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『カメ止め』上田慎一郎監督、騙されて借金200万円。返済してもまた借金…ホームレス生活も経験

©テレビ朝日

2017年、製作費わずか300万円で作られ、興行収入31億円を超える大ヒットを記録した映画『カメラを止めるな!』。当初2館から始まった上映館数は300館以上に拡大され、リピーターが続出し、社会現象にまでなったこの映画で一躍その名を知られる存在となった上田慎一郎監督。

中学生の頃からハンディカメラで映像を撮り始め、数々の映画祭で入賞経験を持ち、筆者が一次審査委員をつとめている「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」でもその才能は早くから話題を集めていた。

さぞかし順風満帆な人生だったろうと思いきや、これまでにマルチ商法に足を突っ込んで借金を背負ったり、ホームレスになったこともあるという異色の経歴の持ち主。度重なる失敗も「ネタ」にして昇華し、数々の困難を乗り越えてきた上田慎一郎監督にインタビュー。

©テレビ朝日

小学校高学年ぐらいから映画が好きになり、中学生のときには父親のハンディカメラで友だちと一緒に自主映画を撮り始め、初めてオリジナル脚本を書いたのは、中学1年のときだったという。

「中学1年のときに班ごとに劇をするという国語の授業があって、みんなは『桃太郎』とか『金太郎』のような既存のやつをやっていたんですけど、僕が『オリジナルを書きたい』って先生に言って、そのときに初めてオリジナルの脚本を書いて授業でやったんですよ。

そうしたら、それをすごい褒めてもらえて、全校の生徒の前でやろうということになったんですね。それで学年全体でキャスティングし直して稽古をして、3年生を送る会でやりました」

-短編映画を初めて撮ったのは?-

「作品として仕上げたのは、高1の頃が初めてですね。高校生のときに文化祭でクラスごとに出し物があるじゃないですか。お化け屋敷とか、焼きそば屋さんとか。

それをうちは映画を作って上映しようということになって、クラスメイトに当て書き(演劇や映画などで、その役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから脚本を書くこと)をして映画を撮って上映しました。

高1のときは30分ぐらいの短編映画で、高2のときには60分ぐらいの中編、高3のときには120分ぐらいのタイムスリップ戦争映画みたいな話。山に2週間ぐらいこもって作りました」

-本格的ですね。もう学校では知られた存在だったんじゃないですか-

「そうですね。自分で言うのもなんですけど(笑)。それで、文化祭で作った映画を演劇部の先生が目を留めてくれて、高2の終わりぐらいだったと思いますけど『演劇部で作演をやってみないか』ということでやったんですよ。

そして演劇部で高3のときに『デスケープ』という舞台を、作・演出・出演でやったら、近畿大会で2位になって、そういう感じで舞台もやっていました」

※上田慎一郎プロフィル
1984年4月7日生まれ。滋賀県出身。中学時代に自主映画を撮り始め、19歳のときに上京。マルチ商法などで多額の借金を抱え、ホームレス生活も経験するが、25歳のときに映画製作団体「PANPOKOPINA」を立ち上げる。短編映画を製作し、国内外の映画祭で賞を多数受賞。2015年、オムニバス映画『4/猫 ねこぶんのよん』の1編『猫まんま』の監督で商業映画デビュー。

初の劇場長編映画となった『カメラを止めるな!』(2017年)が異例の大ヒットを記録。初期短編傑作選のオムニバスプログラム『上田慎一郎ショートムービーコレクション』も発売され、10月18日(金)には劇場長編第2作となる『スペシャルアクターズ」が公開される。

©テレビ朝日

◆高校時代の自主映画が超有名監督に「認められた」と騙されて…

-映画監督になると決めたのはいつ頃ですか?-

「どのあたりで映画監督を職業にしたいと思ったかはあまり定かではないんですけど、ひたすら作りたいものを作っていただけです。高校卒業後の進路を決める時期になったときに、映画監督を目指すか、お笑い芸人を目指すかという感じでしたね。お笑いも好きだったので。

迷った末、映画監督を目指そうと思ったんですけど、目指したらすぐになれるだろうと思っていました。それまでにいろんな作品を撮っていて成功体験が多かったので、自信満々でしたね」

高校卒業後、上田監督は専門学校に通い始めたが、合わずに1年ぐらい通って辞めてしまったという。

「専門学校辞めてフリーターになって、焼肉屋さんでバイトをしていました。それでとある詐欺にあって、それをきっかけに上京しました」

-詐欺の被害者になってしまったんですか-

「はい。僕が高3のときに文化祭で作った『タイムトラベル』という自主映画を北野武さんが見て、『オフィス北野』からスカウトが来ているみたいな詐欺にあったんですよね。

バイト先の焼肉屋さんで働いていたおっちゃんが、虚言癖みたいなところがあって、お金を巻き上げられたとかではないんですけど、周りのいろんな人に嘘をついていたんですよ。

