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<WRC>トヨタ、ラリー・ポルトガルで連勝飾る!一時はトップ3独占も

現地時間の6月2日、2019年のWRC(世界ラリー選手権)第7戦「ラリー・ポルトガル」の最終日が開催された。

南米での2連戦を終え、各チームが欧州の拠点に戻って準備したこのラリー・ポルトガルは、南米2連戦に続く3戦連続してのグラベル(未舗装路)ラリー。荒れた路面に合わせ、マシンをどう進化させているかが問われるラリーとなった。

©TOYOTA GAZOO Racing

最終日の結果は、トヨタのオット・タナックが先日の「ラリー・チリ」に続いて連勝を飾り、今季3勝目となる勝利を獲得。

2位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/1位から15秒9遅れ、3位セバスチャン・オジェ(シトロエン)/同57秒1遅れ、4位ティーム・スンニネン(フォード)/同2分41秒5遅れ、5位エルフィン・エバンス(フォード)/同7分8秒3遅れ、と続いている。

例年、厳しい戦いとなるラリー・ポルトガルだが、今年は例年以上にサバイバルラリーとなった。

そのなかでもチャンピオンシップを争う3台が生き残り表彰台を独占したことは、この3人のドライバーたちの実力もそうだが、背負っている運の強さも大いに感じられるラリーであった。

◆トヨタ、初日はトップ3独占

ノートラブルでラリーを終えたドライバーがほぼいないラリー・ポルトガル。

初日は、フォードのスンニネンを不運が襲う。トップ3を争っていたが、SS6でブレーキを失うという大きなトラブル。ステージタイムで50秒5遅れとなり、一気に表彰台争いから脱落した。SS6のステージゴール後、マシンを減速させるためにステアリングを左右に切りながらなんとか減速をし、やっとの思いでステージのゴール地点に到着。

「ブレーキが全然無いんだ。このマシンではどうしようもない。多分、何かにぶつけたのだろうけど、僕自身、その感覚はないんだ。ブレーキ無しのマシンをドライブすることは、とにかく難しかったよ」とスンニネンは語った。

©TOYOTA GAZOO Racing

初日は、トヨタの3台がトップ3を独占。その速さはシーズン当初から一目置かれていたが、ほぼノートラブルで終えた初日のトップ3独占は、ライバルたちにトヨタの強さを再認識させた。

初日5位で終えた王者オジェ(シトロエン)もトヨタの強さを意識していた。

「今日は良かった。とにかくタフな1日だった。とくに午前中がタフだった。すごく道も狭いし、路面の表面は滑りやすい。とにかく自分のやれることをすべてやって、なんとかこの位置につけることができた。今日はタナックが凄く良くやったと思う。タイムも良かったし。なんとかしたいが、タナックとトヨタのペースがとにかく良い。ただ、追いかけることはできると思う」とトヨタへの対抗意識を見せている。

◆ラトバラ、タナックにダンパートラブル発生

ラリー2日目の土曜日は、快調だったトヨタもサバイバルラリーの洗礼を受けた。

最初にトラブルに見舞われたのは、トップを走るタナックだった。SS8、トップから9秒遅れのゴールへの到着。憮然とした態度のタナック。リポーターが「ブレーキトラブルですか?」と聞くと「そのくそったれだ」とひとこと。そのままリエゾン区間に向かい、マシンの修理を急いだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

次にこの日最大とも言える不運を襲ったのは、またしてもトヨタのラトバラだった。この日も2位を走行し、午前中は本人も快調と言い、一時は1位タナックとの差を5秒1にまで近づけた。しかし、午後になると状況は一変する。SS11で不調が出た。

「たぶん、小さな衝撃を感じたんだ。岩かなにかに当たったのか。とにかくそこからフロントダンパーが柔らかくなったように感じた。とにかくこの後、確認するよ」とSS11走行後に印象を語ったラトバラ。

しかし、問題は小さくなかった。もしこれが午前中最後であれば、昼間のサービスで修繕できたが、午後最初の走行で判明したことも運が悪かった。サービスを利用できないからだ。この不運が次のSS12でラトバラを襲う。

