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筒井真理子、鴻上尚史の“器の大きさ”に感謝!腹筋100回、ウサギ飛び…大変だった劇団時代

©テレビ朝日

早稲田大学在学中、鴻上尚史さんが主宰していた劇団「第三舞台」の人気女優として数々の舞台で活躍。大学卒業後はドラマ、映画に多数出演している実力派女優・筒井真理子さん。

2016年にカンヌ国際映画祭・「ある視点」部門審査員賞を受賞し、世界の注目を集めた映画『淵に立つ』(深田晃司監督)では毎日映画コンクール女優主演賞をはじめ、数多くの賞を受賞。常に進化し続ける女優・筒井真理子さんにインタビュー。

©テレビ朝日

◆「第三舞台」に入るための青学中退と勘違いされ…

高校卒業後、山梨県から上京して青山学院大学に通い始めた筒井さんは、高校時代の友人が多く通う早稲田大学に遊びに行き、その自由な校風に引かれて早稲田大学を受け直すことに。

「早稲田にいる友だちを見ていたら、すごく自由だったんですよね。青学はその頃ハマトラとかニュートラがはやっていて、みんなおしゃれだったので『私ってちょっと浮いているのかなあ』みたいな感じになって。それで青学を中退して、友だちもいっぱいいる早稲田を受け直したんです」

-「第三舞台」の芝居を見て早稲田に入ったのでは?-

「いえ、早稲田に入ってから第三舞台を見たんです。それが何となく、先輩たちの間では、『青学やめてまでここに入りたかったんだろう?』って感じになっちゃったんですよ(笑)。早稲田大学演劇研究会のなかに色々な劇団があって、第三舞台はそのひとつだったんですね。

私はそれを知らなかったから、第三舞台の公演を見て感銘を受けて、本番中の楽屋に『入れて下さい』って直訴したんですけど、羽交い絞めにされて追い出されてしまいました(笑)。

でも考えてみると、もう出来上がっている劇団だから私の居場所はないかなあと思って、最初は違う劇団に入ったんです。そうしたら鴻上さんが、『なんであんなに入りたがっていたのにうちの劇団に来ないんだ?』って言ってくださって、それで第三舞台に入ることができたんですけど、『大変な思いをして引き抜いたのに、こんなにアホだと思わなかった』って言われちゃいました(笑)」

-実際に第三舞台に入ってからが大変だったと聞いていますが-

「そうなんです。もう皆さん出来上がっていて上手だし、私はやったことがないので大変でした。まず下手(へた)だったというのと、第三舞台の芝居はある意味特殊でしたからね。

例えば水を飲んで味わって『あー冷たい』とかって言うのを、お客さんが察知する前にセリフを出すのが笑いを取るための一つのスキルなんですね。それを結構要求されるので、自分の生理よりちょっと早く、テンポよくやらなければいけないんですけど、それが難しくて私はなかなかできませんでした」

-精神的にも肉体的にもハードだったそうですね-

「あの時代の劇団はだいたいそうですが、まず人格否定から入りますからね(笑)。それで演劇研究会の伝統で、舞台の上では男女平等。だから、身体訓練は男女同じく、ヒンズースクワット100回、腹筋100回、ランニングやウサギ飛びなど約2時間。炎天下にドロドロになってやっていました」

―今ではウサギ飛びがからだに良くないとされていますが、昔は体育の授業でも部活でもやらされましたね-

「そうでしたよね。それで昔は腹筋も足をまっすぐに伸ばして人が足に乗ってしていたんですけど、あれは腰を壊すんですよ。

それで坐骨神経痛みたいになっちゃって、整体に行ってから稽古に行っていたんですけど、整体の先生に『必ず膝を曲げて腹筋をやるように。膝を曲げてやらないと腰は治らないから』と言われたので先輩に陳情したら、『甘えたことを言うんじゃない』って一喝されて(笑)。昔ですからね。仕方がないので、それからは『痛い』とも言わずに足がしびれながらやっていました」

-昔は上下関係が今以上に歴然としていましたからね-

「そうです。怖いのは当たり前でしたから、すごく怖かったですね。ヒエラルキーとかね。こういうのが世の理不尽なんだなって思い知らされました(笑)。二十周年記念公演かで鴻上さんと一緒になったときに『昔腰がものすごく痛かったんですけど、あの頃は言えなかったんです』って言ったらビックリして、『そうか』って言っていました(笑)」

80年代半ば、小劇団の全盛期を迎え、第三舞台は人気劇団として注目を集めることに。第三舞台に入るまでは演技未経験だった筒井さんも確実に頭角を現していく。気が付けば大学生活は7年目になっていたという。

「私は第三舞台でも下っ端だったから、雑用が色々あって授業にあんまり出られなくて、結構みんな中退したので、私も中退する気だったんですけれども、母がどうしても卒業してくれと言って。

それにはちょっと理由があって、母の年齢の離れた兄が早稲田の学生だったんですけれども、学徒出陣で亡くなってるんですね。だから母は亡くなった兄の代わりにどうしても卒業式には出たかったみたいなんです。卒業式の前の日に山梨に帰って、翌朝すごく早く起こされて着付けをされて始発で母と一緒に向かいました」

※筒井真理子プロフィル
10月13日生まれ。山梨県出身。早稲田大学在学中に、鴻上尚史さん主宰の劇団「第三舞台」に加入。初舞台を踏んで以降、同劇団の多くの舞台に出演。看板女優として注目を集め、卒業後は映像の世界へ。大河ドラマ『八重の桜』(NHK)、映画『男ともだち』(1994年)、『淵に立つ』などドラマ、映画に多数出演。今月26日(金)には主演映画『よこがお』(深田晃司監督)が公開される。

