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<WRC>トヨタ、ドイツで表彰台独占!チームに1993年以来の快挙「最高の光景です!」

現地時間の8月22日~25日に行われた2019年のWRC<世界ラリー選手権>第10戦ラリー・ドイツ(ドイチェランド)。同大会で、トヨタが2017年のWRC復帰以来チーム最高となる1位・2位・3位表彰台独占を成し遂げた。

優勝したオット・タナックは、ドイツでじつに3年連続勝利となっている。

©WRC

表彰台独占。――どんな競技においても、これほどの栄誉は滅多にない。

WRCにおいても、前回の表彰台独占は2015年まで遡る。同年のドイツ大会でフォルクスワーゲンが1位セバスチャン・オジェ、2位ヤリ‐マティ・ラトバラ、3位アンドレアス・ミケルセンで独占した以来となっており、今回はじつに4年ぶりの出来事というわけだ。

トヨタのWRC活動においては、1986年にコートジボワール大会にてトヨタ・セリカGTで表彰台独占、1993年のサファリ大会にてトヨタ・セリカ・ターボ4WDで表彰台独占して以来となる3度目の快挙となった。

©TOYOTA GAZOO Racing

この快挙に真っ先に反応したのは、トヨタのトップであり、チーム総代表でもある豊田章男氏だ。チームリリースなどでその嬉しさを爆発させた。

<以下、豊田氏のコメント抜粋>
「TOYOTA GAZOO Racing WRTの6人が揃ってドイツの表彰台に立ちました。最高の光景です! 本当はその真横に立って、ベトベトになりながらその光景の一部になりたかった…。

そして、勝田貴元がヤリスでWRCを走りきりました。これも私が見たいと願ってきた光景でした。ただ、本当に見たい光景は、TOYOTA GAZOO Racing WRTのウェアを着た彼が表彰台に立つ姿です。でも、今日は最高の気分です!

私をこんな気分にさせてくれたドライバー、コ・ドライバー達、トミ・マキネン、チームメンバー、そして一緒に喜んでいただいたファンの皆さま。本当にありがとうございました。

本当に良いチームです。残り4戦、このチームで、このまま走りきりましょう! そして、もっと“最高の光景”をファンの皆さまに見てもらえるように引き続き頑張りましょう! ファンの皆さまも、応援よろしくお願いいたします」

◆何よりも重要なのは「チームに最大ポイントを」

©WRC

今回のラリー・ドイツ、下馬評でも、トヨタのオット・タナックが強いことは予想されていた。

しかし、それと同じく、ターマック(舗装路)で圧倒的な強さを見せるシトロエンの王者セバスチャン・オジェ、マシンの速さではトヨタ・ヤリスWRCに並び速いと評されているヒュンダイのティエリー・ヌービルが全力でタナックの3連覇を止めにくると思われていた。

そして、実際にラリー・ドイツが始まると、その予想通りの展開となった。

2日目の金曜日、SS(スペシャルステージ)7までを終えた時点で1位タナック、2位ヌービル、3位オジェと、上位3台はそのまま年間チャンピオンシップ争いをする3台に。とくに2位ヌービルは1位との差を2秒8と、ワンチャンスで簡単に逆転する位置にいた。その状況が変化したのは、3日目となる土曜日だ。

©WRC

3日目、SS12で3位だったオジェは、SS13ではトヨタの2台に後塵を拝して4位に。そしてSS12で2位だったヌービルは、SS13で道の真ん中を走行していたにも関わらずパンクする不運に見舞われ、総合7位にまで順位を落としてしまった。

そしてSS15では、オジェにパンクの不運が襲う。これでオジェは総合8位となり、トヨタのワン・ツー・スリー体制を脅かす存在は、SS15の時点で事実上居なくなった。

こうなるとチーム内での競争に注目が集まったが、チームもドライバーたちも、今回はチーム同士で戦うよりも“チームとして最高の仕事をする”ということに気持ちがかたまっていたようだ。それは土曜日に出されたチームリリース内のドライバーズコメントにもあらわれていた。

オット・タナックは「明日は全員が力を合わせて戦えば、最後までこの順位を保ち続けることができると信じています」と話し、チームの大黒柱ともいえるヤリ‐マティ・ラトバラは「何よりも重要なのはチームに最大ポイントをもたらせるように集中することです」とコメント。

そして今シーズンからメンバーとなったクリス・ミークも、「チームにとっては完璧な展開ですが、明日のステージは日曜日としては比較的長いので、この順位を守るため最後まで戦い続けなければなりません」と話しており、彼らの姿勢からチームとして一丸と戦っていることが存分にうかがえた。

