ドロンズ石本、共演した柴犬に一目ぼれ。“高級プレゼント”を持って行ったことも
2003年にお笑いコンビ「ドロンズ」を解散して以降、ピン芸人、俳優、リポーター、「馬肉屋たけし」のオーナーと、さまざまな分野で活動を続けているドロンズ石本さん。
近年は俳優としての活躍が目覚ましく、ライフワークである「ウッチャンナンチャン」の南原清隆さんとの狂言の舞台に加え、今月は舞台『尾を咥えたり愚者の口』(駅前劇場)にも出演。初のヤクザの親分役にも挑戦。6月14日(金)には映画『柴公園』の公開も控えている。
◆父の葬儀の日、愛犬の姿に涙
映画『柴公園』は冴えない3人のおじさんと3匹の柴犬が織りなす心温まる物語だが、石本さんと動物との共演は『雷波少年』(日本テレビ系)でロバのロシナンテ、ドラマ『南極大陸』(TBS系)で樺太犬のタロとジロたちに続き3度目となる。
映画版の前章、テレビドラマ『柴公園』(TOKYO MXほか)で初めてパートナーとなる柴犬さちこと会ったときからもうメロメロ状態。映画版でも絶妙のコンビネーションを披露している。もともと犬好きで広島の実家ではずっと犬を飼っていたという。
「去年亡くなっちゃったパピヨンは、18年生きて広島市から表彰されたんですけどね。実家には子どもの頃からずっと犬がいました」
-とても賢かったそうですね-
「はい。4年前に亡くなったおやじがずっと散歩をしてたんですけど、散歩中に倒れたことがあったんですよ。倒れたときにリードも手から放しちゃっていましたから、普通だったら逃げますよね。
それが父親のそばを離れないで、ずっと吠えていたんですよ、助けが来るまで。逃げないでずっとそばにいて、ワンワン吠えて助けが来るのを待っていたって聞きました。それで帰りが遅いのを心配した母が探しに行って見つけたんですけど、感動したって言っていました」
-お父様も可愛がってらしたんでしょうね-
「すごく可愛がっていました。『待て』とか、『お座り』とか、しつけは僕がやるんですよ。それでおやじは散歩したり、ずっと一緒にダラダラする役だったんですよね。
おやじが亡くなって葬儀のときには、ワンワンじゃなくてずっと『クーンクーン』って泣いていたんですよ。葬儀のことがわかってるんだなぁって思いました。それを見て母親が泣いていました。
おやじが亡くなったのは、倒れて3年目だったので、ある程度心の準備はできていたんですけど、犬だけはいなくなるっていうのがわかった瞬間、クンクン鳴いて、それを見て母親が泣いて、それを見て僕が泣いてという感じでした」
-別れるということがわかっているんですね-
「そうですね。僕は年に2回ぐらいしか実家に帰ってなかったんですけど、僕にもすごく懐いていて、僕と一緒に寝たりしていましたから、犬ってやっぱりすごいなあって思いますよね。
本当に従順というか、年に2回か3回しか帰らない僕のことをちゃんと覚えていて『散歩に行こう、散歩に行こう』って感じで、朝8時半頃起こしにくるんですよ。顔をペロペロしてね。
それで散歩に連れて行っていたんですけど、この子はおやじにもこういうことをやっていたんだろうなって思って見ていました。可愛いですよね、やっぱり。
おやじも可愛かったでしょうね。それを今度は僕にするというのは、犬もわかっているんだなあと思いました。葬儀が済んだ後も、2週間ぐらい仏壇の前から動かなかったですからね」
昨年、その愛犬が亡くなって2、3カ月後に、ドラマ『柴公園』の出演オファーが。お母さまはその愛犬がつなげてくれた縁だろうと話していたという。
◆ドラマの相棒の柴犬・さちこにメロメロ
「おっさん×柴犬×会話劇」という斬新な組み合わせが話題となったドラマ『柴公園』。3人のおっさんと表情豊かで演技力抜群の柴犬たちが、今度はスクリーンに登場する。
石本さんの相棒・さちこ役のななちゃんには初対面のときから「この子は一番可愛い」と一目惚れ。撮影の合間もずっと一緒にいたという。
※映画『柴公園』
古い街に建ったタワーマンションに越して来た新参者のおっさん3人。共通点は柴犬を飼っていることで、毎日散歩で顔を合わせるが、お互いの名前も知らない。あたるパパ(渋川清彦)、じっちゃんパパ(大西信満)、さちこパパ(ドロンズ石本)の3人は毎日公園で広大な無駄話を繰り広げている。ある日、3人の中で唯一独身のあたるパパに恋の予感が…。
-犬を飼ったことがある人には「あるある」がいっぱいですね。犬の名前は知っているけど、飼い主の名前は知らないとか-
「そうですね。みんな〇〇ちゃんパパとかママですからね(笑)。それで、散歩で会わないと犬のほうを心配しちゃうんですよね。『犬が具合悪いのかな?』とか『何かあったのかな?』って(笑)。人間を心配しないんですよ。だからほんとに『あるある』のドラマで楽しいですよね」
-ドラマから映画まで全部でどのくらいの期間で撮影されたんですか-
