初の国産カヌーを東京五輪へ 製作ヒントは“カワセミ”、実用化へ前進
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
修造は、科学でオリンピックに参加しようという人物に会うべく、東洋大学理工学部のキャンパスを訪れた。
部屋に入ると「金メダルを取れる水泳の体型」と書いてある少し奇妙なイラストが目に飛び込んできた。
このイラストを描いたのは、スポーツと科学の関係を30年近く研究してきた東洋大学理工学部の望月修教授だ。
「選手が鍛えた力をいかに効率よく使えるかという研究をしています。これは理想の水泳選手をイメージして描いたのですが、実はマグロの形なのです。マグロの体型だと抵抗が少なく、こういった中年太りのような身長と横幅が一番いいのです」(望月教授)
この独創的な考えの望月教授、2020年の東京五輪で、指定されたコースを進みながらタイムを競う「カヌー・スラローム」という競技に参戦しようとしている。
実は、カヌーは東欧にある2つの会社でしか製造されておらず、望月教授は初となる国産カヌーの製作に挑んでいる。
普通のカヌーにはない大きな穴が、このカヌーの加速装置となっていて、上流から流れてくる水を受け止め、推進力に変えることができる。
その形状は、何とサメの口とエラをヒントに作ったといい、一度流れをつかめば一気に加速できる仕組みになっているのだ。
そして、先端部分にもこだわりがある。
魚をとるために水に飛び込むカワセミの、水の抵抗を最小限に抑えるくちばしを真似る事で、波の中でもカヌーがスムーズに進む効果を狙っている。
2017年から開発された、望月教授のカヌーは3代に渡り進化。テスト開発には東京都カヌー協会も参加し、実用化に向けて着々と前進しているという。
◆松尾芭蕉の俳句からもヒント
自由な発想でスポーツを捉える望月教授の源は、些細な事にも興味を持つ事だ。
「松尾芭蕉の『古池や蛙飛び込む水の音』という俳句を科学的に考えると、どのカエルが詩的な音を出すのかどうか、気になりました」(望月教授)
松尾芭蕉が詠んだ“水の音”が気になってしまった望月教授は、なんと、芭蕉が住んでいた浅草周辺に生息する様々な種類のカエルを捕まえ、本当に水に飛び込ませた。
その結果、トウキョウダルマガエルだけが「チャポン」と詩的な音で水に入ることが分かったという。
「カエルを水に飛び込ませた時、まったく泡が立たなかったんです。要するに水面に入る際の抵抗が少なく、水泳でいうと、頭一つ分違ってくる。
つまり、競泳選手がカエルになって飛び込めば頭一つ分、違ってくるのです」(望月教授)
常識に捉われない発想が、スポーツを進化させると信じ研究を続ける望月教授。2020年の東京五輪での採用を目指す国産カヌーは、まさにその“知恵の結晶”なのだ。
望月教授のできる宣言は「科学で常識を打ち破り、金メダルを!」。修造は望月教授だけでなく、カヌーにもエールを送った。
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系