©テレビ朝日

◆初主演映画で予定なしに突然あるシーンが追加された

大学を卒業してドラマ、映画に活動の場を移して間もなく、筒井さんは文芸映画『男ともだち』(1994年・原作:見延典子)に主演することに。

※映画『男ともだち』
小さなギャラリーに勤める小田えりこ(筒井真理子)には井手(鶴見辰吾)という恋人がいるが、初めての男である魚住(永澤俊矢)のことが今も忘れられずにいた。えりこは井手の子を妊娠するが、彼のことを愛していないと気づき…。

-映像の仕事を始めてすぐに映画に主演することになりました-

「すごいプレッシャーだったんですけれども、映画が完成したときに『演劇というのは汗が伝わるけど、映像は皮膚感まで伝わるんだと思って、それがすごいなあ。面白いなぁ』って思ったんですね。映像って良いなあって」

-セクシーシーンもありましたが、躊躇(ちゅうちょ)したりということはなかったですか-

「最初の台本ではなかったんですよ。監督が書いた台本だったんですけど、それが文化庁に通らなかったらしいんです。それで脚本家の方を入れて、もっと芸術的なものにしたら通ったんですよね。なので、ガラッと話が変わったという感じだったんです。出演することが決まった後で変わったから、もう覚悟を決めてという感じでした」

-当初はなかったセクシーシーンに驚いたものの、そんなに抵抗感はなかったということですね-

「そうですね。一応姉に相談したんですけど、『人間は細胞が分裂して生まれてくるわけじゃないんだから、それは自然なことでしょう?それを避けて通ったら、本当のことは描けないんじゃない?』って言ってくれました。

こういう仕事をしているから、そういうこともあるだろうと思って準備していたのかもしれないですけど、その辺は受け止めてくれるので、すごくありがたいですね」

-理解ある環境のなかでお仕事ができて、映像の世界でも順調にお仕事をされているという感じですね-

「そうですね、ありがたいことに。でも悩みはいっぱいありましたよ。舞台のときもありましたけど、映像でもいっぱいありました。

舞台のときは『向いてないのか』と思って、一度諦めようかなと思ったことがあったんですね。そのときにたまたま知り合いの方がすごく当たるという占い師の方を紹介してくれたので電話してみたんですよ。

生年月日と名前を伝えたら『今から易をたてますから1時間後に電話を下さい』って言われて。でも、その待っている1時間の間に、『向いてないと言われても私は辞められない』と思って、そのときに自分の気持ちが固まったんですね。

それで1時間経って電話をしたときに『だめでも言わないでください』って言ったんですけど、向こうが開口一番『天職です』って(笑)。でも、その言われたことよりも、自分が続けたいんだというその思いがハッキリしたので、とても大事な1時間だったなって思います」

何を言われても女優を続けて行くという覚悟を決めた筒井さんは、そのあと木野花さん演出の舞台『朝日のような夕日をつれて 天ノ磐戸編』に出演することに。

「木野さんが私を見たときに『なんでこいつはこんなに自信のない目をしているんだろう』と思ったんですって。私はもう木っ端みじんだったので、劇団に入った最初の頃。それで木野さんが『1番苦手な怒り続けている役をやらせたらいいんじゃないか』と考えて下さったんです。

そうしたら、案の定、全然できなくて。相手役にも申し訳なくて。逆に木野さんが怒鳴るわけですよ。でも、怒鳴っても愛情ってわかりますからね。ある日怒鳴っている木野さんと相手役の姿を見たら、『ああ、私怒れないとか言っている場合じゃないんだ。2人とも声がかれちゃうし、とにかく怒るしかないんだな』って、そういう気持ちになったんですね。

それで、本番前に気持ちを作っていったら、どんどん怒りが湧いてくるんですよ。なぜか知らないけど(笑)。それで、本番で怒れたんですね。その後はどんどん血の気が引いてきて、体温が下がってプルプルしちゃって、最後までもたないんじゃないかなって思ったんですけど、何とかもったんですね。

それで最後は全員花道に勢ぞろいして終わるんですけど、終わった瞬間に私は泡を吹いて倒れていたみたいです(笑)。結局、ただの過呼吸だったんですけど」

-もう全部出し切っちゃったんですね-

「出したんですね(笑)。でも、その公演が終わったら、ちょっと楽になっていました。大阪公演に行くときには、とても楽になって。

それでまた劇団に帰ったときには、鴻上さんがおっしゃっている言葉も木野さん用語に変換するとわかりやすくて(笑)。鴻上さんの場合は難しい言葉なので、1回頭にシフトして考え込んじゃうんですね。木野さんの場合は頭じゃなくて、ハートに来るので、そのまま響くというか。頭にいかなくてすむというか…。

でも、当時まだプロデュース公演なんてないときに外に出してくれた鴻上さんの器の大きさには本当に感謝しています。第三舞台があったから今の自分があるので」

スクリーンで見せる妖艶な姿とはまた違う明るい笑顔の筒井さん。次回後編では、短期間で13kgも増量し、体型すらも変えて挑んだ映画『淵に立つ』の撮影裏話、『アンチポルノ』に出演した理由、26日(金)に公開される映画『よこがお』について紹介。(津島令子)

(C) 2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

※映画『よこがお』
7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿ほか全国ロードショー。
配給:KADOKAWA
監督:深田晃司 出演:筒井真理子 市川実日子 池松壮亮 吹越満 須藤蓮 小川未祐

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