それのひとつで、『オフィス北野が僕を欲しがっていて、アメリカでの仕事が多くなるみたいだから』って言われて、バイトもやめて英語ばっかり勉強していたんですけど、それが全部嘘だったってわかって…。

それをきっかけに、『大阪にいてもしょうがないなあ』って思って。映画監督を目指すならやっぱり東京だなって思って19歳で上京しました」

バイトも辞めて所持金はほとんどなかったため、ヒッチハイクで東京を目指し、最初にたどり着いたのは、下北沢だったという。

「東京に行くとしか決めていなかったので、最後に乗せてくれた人に、映画監督を目指すならどこに住んだらいいか聞いたら下北沢だって言われて、下北沢の不動産屋に行って1番安いアパートに住み始めたんです。家賃は3万5000円」

-生活はバイトで?-

「そうです。バイトは東京に出てきてから探して、最初の頃は日当が出るみたいなバイトを探してやっていました。色々やりましたね。肉体労働もしましたし、派遣に登録して、日払いでもらえるようなバイトもしたし、海の家で住み込みのバイトもやったし、居酒屋とかレストランとか。

一番長く続いたのは、ヨドバシカメラのなかにある携帯ショップで数年間やって、フリーの映像作家になる前に続けていたのは自動車事故の電話受付ですね。そこに3、4年くらいいました」

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◆騙されて借金200万円…返済してもまた借金…とうとうホームレス生活も

-その間も自主映画は撮り続けていたのですか-

「20歳から25歳の間は全然映画を撮っていませんでした。25歳のときに映画に集中しようと決めたんですけど、それまではマルチ商法に足を突っ込んでしまって200万円ぐらい借金をしたり、それを返し終わったと思ったら、SF小説を出版してまた200万くらい借金したり、ハチ公前でポストカードとかを作って露店をしたりしていて…。

そういういろんな映画以外の寄り道をして、映画以外のことで成功して映画監督になろうとしていたんですけど、結局、映画だけで勝負することが怖かったんですよね」

-25歳のときに映画に集中することにしたきっかけは?-

「9月のある夜、すごい泣けてきて号泣したんですよ。200万くらいの借金を背負ってそれを完済して、その直後にまた小説で200万くらいの借金を背負って在庫だけが残って、俺は何のために東京に出てきたんだろうと思ったら涙が止まらなくなって。

『映画を作る』ということから逃げていたことに気づいたので、映画一筋に集中してやろうと覚悟を決めました」

-それにしても、よく借金を返せましたね-

「そうですね。そのときには1年ぐらい実家に戻りました。それでバイトを掛け持ちして返しました。親は怒っていましたけど、その当時消費者金融のカードが5枚ぐらいあって、利息がかさんでいくんですね。だから、親が全額返済してくれて、僕が親に返すという感じでした」

-それでご両親に完済して、今度はまた新たに200万円の借金ですか-

「小説の共同出版という形で出版してまた借金を背負ってしまって…。代々木公園でホームレスをしたこともありましたけど、僕自身はそんなにへこんではいませんでした。悪いことや悲しいことがあっても、それを全部ネタにしてしまおうと思っていましたから」

-前向きで強いですね-

「前向きというか悪いことがあってもネタにしてしまえば悪いことではなくなると思うんです。代々木公園でホームレスとかをしていたことも他の人からすると、読み物として面白いものじゃないですか。なんかそういうのを悲劇的に書くのではなくて、ポップに書いていたので。喜劇的に。

『ホームレスをしていた、つらい』って書いたってしょうがないので、それを明るいエンターテインメントに昇華させてアウトプットするっていうのは、今の映画作りに続くことかなあと思います」

-つらいこともすべてネタにしてしまうところはすごいですね-

「そうですね。なんかそのピンチとか、いばらの道の方が自分は燃えるからでしょうね。中学生の頃から日記を書いたり、高校卒業するぐらいからブログを書いたりして、自分の日常をエンターテインメントに書いてアウトプットするということを続けていたので。

何かしらのピンチとか、悪いことがあっても、それをネタにできるという考えがあったからやってこられたという感じですね」

25歳のときに映画に集中しようと決意した上田監督は、コミュニティーサイトで自主映画製作団体が多くあることを知り、スタッフ募集に応募。約3カ月間、映画作りを学んだ後、自分の団体「PANPOKOPIN」を作り、短編映画を精力的に作っていく。

次回後編では大ヒットを記録し、数々の映画賞を総ナメにした映画『カメラを止めるな!』、10月18日(金)に公開される監督最新作『スペシャルアクターズ』の撮影裏話を紹介。(津島令子)

(C) 松竹ブロードキャスティング

※映画『スペシャルアクターズ』
10月18日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
緊張すると気絶してしまう売れない俳優が、演じることを使った何でも屋“スペシャルアクターズ”に所属し、メンバーとともにカルト集団に立ち向かっていく…。
監督・脚本・編集・宣伝プロデューサー:上田慎一郎
出演:大澤数人 河野宏紀 富士たくや 北浦愛 上田耀介ほか
配給:松竹

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