SS12では明らかにラトバラのペースが悪い。ダンパートラブルは解消していなく、攻めることもできず、可能な限り道の中央のラインを走行する走り。また車内カメラからは、明らかにサスペンションにトラブルがあると感じられる路面に打ち付けられるようなノイズが聞こえていた。そして、トップから56秒7遅れというタイムに。ゴール後、ラトラバはSS13を走行することなくデイリタイアを選択した。

この日、最後にトラブルに見舞われたのは、再びトップを走行するトヨタのタナックだった。SS13を走行中にラトバラと同じようにダンパートラブルが発生。なんとか最後まで走り切ることができたが、ステージトップから12秒7遅れとなり、なんとかトップは守ったものの、これまで築いてきたリードを失った。

「残り25kmを残して右前輪ダンパーが破損したようだ。明日もとにかく走るしかない。ヌービルも迫ってきている。日曜日をゆっくり走ることは面白くない。ただ、まずやるべきことは順位を守ること。そして、それが出来たらパワーステージも考えるよ」と、タナックは25kmほど壊れたダンパーで走行していたことを明かした。

©TOYOTA GAZOO Racing

ラリーカーに限らず、多くのクルマにはサスペンションにスプリングとダンパーと呼ばれる装置が設置してあり、この装置は車体が上下に揺れることを制御する。

スプリングはその名の通りバネ形状の金属で、ジャンプからの着地など路面から伝わる大きな衝撃を和らげる効果を持つ。しかし、単純にスプリングだけでは、衝撃を受けたスプリングはその受けた力とほぼ同じ力で押し返そうとする。つまり、子供たちが遊ぶおもちゃのホッピングのように、延々と上下運動を繰り返してしまう。

これを制御するのがダンパーの役割で、ダンパーの内部にはオイルが充填されていて、その中を“ところてん突き”のように押し出す部分がついた棒状のものが上下する。オイルの中を押し出すので、このオイルの粘度が変えたり、押し出す部分の隙間を調整することで、上下するときに必要とする力が変わる。

これがスプリングの上下運動を制御して、マシンがスムーズに走行できるようになる。つまりダンパーとは、走行するうえで非常に重要なパーツなのだ。

結局、この日なんとかタナックはトップを守ったが、トヨタ3台のマシンのうち2台のマシンにダンパートラブルが発生したことで、日曜日はより安全マージンを取り、慎重に攻めることが求められる。チャンピオン争いをする3位のヌービル、そして4位のオジェからの追い上げもあり、厳しい最終日になることが予想された。

◆最後のSSでトヨタに不運続くも、タナックは3勝目

そして迎えた最終日。この日も厳しさは変わらなかった。

最後のパワーステージとなるSS20。各車エクストラとなるポイントを目標に最速を目指す。とくに前日リタイアとなったトヨタのラトバラは、ポイント奪取を目指していたが、再び大きな不運に見舞われた。

©WRC

サバイバルラリーを象徴するかのような最後のSS20パワーステージだった。

まず、ヒュンダイのセバスチャン・ローブが、一部舗装路(ターマック)の部分でブレーキが遅れてしまい、マシンをコースにぶつけ、サスペンションを破損。タイムを大きく落とした。

次にフォードのガス・グリーンスミスが、パワーステージの見せ場である、ゴール前に用意された最後のジャンプで着地後大クラッシュ。コースを塞いでしまった。これにより、すでにスタートを切っていた次のマシンには赤旗が振られ、パワーステージのアタックを諦めるしかない。そして、その不運を被ったドライバーこそが、トヨタのラトバラだった。

ラトバラは徐行を余儀なくされ、最後のジャンプ前に一度マーシャルによってマシンを止めた。再びマシンを走らせたが、ジャンプポイントでもジャンプすることなく、そのままクルージングするかのようにしてパワーステージを終えたのだった。

赤旗だったためパワーステージのポイントは加算されないが、タイムは修正されて総合順位で7位となり、通常ポイントは獲得した。

ラリー後、チームリリースを通じて、ラトバラはこうコメントした。

「今朝は再出走することができたので、トップ10に入りポイントを獲得することを目標に走りました。パワーステージでは、前を走っていたクルマが道を塞ぎレッドフラッグが出たので、ベストタイムを狙えませんでした。しかし、総合7位に順位が上がり、貴重なポイントを獲得できたのは、特にチームにとって良かったと思います。昨日は本当に速く、良い走りができていたので、個人的には満足できない結果ですが、自分達にスピードがありクルマも速かったという事実が何よりも重要です」と、ラトバラらしい“フォー・ザ・チーム”のコメント内容だ。