◆ドライバー会見コメント「見事にやり返してやった」

©TOYOTA GAZOO Racing

こうして、現体制で初めてとなる表彰台独占を実現したトヨタ。その嬉しさは、ラリー後の公式会見にもあらわれていた。(以下、公式会見の抜粋)

――チームにとって、1993年のサファリ・ラリー以来の表彰台独占です。この素晴らしい結果に満足していますか。

オット・タナック:「こうした結果はすごく重要だと思う。つい先日、(2戦前の)ラリー・イタリアの最後に僕たちはドラマティックな終わりを体験した(※最終ステージでのトラブル)。あれによってチームのテンションは下がった。それが、(前戦の)ラリー・フィンランドでは2台が表彰台に上がり、今回ラリー・ドイツで3台が表彰台に上がった。

この結果に、チームの全スタッフが大いにモチベーションを上げている。誰もが感じたはずだ、自分たちはハードワークに見合うだけの結果を手にしたと。見事にやり返してやったと。このモチベーションを維持したまま、さらに前進することを願うばかりだ」

――ミーク、トヨタに参加して以来最高のリザルト、初めての表彰台ですね。どんな気分ですか。

クリス・ミーク:「いい気分だよ。なにより、ワン・ツー・スリー独占の一部になれたことが嬉しい。滅多にない出来事だからね。ラリー・フィランドを終えて、チームの実力的には表彰台独占だって可能だとは感じていた。実際そうなってみて、本当にいい気分だ」

――ラトバラ、あなたの番です。トヨタにとって1993年に表彰台を独占して以来の出来事です。知識が豊富なあなたなら、(93年に)誰が表彰台を独占したかわかりますか。

ラトバラ:「ユハ・カンクネン、マルク・アレン、そしてダンカンだよ」

――ダンカンとは?

ラトバラ:「ケニア出身の地元ドライバーさ」

――本当になんでも知っていますね!さて、この週末、トミ・マキネン代表からリラックスするようにと言われたそうですね。

ラトバラ:「そうなんだ、しかも2回も電話してきたよ。でも、おかげでドライビングだけに集中することができた。それがいちばん良い結果を生むんだ。僕はついついドライビング技術について考えてしまう。コーナースピードだったり、タイヤの状態だったり、路面の良い場所を走ろうとかね。こうしたことが行き過ぎてしまう。

きっと僕は、頭がそこまで良くないからだろうね(笑)。実際、マキネン代表が電話をしてくれて僕はリラックスし、肩の荷がおりた。ただ走りに集中しようと。それが良い結果につながったと思う」

©TOYOTA GAZOO Racing

◆WRCデビューの勝田貴元は、総合10位で完走

トヨタの表彰台独占で終えたラリー・ドイツ。上位の最終結果は以下の通りだ。

1位:オット・タナック(トヨタ)
2位:クリス・ミーク(トヨタ)/1位から20秒8遅れ
3位:ヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)/同36秒0遅れ
4位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同58秒5遅れ
5位:ダニ・ソルド(ヒュンダイ)/同1分16秒6遅れ
6位:アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/同1分46秒2遅れ
7位:セバスチャン・オジェ(シトロエン)/同1分56秒3遅れ
8位:エサペッカ・ラッピ(シトロエン)/同2分2秒2遅れ

そして、今回WRCデビューを果たした日本の勝田貴元は、総合10位(同8分19秒2遅れ)で見事完走している。

©WRC

この結果、ドライバーズチャンピオンシップは1位オット・タナック(トヨタ)/205ポイント、2位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/172ポイント、3位セバスチャン・オジェ(シトロエン)/165ポイント、4位クリス・ミーク(トヨタ)/80ポイント、5位アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/80ポイント、6位エルフィン・エバンス(ヒュンダイ)/79ポイントという順位に。タナックは、2位との差をよりひろげることとなった。

そしてマニュファクチュアラーズチャンピオンシップは、1位ヒュンダイ/289ポイント、2位トヨタ/281ポイント、3位シトロエン/216ポイント、4位フォード/168 ポイントと続く。

今回、トヨタは表彰台を独占したことで、一気にヒュンダイとの差を縮めた。この勢いであれば、次戦にも逆転が可能となる。

©TOYOTA GAZOO Racing

次戦「ラリー・トルコ」は、9月12~15日開催。初開催の昨年は、トヨタのタナックが見事勝者となった。

果たして今年は誰が勝つのか。そして、チャンピオンシップの行方は? 目を離すことができないシーズンとなっている。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>