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<WRC>イタリアでの第8戦、敵は“バッタの大量発生”?

現地時間の6月13日~6月16日、2019年のWRC(世界ラリー選手権)第8戦「ラリー・イタリア」が開催される。前戦の「ラリー・ポルトガル」に続いて、グラベル(未舗装路)が中心のラリーとなる。

©WRC

地中海に浮かぶサルディニア島。上下はイタリアとアフリカ大陸のチュニジア、左右はスペインとイタリア半島の間にある大きな島である。

じつはいま、この島がイタリアでは大きなニュースとなっている。その理由は、バッタの大量発生だ。これにより、過去60年で最悪の農業被害が予想されると連日ニュースになっている。

欧州やアフリカでは、イナゴやバッタによる農作物への被害が大きな影響を与えてきた。そのため、大量発生のメカニズムを解明するため、日本よりイナゴやバッタの研究が進んでいる。しかし、その生態メカニズムはいまだ未知な部分が多い。

今年は暑くなる時期が早く、これから耕作しようとしていた土地から大量のバッタが発生しており、サルディニア島では最悪の農業被害になりそうだと予想されている。今のところ被害の中心は島の中部で、ラリー・イタリアのコースが配置されている北部での被害報告は少ない。被害が拡大せず、ラリー・イタリアに影響が及ばないことを願うばかりだ。

◆“バッタの大量発生”が与えうる影響

©WRC

というのも、この“バッタの大量発生”は、モータースポーツにおいても留意すべき点がある。

WRCのコース上に大量のバッタが発生した場合、マシンはそのバッタのなかを走行することになる。視界の確保も問題なのだが、それ以上に大きな問題は、冷却システムの不具合発生だろう。

マシンの前面に数多く開いているスペースは、ほぼすべてが冷却用に空気を取り入れるためのもの。前には網目状のガードがつけられ、石やゴミなどが侵入しないようになっている。しかし、軽く、それでいてサイズがそれなりにあるバッタなどが大量にこの空気取り入れ口にぶつかった場合、その空気孔を完全に塞いでしまい、水温や油温が上昇しオーバーヒートなどの確率が一気に高まる。

数キロおきにマシンを止めてバッタを取り除く作業などもあり得ない。もちろん、大きな問題になると事前に判明すれば、SSのキャンセルなどもあり得るだろうが、現状ではどうなるのか予測がつかない。しかも、すでにサルディニア島は今週末30度前後の最高気温が予想されており、これは例年より5度以上高い。通常の状態であってもかなりの熱対策が重要なラリーとなりそうなのだ。

◆各チームの総合力と対応力が試されるラリー

そして、バッタ被害や熱対策だけではなく、前戦のラリー・ポルトガルから1週間空けて開催されるラリー・イタリアでは、チームはここまで手にしてきたグラベル(未舗装路)走行データをファクトリーで解析し、ラリー・イタリアに合わせた万全のセッティングを探っているはずだ。それだけに、各チームの総合力と対応力が試されるラリーとなる。

©WRC

ちなみに、昨シーズンのラリー・イタリアでは、優勝はヒュンダイのティエリー・ヌービル、2位はフォードのセバスチャン・オジェだった。3位はトヨタのエサペッカ・ラッピが獲得している。

今年はオジェとラッピがシトロエンに移籍していることから、また新たな戦いとなりそうだ。トヨタのヤリ‐マティ・ラトバラは昨年7位入賞、昨年はフォードだったオット・タナックは9位入賞している。

WRC公式インタビューに対し、トヨタのラトバラは、「とにかく道幅が狭いラリーなので、自信を持って走れるかどうかで状況が大きく変わる。狭く、石なども多く、荒れた路面は非常に挑戦的なコースとなる」と話している。

また、昨年トヨタで3位表彰台を獲得したシトロエンのラッピも、「ここは、ドライバーがスマートであるかどうかが重要かと思う。すごくテクニカルなコースで、速度域が大きく変化するステージもある。いかにコースを理解しているかが問われるんだ。そうあれば楽しいラリーだ」と、クレバーさが求められるラリーだと語った。

そして、ここラリー・イタリアでWRC参戦100戦目を迎えるトヨタのタナックにとっては、チャンピオンシップを争ううえでも重要なラリー。「タフなラリーイベントだね。道幅は狭く、速度域が速いところもある。少しでも道を外せば樹々があり、挑戦的なコースだ。集中力とペースノートの正確さが求められる」とコメントしている。

©TOYOTA GAZOO Racing

ラリー・イタリアでは、木曜日午後5時スタートのスーパーSSを含めて4日間、合計19のSSが予定されている。

初日木曜日は顔見世となる2kmのスーパーSS、本番スタートといえる金曜日はSS2からSS9まで8つのSSで行われる。土曜日はSS10からSS15まで6つのSSが行われる。そして最終日は、SS16からSS19まで4つのSSとなる。13日、木曜日のSS1現地スタート時間は午後5時を予定。(※日本時間では14日午前0時スタートとなる)

ラリー・ポルトガルで勝利したトヨタとしては、ここで連勝を飾ってシーズン後半戦に弾みをつけたいところだ。

果たして3人のトヨタドライバーたちがどのような走りを見せるのか、はたまた、ドライバーズチャンピオンシップを争うセバスチャン・オジェ(シトロエン)、ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)がどう対抗するのか、注目の一戦となる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>