©WRC

そして最後にサバイバルラリーの洗礼…というより、まさに餌食となったのは、最終日2位スタートだったトヨタのクリス・ミークだ。

パワーステージをスタートして僅か500mほど、緩い右コーナーを攻めたとき、コースの内側ギリギリにあったと思われる木の切り株にタイヤをヒット。これによりサスペンションとステアリングを破損。マシンはそのままストップしリタイアとなった。表彰台確実だっただけに、あまりにも不運なトラブルだった。

「今朝は、総合3位の選手との差を広げることに成功し、良いスタートを切りました。その差を保ち続けようとしたのですが、最後から2番目のステージでスピンをして遅れてしまいました。最終のパワーステージで得られるボーナスポイントは、自分にとってそれほど重要ではなかったので、無理をしてまで狙うつもりはありませんでした。

しかし、右コーナー内側の草の中に木の切り株が隠れていたのを見落とし、自分のペースノートに記していなかったため、それに当たってタイヤが外側に開いてしまいました。完全に自分のミスですし、それまでは非常に力強くラリーを戦えていたので、チームに申し訳なく思います。ただし、自分にとっては今までで最もクルマのポテンシャルを引き出せたラリーでした。気持ちを切り替え、次戦の戦いをポジティブに捉えたいと思います」

このようにミークは、リリースで「自分のミスだった」と語ったが、不運な出来事だったとしか言いようがない。

◆次戦は、ラリー・イタリア

©WRC

こうしてラリー・ポルトガルは終了した。最後まで不運を振り切ったタナックは、見事今季3勝目を飾った。公式会見でのコメントの一部は以下の通り。

――タナック、素晴らしい勝利でした。この勝利は自身のラリー経歴のなかでも、最もタフな勝利だと語っていましたね。いまもその気持ちは変わりませんか?

「変わらないよ。この勝利は僕が獲得した中で最もタフな勝利だ。ラリー・ポルトガル自体がタフな週末だけど、今回の勝利までは本当に大変だった。まず金曜日の先行きは良かった。良い感じで初日のスタートを切った。そして土曜日の午前中、ほんの数キロ走ったところでブレーキが壊れ、ブレーキなしでSSを走りきった。非常に複雑な状況に陥ったけれど、運良く日中のサービスを受けられすぐに修繕してラリーをリードしたまま2日目を終えた」

――最後のパワーステージ、途中までオジェより速かったと思いますが、最後はスピードを落としましたか?

「その説明は長くなるね。今回のパワーステージはなかなか距離が長い(11.18km)。最初に考えたのは、今年のチャンピオンシップでは、たった1ポイントがシーズン終了時に影響するほど非常に重要だということ。そして、スタート前の順位のまま順調に終われば、パワーステージのぶんを除いて、オジェを3ポイントリードできる。ただ、クリス・ミークのトラブルで状況が一変した。オジェは表彰台に上がり、パワーステージのぶんを除いて同ポイントになると。それと同時に、次戦のラリー・イタリアの初日走行順を考える必要があり、そうしている間にヌービルがパワーステージで割って入り、さらにポイントを失ったんだ」

サバイバルラリーとなったラリー・ポルトガル。

現在のチャンピオンシップポイントは、1位セバスチャン・オジェ(シトロエン)が142ポイント。2位オット・タナック(トヨタ)/140ポイント、3位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/132ポイント、4位エルフィン・エバンス(フォード)/65ポイント、5位クリス・ミーク(トヨタ)/56ポイントと続く。上位3名の争いは、より接戦となってきた。

マニュファクチャラーズタイトルの争いは、1位ヒュンダイ/202ポイント、2位トヨタ/182ポイント、3位シトロエン/158ポイント、4位フォード/122ポイントとなっている。

次戦は、6月13日から6月16日にかけて「ラリー・イタリア」が行われる。再びグラベル(未舗装路)ラリーだ。グラベルでの強さを見せるトヨタは3連勝なるか。そして、今回不運に見舞われたラトバラやミークの巻き返しが見たいものだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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