「45日間、1カ月半です。3人でずっとダベッているのでセリフの量がものすごく多くて、飲みにも行けてないんですよ。唯一3人でランチに行ったぐらいですけど、そこでも結局台本合わせをしていました。
1日に14、5ページを毎日撮影していたので、ずっとセリフをしゃべっているという感じでした。ドラマ版とはまたちょっと違うテイストになっているんですよね。小さなことかもしれないけど、一歩を踏み出す良さを感じてもらえたら良いなと思います」
-撮影で印象に残っていることは?-
「3人とも普段カメラチェックはあまりしないんですけど、自分の犬が可愛く撮れているかどうかは見ていました。3人とも、自分たちよりも犬の写りの方をどんどん気にするようになっていきましたね。それで『自分のトコの犬が一番可愛い』って盛り上がっていました(笑)。」
-自分の顔ではなく、犬の表情チェックですか-
「そうです。それで僕と山下真司さんが校門前で話しているシーンがあるんですけども、それをさちこが僕たちの顔を見ながら聞いているところが撮れていたんですよ。それにすごく感動しちゃって。
綾部監督に『あれすごくいい絵ですね』って言ったら、『良い表情をしていたことにあとで気がついて差し込んだんだけど、やっぱり可愛いね』って言っていました。そういうところを入れてくれているのがやっぱりうれしくてね。
もう本当に変態かもしれないですけど、さちこの出演シーンをチェックしてみたら、ほかの犬より多く出ているんですよ。映画はまだ数えていないんですけど。ドラマ版ではさちこがダントツでした(笑)」
-ドラマ版を全部チェックしたのですか-
「やりました(笑)。渋川さんが主役なので、あたるがもっと多いかなと思ったんだけど、さちこが多かったですね。いい表情をするんですよ。みんなで川の端からのぞいているときも、さちこだけ顔をのぞかせていたりとか。うちの子ちゃんと出ているって(笑)」
-動物がらみの撮影は大変だと聞いていますが-
「大体スケジュール通りに撮れていたんじゃないかな。『南極大陸』のときには、やっぱり犬待ちっていうのが結構あって、今回はすごくスムーズでした。
さちことあたるはプロなので、『オーケー』を聞いた瞬間、僕らのところに来ておやつをもらっていましたね。『仕事を済ませたけど、どうですか』みたいな感じで(笑)」
-『柴公園』の撮影が終わって寂しいでしょう-
「ずっと一緒にいましたからね。完全に“さちこロス”です。去年のクリスマス・イブには高級おやつのプレゼントを持って会いにいっちゃいました(笑)。わりと近くに住んでいるので、たまに会いにいかせてもらっています。
この間、NHKで偶然会ったんですよ。僕のことがすぐにわかって走って来てくれて、ずっとペロペロペロペロ舐めていて。かわいくてしょうがないですね」
今月は舞台『尾を咥えたり愚者の口』(駅前劇場・5月7日~12日)にも出演。自身初となるヤクザの親分役に挑んだ。
「これまでは人が良いおじさんとか、働かないお父さん役が多かったんですよ。ヤクザ役は初めてだったので、ちょっと声質を低くやるようにしていたから喉を潰しちゃって(笑)。今はもう大丈夫なんですけど、素人がやるとこうなっちゃうんですよね」
-人の良さそうな笑顔を封印して、眉間に皺を寄せて渋い表情で役作りをされていましたね-
「そうなんですよね。結構尊大な感じでふんぞり返ったりしてやっていたんですけど、やっていて面白かったですね。だから、今後こういう役をもっとやりたいってマネジャーに言ってるんです。
年に2本は舞台をやりたいですね。南原(清隆)さんとの狂言の舞台を絶対やるのと、もう1本ぐらいはやろうって話をしているんです」
◇
今回の舞台の間は自身が経営する「馬肉屋たけし」の従業員のお休みが重なってしまい、終演後にお店に駆け付けていたという。舞台、ドラマ、映画、お店の経営と多忙な日々の中、一番の癒しは、やはりさちこと過ごす時間。
さちこの話になると、より一層笑顔になり、“さちこ愛”にあふれている。この日も「取材が終わったら、さちこに会いに行く」とうれしそうに目を輝かせていた。(津島令子)
映画『柴公園』
6月14日(金)より全国のイオンシネマ/シネマート新宿ほか全国公開
企画・配給:AMGエンタテインメント
柴犬を飼っている3人のおじさんたちが壮大な無駄話をダベリ尽くすハートフルムービー。
監督:綾部真弥 主演:渋川清彦 大西信満 ドロンズ石本 桜井ユキ 佐藤二朗
※SHIBA フェス in 渋川市 中村緑地公園
6月8日(土)
「愛犬と一緒に青空映画館で、映画『柴公園』先行特別試写会を観よう!」
1回目 10:30~12:10
2回目 14:15~15:55
トークショー 12:30~13:15
大人1500円 子ども1000円 愛犬800円