鈴木杏樹、約13年間演じた「花の里」女将・幸子の“旅立ち”は「良き選択」
シリーズが誕生した2000年以来、高い注目を集めつづけるドラマ『相棒』。次週3月20日(水)、いよいよ同作最新シリーズ『season17』が最終回をむかえる。
その直前、本日13日(水)に放送された第19話「漂流少年~月本幸子の決断」で、鈴木杏樹演じる「花の里」女将・月本幸子が新たな旅立ちを果たした。
月本幸子は、『season4』の第19話『ついてない女』(2006年3月)で初登場。幸子は夫の死後、暴力団幹部の愛人となっていたが、夫を死に追いやったのがその幹部だと知り、拳銃を使って復讐。海外逃亡を企てていたところ、偶然出会った特命係に見破られ逮捕。
その後、『season6』の第11話『ついている女』、第12話『狙われた女』で再登場(2008年1月)。このときは女性受刑者の脱獄計画に巻き込まれた挙句に殺害されそうになり、特命係に救い出された。
さらに、『season10』の第12話『つきすぎている女』(2012年1月)では出所後、幸運が続いたことから自分が狙われているのではないかと勘違い。紆余曲折を経て、右京の勧めで小料理屋「花の里」の2代目女将に就任。以降は店を切り盛りし、『相棒』ワールドで唯一無二の存在感を放ってきた。
そして本日放送の『season17』第19話で、詐欺、そして殺人事件に巻き込まれた少年に寄り添った幸子は、“自分が特命係に助けてもらったように、こんどは私が子どもたちの助けになりたい”と考えるようになり、「これからきちんと勉強して資格を取って、子どもたちを実際にそばで支える仕事に就きたい」と、自分の足で新たな道に向かって歩き出すことを決意。万感の思いで右京と握手を交わし、旅立っていった…。
彼女の門出に際し、2006年から約13年間にわたって月本幸子を演じてきた鈴木杏樹が現在の心境、そして水谷豊への感謝を語った。
◆鈴木杏樹 コメント
――月本幸子が新たな旅立ちを決めましたが、脚本を読んだときどんなお気持ちでしたか?
今回の第18話、19話のシナリオは太田愛さんが書かれたのですが、最初に読ませていただいたとき、すごくいい台本だなと思いました。ストーリー展開や幸子さんの気持ちの流れがとても自然で、何より太田さんの愛がこもっているのを感じて、とてもありがたいなと思いました。
太田さん、そしてプロデューサーの皆さんへの感謝の思いがこみ上げました。
――ご自身にとって幸子はどんな女性ですか?
当たり前なのかもしれないですが、幸子さんは私にとって“誰よりもよくわかる人”なんです。ほかの役を演じているときは、どんな気持ちでこのセリフを言うのか、どう考えてこんな行動を取ったのか、時としてわからなくなって監督にお聞きすることがあるんです。でも幸子さんに関しては、“この人のことは誰よりも私がわかっているんだろうな”と思う瞬間が本当に何回もありました。
“幸子さんだったらこう言うだろうな”“幸子さんならこんな風に考えるだろうな”というのが、手に取るようにわかるんです。役作りという面でも、“さあ、今日は幸子さんになるぞ!”みたいに気合いを入れなくても、自然と彼女になることができました。分身というかなんというか…幸子さんという人物に、鈴木杏樹が寄り添っているような感覚、といえばよいのでしょうか。これまで、こんな役には出会ったことがないですね。それは自信を持って言うことができます。
――2006 年、『ついてない女』で初めて幸子を演じたときのことを教えてください。
不思議なのですが、あのときは楽しくて仕方がなかったんです。私は普段、新しい作品にお邪魔するとき、とても緊張して、その緊張が悪循環を生んで思うように演じられないことがあるのですが、『ついてない女』はとにかくものすごく楽しかったのを覚えています。
あのとき、私には覚えたセリフをしゃべっているという感覚はまったくなくて、なんとか目の前の杉下右京さんをだましてすり抜けることはできないだろうかと、それだけをひたすら本気で考え続けていました。ストーリー展開は決まっているのに、なぜかこのまま逃亡できるんじゃないかって思いながら、すごく楽しんで…(笑)。今思えば、あの時点で私はすでに“幸子さんになっていた”のかな。『ついてない女』はカットされてしまったセリフにも面白いものが多くて、大好きなお話でした。
――幸子さんの旅立ちを寂しく思うファンも多いと思いますが、ご自身のお気持ちは?
『相棒』ファンの鈴木杏樹としては、『花の里』がなくなってしまうことは、とても寂しく思います。
でも、幸子さんはたとえば『season4』と『season6』の間や、『6』から『10』の間などドラマに描かれていない時間は服役していて、彼女なりに反省し成長を遂げていたんですよね。私たちと同じ時間が流れていたと思うんです。
これからまた幸子さんについて描かれることのない時期があるわけですが、『相棒』が続く限りいつの日かどこかで、「子どもたちに関することなら幸子さんに聞いてみよう!」みたいなエピソードが登場するかもしれない。幸子さんは『相棒』の世界の中で生き続けて、また成長を遂げていると思うので、次に会えるのがちょっと楽しみですね。
成長し続けるキャラクターなんて、『相棒』の中でも、なかなかいないはず。幸子さんはきちんと彼女の人生を生きていく…それはすごいことだなと思っています。
――水谷豊さんとの共演で印象に残っているエピソードは?
水谷さんには“受け”のお芝居の大切さを教わりました。“受けて”くださるからこそ、こちらのお芝居が生かされる…。それを目の前で見せてくださるので、「やっぱり水谷さんってスゴイ!」「こんな俳優さんにならなくちゃ」と思わされました。
実は、最後の『花の里』のシーンも、水谷さんのお芝居がなかったら、あんなふうにできなかったなと思っているんです。
最後、『花の里』で、私の表情を撮っているとき、水谷さんは、感情を静かにあらわにする形で右京さんを演じてくださったのですが、逆側から水谷さんを撮影するとき、まったくお芝居が変わっていたんです。つまり、最初のお芝居は、私のため…。私の感情が動くようにお芝居をしてくださったんです。それに改めて気づいて感動しました。私も、いつか水谷さんみたいな役者さんになりたい。水谷さんは私にとって永遠の師匠というか、憧れの存在です。
――『相棒』ファンの皆様にメッセージをお願いいたします。
今回は、皆さんを驚かせてしまったことと思います。でも人生は一度きり…。ひとりの女性が自分のために新たな道に一歩踏み出すのも良き選択かな。そう思わせてくれる、素晴らしい脚本だったと思います。
幸子さんがこの先、どんなお仕事に就くのかわかりませんが、これからもまだまだ『相棒』の世界の中で彼女は生きているので、引き続き応援してくださったらうれしく思います。
そして、またお会いできるときを待っていただけたらありがたいですね。その間、幸子さんは頑張って資格を取って、必ずや大きく成長しています!
※番組情報:『相棒season17』最終回2時間スペシャル「新世界より」
2019年3月20日(水)午後8:00~午後10:09、テレビ朝日系24局