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トヨタは3台目投入!別格の絶景の“難ラリー”、ラリー・ポルトガル【世界ラリー(WRC)】

FIA世界ラリー選手権(WRC)の2017年シーズン第6戦となる「ラリー・ポルトガル」が間もなく開催される(5月18日~21日)。舞台は南米から再びヨーロッパの地に戻り、大航海時代の中心地でもあったポルトガルで行われる。

©WRC/無断転載禁止

◆小さなミスが許されない短距離SSが多い

ラリー・ポルトガルが開催されるのは、大航海時代にポルトガルを牽引した港町ポルトを中心とした地域。ポルトガル北部の中心都市だ。ラリー以外のスポーツでは、UEFAチャンピオンズリーグを制覇した経験を持つFCポルトの本拠地として有名。

また、ポルト周辺でつくられるワインは、発酵途中のワインにブランデーを入れてアルコール度数を強化し、保存性を高めたポートワインとして知られる。このポートワインもまた、大航海時代に船に積み込まれてポルトガル繁栄を支えた。

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ラリー・ポルトガルは、前戦のラリー・アルゼンチン同様、ラテン気質なファンが多いラリーとして人気。世界ラリー(WRC)がスタートした1973年当時からラリーイベントとして名前を連ねている。しかし、過去に大きな事故があり(1986年)、その難コースぶりから何度かリストからは外れている。現在は2009年からの継続開催中だ。

このラリー・ポルトガルは、林道や丘陵地を戦うグラベル(未舗装路)ラリー。4日間のSS総距離は349.17kmと距離自体は平均より僅かに短い程度なのだが、各SSを見ていくと、最長でも土曜日にあるSS12とSS15の37.55kmと、最長で50kmを超えるSSがあったラリー・メキシコやラリー・フランスなどと比較すると短めな距離が多い。

つまり、小さなミスでもタイムをロスすると挽回が難しいことを意味する。さらに、丘陵地を舞台としたSSは大きな岩に囲まれ、マシンをヒットさせるとそのままリタイアにもなりかねない。スピードは欲しいがミスは許されないギリギリの走りが求められるため、ラリー・ポルトガルは難ラリーとしても知られている

今年のマシンは、パワーアップしてマシンスピードが上がった分、さらに難しくなりドライバーを苦しめると予想される。

 

◆丘陵地の美しさは別格

©WRC/無断転載禁止

そんな難ラリーのラリー・ポルトガルだが、その景色の美しさもまた有名なラリーである。丘陵地を俯瞰で見ると、まるで雲の上の大地を走るような景色があったり、大きな岩との対比で美しい写真が撮れたりと、カメラマンにとっても魅力的なラリーだ。

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激しい戦いが予想されるのだが、過去の歴史を振り返ると、ここで勝利経験を持つ現役ドライバーは、昨年優勝したクリス・ミーク(シトロエン)を筆頭に、セバスチャン・オジェ(フォード)、マッズ・オストベルグ(フォード)、そしてヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)がいる。

経験を必要とするラリーなので、この4名はアドバンテージを持つが、今年はマシンの速さに定評があるヒュンダイもその争いに加わってくるので、まさに4大メーカーすべてが激しいつば競り合いを見せてくれるだろう。

©WRC/無断転載禁止

そして、トヨタは今回3台目のマシンを投入する。ドライブするのは、テストドライバーとして契約した昨年のWRC2クラス(WRCのひとつ下を戦うカテゴリー)王者のエサペッカ・ラッピ(26歳)。

彼もまたフィンランド出身で、トヨタはチーム代表のトミ・マキネン、エースのラトバラ、第2ドライバーのユホ・ハンニネン、そして各コドライバーたち全員がフィンランド人で固められている。これにより、新人のラッピに対して手厚いデータ提供が行われることは間違いなく、トヨタは3台目のマシン投入でさらなるデータ収集とチーム力向上を狙っていく。

<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>