<WRC>2019年も残り3戦、「ラリー・グレートブリテン」間もなく開催!
現地時間の10月3日~10月6日、2019年WRC(世界ラリー選手権)第12戦「ラリー・グレートブリテン」が開催される。全14戦のWRCも残り3戦、いよいよチャンピオン争いも佳境を迎えるところだ。
ラリー・グレートブリテンは、イギリスにある4の国のひとつ、ウェールズで行われる。
現在日本ではラグビーワールドカップが開催中(※2019年9月20日~11月2日)。ラグビーのウェールズ代表は、その力強い赤ジャージー姿から“レッドドラゴンズ”の愛称で呼ばれている。
今回のラグビーワールドカップには、イングランド・アイルランド・スコットランド、そしてウェールズとイギリスを形成する4カ国すべてが出場しており、ラグビー発祥の地・イギリスにおけるラグビー文化の深さを垣間見ることができる。
そして、じつはイギリスにおいてラグビー同様に文化として懐の深さを見せているのが、モータースポーツである。
自動車競技としてのラリー発祥の地は1911年のラリー・モンテカルロが最初と言われているが、イギリスは1932年に現在のラリー・グレートブリテンにつながる“RACラリー”を開催している。また1950年にスタートしたF1グランプリの開幕戦は、イギリスのシルバーストーンサーキットで行われた。
さて、ラリー・グレートブリテンは今回、木曜日スタートの4日間開催となる。コースはグラベル(未舗装路)ラリーだ。
木曜日は顔見世となるSS1で3.58km。続く金曜日はSS2からSS10まで9つのSS、土曜日はSS11からSS17まで7つのSSを予定。金曜日と土曜日の最後のSSは(木曜日同様に)現地スタート時間が19時を回っており、ナイトラリーとなる。そして日曜日は、SS18からSS22まで5つのSSが予定されている。
このラリー・グレートブリテンで過去5勝、そして前戦のラリー・トルコに勝利し勢いに乗っているのが、現ワールドチャンピオンのセバスチャン・オジェ(シトロエン)だ。
オジェはWRCの公式インタビューで、ラリー・グレートブリテンのポイントをこう答えている。
「このラリーはとにかく状況が常に変化していく。非常に挑戦的であり、かつ大事なのがコースに残ることだ。例えば霧の中での走行では路面を捉えるのも難しい。そうしたときは、自分でも遅すぎると感じるほどに速度を落とす。だが、そうしたときこそ自分自身を冷静に保つことが重要になる。とにかくその状況下でベストを尽くすことだ。自分同様、他のドライバーたちも状況に苦しんでいるはずだからね」
そんなオジェに対抗するのは、やはりトヨタのオット・タナックとヒュンダイのティエリー・ヌービルだろう。この3人のポイント差はトップのタナックから3位のヌービルまでで30ポイント差。今回のラリー・グレートブリテンの結果次第で大きく状況が変化する。
そしてトヨタチームに目を向けると、ヤリ‐マティ・ラトバラは18回目のラリー・グレートブリテンであり、ここで過去2勝している。またクリス・ミークはトヨタでは初挑戦だが、母国ラリーなのでいつも以上に気合いが入っている。そんなトヨタドライバーたちの気合いは、チームリリースから感じることができる。
※オット・タナック
「ラリーGBは特別な1戦です。道は高速で流れるようなコーナーが続きとても好きなラリーですが、コーナーごとにタイヤのグリップレベルが変わるなど、コンディション次第で難易度が上がります。どのラリーでもクルマに自信を持つことが必要ですが、特にそのようなコンディションでは、自信を持てるか持てないかで大きな差がつきます。
ドライバーズ選手権のリードは縮まりましたが、残る3戦はいずれも昨年我々が速かったラリーです。ウェールズから始まる戦いで、自分たちの仕事をやり遂げなくてはなりません」
※ヤリ‐マティ・ラトバラ
「ラリーGBは常に楽しく感じられる特別なイベントです。このラリーでもっとも難しいのは、何よりも天候変化への対応です。長年に渡って出場してきましたが、雪・雹(ひょう)・強風、そしてあらゆる角度から降る雨など、あらゆる気象を経験しました。ステージを走行中に雨が降ると、泥が流されて意外にも良いグリップが得られます。一方で乾燥が始まると、ヌルヌルになり滑りやすくなります。
フィンランドとドイツではとても良いリズムで運転できていたので、ラリーGBではその流れを取り戻したいと思いますし、マニュファクチャラー選手権争いの助けとなるような良い結果を残せるように頑張ります」
※クリス・ミーク
「自分にとってラリーGBは、限りなくホームイベントに近い1戦です。初めて出場したラリーは同じウェールズの森が舞台でしたが、幸運にも現在はWRカーをドライブする機会に恵まれています。自分にとって雨と泥は、ラリーという大好きな競技の重要な部分を占めています。10月の上旬はまだ雨により路面は濡れていますが、以前に行なわれていた11月ほど酷い条件ではありません。
例え路面が非常に滑りやすい状態になったとしても、ヤリスWRCはそのようなコンディションで非常に高い競争力を発揮します。クルマはとても速くトップリザルトを手にすることも可能だと思うので、前向きな気持ちでこのラリーに臨みます」
それぞれのドライバーにとって大きな意味を持つラリー・グレートブリテン。
トヨタにとってはさらに、2年連続マニュファクチュアラーズタイトル獲得に向け、ここで大きくポイントを獲得したいところだ。それだけに、タナックだけではなく3人のトヨタドライバーの活躍が求められる。
まずは顔見世となる木曜日。果たしてどのような走りを見せるのか。SS1のスタート時間は、現地時間で19時8分。日本時間は4日深夜3時8分スタートとなる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>