を始めた兄・航を追うように、弟・翔も体操を始めた。そんな2人は小学校の卒業式で、卒業証書をもらう前に“同じ夢”を語っている。
「僕の夢は、体操でオリンピックに出てメダルを獲ることです」(翔)
オリンピックでメダルを獲る――その目標に向けて、互いに体操選手として切磋琢磨してきた。
2人とも千葉県船橋市立船橋高等学校に入学し、互いに日本一を経験。大学も、揃って体操の名門・順天堂大学に進学した。
そんななか迎えた、昨年2018年の世界体操代表選考会。選考会は3大会に渡っており、「全日本選手権」「NHK杯」の合計得点で5枠のうち2枠が、その後、「種目別選手権」で残りの3人が選ばれるようになっていた。
1戦目の「全日本選手権」、翔は次々と正確に技を成功させ、なんと10年間王座を譲らなかった内村航平に勝利。最年少優勝を成し遂げた。
そして、1戦目の得点を持ち越して迎えた2戦目の「NHK杯」。翔はここでも、最終種目の鉄棒までトップに立ち、世界への切符は手の届くところまできていた。
しかし、痛恨の落下で結果は4位に。最後の選考会でも得点を伸ばすことができず、初の代表入りを逃してしまった。
その一方で、兄・航は2大会連続で「世界体操」の代表に選出。兄弟で明暗が分かれることになった。
◆兄が流した表彰式での涙の理由
そして今年2019年、翔は次こそ勝ちきるために、自身の体操をイチから見直した。
元々得意だったゆか、あん馬、つり輪は、難度を上げることに着手。その一方で、失敗のリスクが高い鉄棒は難度を下げて、全体としては、昨年2018年よりDスコアが0.6上がる構成にした。
そして迎えた今年2019年の代表選考会。
1戦目の「全日本選手権」で2連覇を果たすと、迎えた勝負の2戦目「NHK杯」でも5種目を終え1位に。
最終種目は、昨年落下した鬼門の鉄棒だったが、完璧な演技を見せて見事優勝を果たした。
「今日一日が怖くて。こんなに頑張ってきたので、しっかり決めたいという思いがありました。本当にありがとうございました」(翔)
試合後の表彰式で翔が涙ながらに語るなか、その様子を見守っていた普段ポーカーフェイスな兄・航も涙を拭っていた。
「翔が苦しんでやっている時もあったので、そういう姿を見てきてやっと結果が出てきて、頑張りが実っているなと思って、感動しました」(航)
いつもそばにいた兄が、誰よりも弟の努力や苦しみを知っていた。翔も、そんな兄の背中を追いかけてきたからこそ、今の自分があるという。
「“お兄ちゃんだけど、ライバル”というか。尊敬もしているのですが、ライバルというのはあります。“2人で頑張ろう”という感じなのですが、『NHK杯』の個人総合もお兄ちゃんが、ギリギリまで僕に迫ってきて、その時に“負けたくないな”というのはすごく思ったので。誰にも負けたくないのですが、お兄ちゃんだったら特に、その思いは強くなってしまうのかもしれないです」(翔)
兄弟だけどライバル――。「世界体操」でも互いに切磋琢磨し、メダル獲得を目指す。
※番組情報:『世界体操』
男子団体決勝 10月9日(水)よる11:00〜深夜01:25、テレビ朝日系24局
女子個人総合決勝 10月10日(木)深夜0:15〜深夜02:10、テレビ朝日系24局
男子個人総合決勝 10月11日(金)深夜0:20〜深夜02:50、テレビ朝日系24局
男女種目別決勝 10月12日(土)よる11:30〜深夜03:00、テレビ朝日系24局
男女種目別決勝 第2日 10月13日(日)深夜0:05〜深夜03:00、テレビ朝日系24局